聖女は唄い願う

零嬢 椿

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再び唄う4

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暗い……怖い……どこかへ連れていかれる。俺は剣術の修行してたから大丈夫だったけどりアレクは気を失ってるし。
下手な動きを取ればアレクが危ない。
どうしよう…………


盗賊1「お頭!なんか聞こえませんか?」
お頭「なんだ?」
盗賊2「歌だべよ……」
盗賊1「屋敷の奴らが勘づいたんすかね?」
お頭「だったらなんで歌うんだよ!」
盗賊1「すんやせん!でもなんか……綺麗な歌っすね」
盗賊2「でもこの言葉何語だべ?」



この声聞き覚えがある。
俺はまだ小さかったからあんまり記憶にないけど、アリアが産まれた日、母様が危ない状況だった時にもこの声を聞いた。
あとから聞いたけどあの声はアリアだったらしい。ならこの歌声はアリアか!
きっと助けを呼んでくれているんだ、






新月の夜……アリアの唄は屋敷内に響いていた。
それはまるで暗黒の世界に聖女が降りてきたかのように
そして暖かく包み込まれるように……
みなの目を覚ました。



「アリアの歌だ」
「あなた。急ぎますよ!」



バタバタと屋敷内が騒がしくなり始めた頃……アリアの唄に変化がでた。
それはさっきまでの暖かさとは一変して。切羽詰まったような、息苦しさを感じた。


「これはただ事じゃない……」
「ねぇあなた。頭の中になにか言葉が入り込んでくる……」

ハッ!!

「騎士たち!全員出動!!双子を探せぇ!!!」
「ルシア!探知魔法いけるか!?」
「えぇ今やってます。屋敷の裏に回って森を進んでます……そう遠くにはいってません。双子の生存反応があります!」
「ルシアでかした!」






「お頭~なんか騒がしくないですか?」
「バカっ!バレたんだよ!」
「走るんだべ!」


「いだぞぉー!!!!」


「嘘だろ!?バレるの早すぎねぇか!?」
「終わりだべ」
「もう走れないっす」
「ごちゃごちゃいってねぇで走れ!」

(迎えが来たんだ!)
(これなら……)


ビリビリッ


「は!?なんの音だっ!?」
「お頭ッ!!後ろっ!!」

スパンッ

ドサッ        バタン…………


「お、お前!!なんで!」
「いや、何で殺したんだべ!?」
おかしい。アイツにはなにも持たせていない。俺らがそんなヘマする訳ない。
ならなにでお頭を……こんな頭だけがきれいに……

「おじさんわかんないの?」
「なっ、なにを!!」
「素手だよ素手。」
「………………………………はぁ?」
「まだわかんない?試してみるか?」
「何を言っ…………て……あれ?地面が近づいてく……」

ボトッ

「君も殺らないと分かんない?」
「……ヒッ……」
「ねぇ、早く俺の弟返してよ」
「こいつはもう要らねぇべ!渡すから!命だけは勘弁してくれ!」
「はい。ありがとう……」
「じゃあこれ……で……」
「でもね?俺の弟の名前はこいつじゃないし……お前がやったよな?アレクを気絶させたのお前だよなぁ?」
(こいつ笑ってやがる……笑ってるのに笑ってねぇべよ。って声が出ねぇ……)


バタンッ……





「アレク様!!お怪我はないですか!?」
「ん?あぁ大丈夫!俺よりアランをお願い」
「はっ!」
「アレク!アラン!大丈夫か!!」
「父上!さっきの歌は……」
「あぁアリアだよ。また救われたんだ」
「そうですか……」
「それよりお前!その手大丈夫なのか?」
「これですか?返り血ですよ!」
「そーか!なら良かった!」



(聞こえてるよ……うん。神の祝福で聞こえてるけどやっぱりうちの家系おかしいよ。)

(これ助け要らなかったんじゃないの!?アラン兄様……素手って……しかもまだ7歳だよ!?お父様もなんか言うべきでしょ!なら良かったってなによ!) 

(それにしても……アラン兄様怖すぎ……絶対怒らせないようにしなきゃ……)


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