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第二生 もぎたてフレッシュ喫茶店
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「ジェゾ。メニュー終わったら、俺の説明、変じゃねぇか見てくんねか」
「んん……?」
自分が考えた説明や感想がちゃんと伝わるか、ジェゾに確認してもらえばいい。
それなら感性は現地人のものだし、思慮深いジェゾなら多方面から見てくれる。我ながら素敵なヒラメキである。
そう考えて提案すると、ジェゾは特に意識せずとも眠たげな無表情がデフォルトな一斉の顔を眺めて不思議そうに顎をさすった。
「なるほど、そうなるのか」
「? あぁ。基本俺やるぜ。けど味とか素材とか、こっちの人がわかるように。ちゃんと金払うし……金以外でも、俺がやれるもんならなんでも払うぜ」
「かつ報酬が出るのだな。いくつもないメニューの確認で」
「……? ん」
さすさすと顎をさするジェゾ。
わけもわからず頷く一斉をじっと見つめるが、そもそも選択肢になさそうな黒目をしばらく眺めてベロリと舐める。
「復唱せよ」
「は?」
「『ジェゾ、手伝ってくれ』」
「ジェゾ、手伝ってくれ?」
「『俺一人じゃできないから』」
「俺一人じゃできないから」
「『一緒に考えてくれないか?』」
「いしょに、考えてくれないか」
「そうかわかった。では報酬は己がまだ飲んだことのないドリンクを一杯としよう。とびきり美味いものだぞ」
「………………うん」
軽く承諾すると、一斉は微かに見開いていた目をパチクリと揺らし、それからゆっくりと元の眠たげな具合に緩めて、一度瞼を下げて上げた。
ジェゾはたまに、一斉という子猫を心底不思議に思う。
「アンタがメニューの説明を考えてくれないか?」と言われるつもりでいたのに、なぜか仕事の依頼をされたのだから無理もない。
損得勘定の弾き方すら大して知らないくせして、他人の得は一つ二つより正しく数えて差し出す一斉。
欲も下心もたまには感じる。
誰しも感情やらエゴやらなんらか得があるから行動するのは全ての世の真理として、一斉もご多分に漏れない。
が、そこに防御がない。
別に謙虚でも健気でも卑屈でも慎重でも博愛でもないが、自分の損失を心から損失と思わないタイプなのだ。
敵を抱いて自爆した時「自分も死んだ」ではなく「敵を殺せた」と大満足する思考回路と言えばわかりやすいだろう。
生物的に意味がわからない。逆に面白くなってきたジェゾである。
「そういえば、いつぞやはちょっと目を離した隙に皇帝陛下を脅しておったな……お主まさか、取引と脅迫しかものの頼み方を知らないのか?」
「や、知ってる……オネダリくらいちゃんとできる……」
「ほう。ならなにか強請ってみよ」
「いやでもこれたぶんそういうんじゃねぇと思う……俺のはなんか違ぇと思う……」
「いいからやってみよ。己の報酬はそれでよい。頼みはもちろんのことイイやイヤはおろか好みすら要求したことがないお主の強請り方に興味が湧いた」
「面白いことねぇと思う……」
ほれほれと煽られ、一斉は仄かに頬を赤く染めつつしぶしぶと動き出した。
報酬と言われると辛い。できることならなんでもと言ったし、ジェゾの望みならそれでなくとも叶える。
叶えるが、たぶん望まれていることはこれじゃないと思う。思うがこれしかできない。いやでもこれじゃないと思う。
一斉はジェゾの足の上でモゾモゾ振り返り、白い巨体をベッドへ押し倒した。
倒れないので強めにどつく。ビクともしない。途方に暮れると自主的に寝転がってくれた。かたじけない。
馬のような腰に跨り、バサッ、と雑にシャツを脱ぎ捨てて鳳凰の絡む裸体を無防備に晒す。されるがままのジェゾ。
「なぁ……俺を好きに、してくれよ」
ジェゾの羽織じみたガウンをはだけさせて、白く滑らかな胸の毛皮と分厚い胸板にピタリと触れる。
「アンタの好きに、されてぇんだ。俺はアンタのオモチャだから……壊れるくらい、俺の体で、たくさん遊んでください」
一斉は仄かに赤い頬でボソボソ強請り、跨った腰を太ももでキュ、と締めつけた。
一斉にとってオネダリといえばセックス関連で兄貴分たち由来のコレだ。
日常会話で改めてやることじゃないが、別に恥ずかしくはない。ただジェゾにオネダリは初めてでやや照れる。
ソワソワと腕をさすると、ジェゾはまじまじと一斉を見上げて興味深そうに「なるほど、オネダリはこうなるのか……」と感心した。いやそんなにしみじみと鑑賞するものではないと思う。
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