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第一生 子猫とジャガーとドリンク無双
04
このジャガーはやはり優しく、そして温かい手の持ち主であるらしい。
こんな森の中に一人放置されても抗った形跡がなく助けを求めなかった一斉が生きようとしていないように思えて、叱っている。
咎めるジャガーの顔は大人ですら死を覚悟するだろう迫力満点の顰め面なのだが、本人、本ジャガー的にはただ無防備な若者を窘めただけだろう。
憤怒も嫌悪ももっとずっと冷たく響くものだ。この声は、一斉を嫌悪しているわけではなかった。
「わかったら、今後は生存に尽力せよ」
「ああ、吠える。ありがと、よ」
「……ぬ」
それがわかった一斉は、汚れた手のひらを服の裾で拭い、顎を掴んでいるジャガーの腕を抱きながら素直に頷いた。
すると突然触られて驚いたのか、ジャガーの耳がピクピクと忙しく動き、ついで困ったようにペタリと垂れる。
一斉は首を傾げる。
ジャガーは深々とため息を吐いた。
「阿呆は怖いものを知らぬようだ……」
「? 知ってる、ぜ」
「馬鹿者。お主召喚獣であろう? 召喚獣は喚ばれる世界のことをある程度は知っているものだぞ。なれば白い生き物が総じて危険だと神々に熟知されるはず」
「さぁ、知らねぇな……教えてくれ」
「なに?」
「アンタは怖くねぇから、アンタのことなら、知りてぇ」
「…………」
純粋に思ったことを言うと、ジャガーは酷く面食らった顔で固まってしまった。意味がわからない。
ただ無知を恥じて教えを乞うただけなのに、ジャガーの目もヒゲも全力でドン引き。ポカーン状態である。
死ぬ前もままあった。
この反応はたいてい自分がなにやら間違えた時の反応だ。
それはわかるが理由はわからないのが、佐転 一斉という男であった。
「……あのな、お主の身が多少人間族の中では大きかろうが、己にとっては人間族など小動物に過ぎぬよ。今すぐ顎をへし折って食らってやると言ったらどうするのだ?」
「それは、……吠える?」
「……吠えずともよい」
なにやら疲れた様子のジャガーは一斉の顎から手を離すと、獣からすれば酷くか弱い褐色の手をため息混じりに掴み、逞しい腕でヒョイ、と抱き上げた。
百八十五センチ、七十キロ。
十九歳と発展途上の体で一般よりかなり恵まれた上背と筋肉質なボディを持つ一斉が、片手でヒョイ。
ジャガーは本当に子どものように軽々抱き上げたので、無表情の下の一斉は気持ち複雑な気分だ。
黙ってされるがままでいると、不意に手首の傷が柔い舌先に舐められる。
「っ、……ジャガー」
「己はジャガーではない。ニャオガ族のハンター、ジェッゾ・ヤガー・ヤガー。ジェゾと呼べ、イッサイ」
「ジェゾ」
「うむ。いい子だ」
「ん」
一斉の手首をあぐ、と甘噛みするジャガー──ジェゾ。
褒められると嬉しい。いい子と言われて機嫌がいいので、思わずほんの少し頬をゆるめてささやかに笑ってしまった。
するとジェゾが同じく目を細め、一斉の手首をベロリと舐めて喉を鳴らす。
ジェゾの舌はザラザラとしていて少し痛いが、優しく丁寧な動きは甘やかされているようで嫌じゃない。
「お主、みだりに懐くな」
「あ……?」
「この国は周辺諸国より抜きん出て治安のいい国だが……その誰彼と着いていきそうな無警戒な顔は危険だ。拐かされて食われるぞ」
「……? わかんね」
ため息を吐かれた。
なにが危険なのだろう。特別笑ったわけではなく、ただ表情筋を弛めて目を細めただけだ。不思議に思うがまぁ好きにしてくれ。
いつも通りの真顔でされるがままに傷を舐められ噛まれておくと、余計にため息を吐かれた。なぜだ。
「容貌と精神が噛み合っていない上に、獣に食われて逃げようともせんとは……いかん……もはや子猫にしか見えぬ……」
傍から見ると、ちっとも抵抗せず獣にかじられているただの無防備な生肉。
実際はジェゾだから抵抗しないだけなのだが、そんなこと知る由もないジェゾは「あれほど言い聞かせたのにコイツはアホなのか?」と呆れ果てつつ、妙な愛護精神を煽られガブガブと噛みついた。
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