38 / 81
第一生 子猫とジャガーとドリンク無双
30
しおりを挟む『下っ端とは言えうちのもんブタ箱にぶち込むとめんどくせぇからな。アイツは一応カタギの半グレだろ? 学もなきゃ親もダチもいねぇし、近所にゃあのナリでヤベェヤツだと思われてっから関わりゃしねぇよ』
『んまーアイツ顔怖いスもんねー。ガキとは思えねぇガタイしてっし。でも流石にムショ入れって言われたら嫌がりそうスけど』
『バーカ、一斉は俺に惚れてんだぜ? 好きだっつってしばらく優しくして〝お前にしか頼めねぇんだ。待ってるから、出所したら二人で暮らそうぜ〟とか言っときゃ喜んで捕まってくれんだよ』
『うっわ虎さんマジの鬼畜スねぇ! あんだけかわいがってたのにその笑顔どういう感情? こわ。一斉かわいそ~』
『ハッ、俺が男にマジになるかっての。変わり種にもそろそろ飽きてきたとこだったからいんだよォ。本命の女にゃできねー変態プレイもヤリ尽くしたわァ』
『あーあ、もったいねー。せっかく虎さんがいつでもどこでも呼べばしゃぶるバカに仕込んでくれたのにー……』
『昔はもうちょい華奢だったんだよ。あんなデカくなるとか思わねぇじゃん。かーちゃんいた時? くらいのチビの頃はまぁかわいい顔してたけど今は暇つぶしにしかなんねーし』
『いやー俺らも面白半分ご都合半分で散々使い込んでたんでなんもッス。えーでもやっぱもったいねー』
『ま、今度はムショで使ってもらえんじゃね。アイツがバカなの、ちょっと喋らせりゃすぐわかっちまうし』
『う~んそれもそっスね~』
──おっしゃる、通り。
一斉はバカだ。
バカだからいつも一歩遅れて気づく。
うすうすわかっていただろう? と言われればそれまでの真実。
優しいキスは、バカには一生貰えないものだったのだ。
踵を反したその足で部屋を解約し、有り金全てを大家に託して持ち物の処分や手続きを任せた。
裏の人間と関わりのある一斉に部屋を貸していた大家だ。金を渡せば始末はどうとでもうまくつけてくれるだろう。
そして財布に入っていたはした金で山までタクシーを走らせ、人気のほとんどないぬかるんだ山道を疲れ果てるまで登った。
あとは──ドボンと。
「男だったから、ダメだったのかもしんねぇし……俺だったから、ダメだったのかもしんねぇし……あんま、よくわかんね……俺は、バカだからな……よくわかんねぇな……」
全てを語り終えると、一斉は黙り込んで俯き、視線をどこともなくうろつかせた。
欲と、感情は、矛先が違う。
一斉は男が好きで、女はダメだ。からっきしダメだ。女に恋はできるかもしれないが、抱けと言われるとどうしてもできない。それと同じだろう。
兄貴分にとって男の一斉は心の矛先ではなかった。
ただの人間、一斉として見てもらう方法は、バカなのでわからなかった。
ほら、ただそれだけ。
なんてことない話である。
「そうか……」
ジェゾは耳に取り乱すことも憐れむこともなく、夜闇のように落ち着いた声で理解を示し、一斉を見つめていた。
シン……としばし静まり返る。
説明が下手くそな一斉がトツトツと脈絡なく語る過去を、静かに相槌を打って深く聞いてくれていたジェゾ。
一斉は自分が別の世界で生まれたただの人間であることも、グウゼンのことも、立仲の償いのことも、何一つ話していない。
わけのわからない状態で失恋をして萎びた恋心の話をしたところで、ジェゾには理解し難いおとぎ話に過ぎないはずだった。
けれどジェゾは、聞かない。
ただ、そうかと頷いた。
「……このくらい、平気だ。刺青が消えねぇのは、仕方ねぇ……それだけ、な。まぁ、平気。俺は、バカだろ。すぐ忘れるぜ……」
無言が耐えられず、つい余計な言葉を付け足して誤魔化してしまう。
弱いことがバレるのは怖い。けれどジェゾから目をそらさずにいられるのは、ジェゾが温かく包み込む瞳で一斉を見つめるからだ。
ジェゾの目は不思議だ。
従順で聞き分けのいいバカな犬を、甘えた子猫に変えてしまう。
142
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる