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第一生 子猫とジャガーとドリンク無双
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◇ ◇ ◇
皇帝に会うためと連れられてきたのは、やたらに広く華美な一室だった。
ここは〝玉座の間〟というらしい。
要するに応接室だ。
部屋に入る前、皇帝と謁見する時はこの部屋を使うのだとジェゾが教えてくれた。
白や金を基調とした装飾。ロココやバロックを感じさせる洗練された空間。
アーチ状の梁が巡らされた天井は見上げるほど高く、一人のためだけの一室にしてはあまりにも広大である。
柱などの各所に施された浮き彫り細工や絵画は、芸術の心得がない一斉ですらなんだかキレイだと感じる。
「イッサイ、己の真似をしろ」
無表情ながら内装の雅に感激していると、ジェゾが静かに膝を折った。
「ジェッゾ・ヤガー・ヤガー。イェソロ森林調査任務、無事終了いたしましたことご報告申し上げます」
──作法がある。
瞬時に察した一斉はジェゾに倣い、同じく片膝を折り頭を垂れる。
「あはっ! あ~構わん構わん楽にせい! なんじゃあお主ら二人揃って真顔で神妙にくふっ、くふふふふっ!」
しかしなぜか盛大な笑い声が聞こえて、一斉はそっと顔を上げた。
視線を声に向けると、やけに存在感を放つ中老の男が重厚な玉座へ悠然と座し、こちらを見下ろしてニヤニヤと笑っている。
「まったく、ジェッゾはワシが堅苦しい形式を好まぬと知っておるくせに毎度律儀に定型文から始めおるからのう?」
第三十七代ジェリエーロ帝国皇帝──ドフョルン・マルキ・ジェリエーロ。
重たげな瞼から伺う金の瞳が、空を舞うワシのように見えた。
ひとつに縛った鮮やかな金のウェーブヘア。ハッキリした鼻梁とややくぼんだ眼窩、厚い唇と刻まれたシワに年嵩と経験を感じる。昔はずいぶんモテただろう。
背丈はジェゾ、いや一斉よりも少し小さく、ゆとりのある衣装に威厳を感じる髭をたくわえている。
とても六十歳過ぎとは思えない。
十以上若く感じる。
事前にジェゾから聞いた話では、どの国よりも早く異種族交流を推奨し、国を大きく発展させた名君らしい。
けれど不思議と恐怖を感じないのは、皇帝が無邪気に笑うからだろう。
余裕と威厳。
一斉にとって、おとぎ話に出てくる王のイメージそのものの皇帝だった。
「はぁ……必要故に廃れず残る形式を格式と呼ぶのですぞ、陛下」
面食らう一斉をよそに、ジェゾが呆れたため息を吐きながら立ち上がる。
皇帝の見かけや立場と不釣り合いな笑顔と発言には慣れているらしい。
一斉は慣れていない。
ジェゾに倣って立ち上がり、黙したまま二人のやり取りを静かに眺める。
「じゃから人避けをしてやったじゃろうが。ん? 人目なぞただの観客よ。見せつけてやれ」
「己と陛下の謁見を見たがるその観客殿は、余程国を愛しておるのでしょうな」
「愛国心が過ぎよるのう! ジェッゾのワシへの忠誠心は随一だと言うに彼奴らは万が一だの相手は獣だのせめて近衛をだの、毎度うるさくてやってられん」
「陛下は臣下に慕われてらっしゃる。全くの用心をせずにいるというのは難しゅうござる」
「くくっ。じゃが『本気でジェッゾがワシを殺そうとしたとして止められる者がおるのか?』と言ったら、宰相のメルクスも王家の護衛騎士たちも顔をクシャクシャにして黙り込みおったわい!」
皇帝は愉快痛快と高笑いした。
ジェゾは頭が痛そうだ。
なでてあげたいが、一斉では頭に手が届きそうにない。無念。
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