喫茶つぐないは今日も甘噛み

木樫

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第二生 もぎたてフレッシュ喫茶店

16※微



 ジェゾは「それでよい。それがよい」と機嫌よく頷き、わかりやすく強請った一斉を褒めるように抱き寄せて、お望み通り口付けた。

 一斉がその気なことくらい、ジェゾは初めての日から知っていたのだ。
 外出を禁じている手前溜まるものも溜まるだろうと、一斉が構わないなら相手をしてやるつもりでいた。

 異種族交流が盛んなこの国では、一夜の相手なら体の相性以外それほど頓着しない。
 とりわけジェゾは生物の営みにオープンなタイプで、性分で、実のところ一斉の遠慮はまるきり杞憂だったのである。

 なのに一斉がなにも求めないので、むしろジェゾはもどかしい。

 自分じゃ不服かと思ったが、であればそもそも反応しまい。
 ならなぜ? 白い巨躯が恐ろしいのか? ギラつく牙が恐ろしいのか? 爪が、尾が、……まぁ無理強いしないが。

〝求められれば叶えてやろう〟

 そんなつもりで悠々と知らぬ存ぜぬ、毛繕いをしてやっていた。

 それが──今夜のジェゾはなぜか無性に待ちきれない気分になり、大人気なくとっとと求めろと自ら煽って、こうなるよう仕向けたわけで。

 大人とて万能ではない。
 狩りで獲物を前にした時と同じ高揚感が湧いて、衝動的にやった。

 このなにも知らないような子猫にあれこれ教えこんでやったらどんなふうに鳴くのかと、好奇心が疼いたのだ。

 想像以上にイイ鳴き声だな、とゴキゲンな満足に尾を揺らすジェゾは、濡れた下着を剥いで顕になった屹立をクチュクチュと擦ってやりながら、一斉の唇に、ちゅ、と口付けた。


「ぁ…んっ……も、ジェゾ……悪い……すぐイっち、まう……っく」

「構わぬよ。好きなだけさせてやる。枯れるくらい出せばよい」

「ふっ……っぁ…ん、っ……っ」


 そんな心境など知る由もない一斉は、言葉と共に先端近くを小刻みに往復されて、ドクドクとジェゾの手の中に白濁液を吐き出す。

 恥ずかしいほど早かった。
 だが射精に合わせて粘ついた先走りを絡めた手にズリュッ、と根元から絞られると我慢のしようもない。
 足先がピンと引き攣り、駆け巡る絶頂に痺れた仰向けの肢体が、ガクガクガク……ッと痙攣する。

 浮いた腰が震えに合わせて揺らめくと、ジェゾはゴロゴロと喉を鳴らして腰の下に腕を潜らせ、一斉を抱き寄せながらゴロンとベッドに寝そべった。


「ぉいっ……」

「さて、次はどうしてほしい?」

「つ……? 次は、次はなん……ん、ぅ……ぅん……ぅ」

「次は次だ。満足したならそれでよいし、まだ足りぬならかわいがってやろう。お主はお主が思うよりかわいい生き物だぞ? イッサイ」

「ん、や……俺はイカついと思うぜ」


 イッたばかりで余韻にヒクつく体の都合を意に介さず、我が物顔で赤い耳をベロベロと舐めてチュッチュと唇を擦り寄せるジェゾ。

 それで簡単に絆される一斉。
 本人の言うとおり、ジェゾは確かに気ままでイタズラ好きな悪い獣らしい。

 恋を自覚して早々なんだが、薄々勘づいてきた。清く正しく美しいお手本のような出来た大人ジャガーに見えて、彼は個人主義でマイルールの強い自由人だ。

 ジェゾへの理解を深めた一斉は、はっはっと乱れた呼吸を整え、汗ばんだ額をジェゾの肩にスリ、と押しつけた。


「ジェゾも、かわいいよ……」

「そうか。それは嬉しいが、いきなりどうした。気でも狂ったか」

「シラフだぜ……」


 好きな人を口説いてみただけなのに、正気を疑われた。
 普通にジェゾをかわいいと認識している一斉はよくわからないが失敗したことだけを理解し、腰にまわった腕を同じ片腕で抱き寄せた。

 今日は続きをできそうにない。
 ジェゾに事情を話して、ジェゾが好きだと自覚して、触って、舐めて、噛んで、吸って、出して、いろいろと胸がいっぱいで、一斉は頭の中がくるくるだ。

 暗にお開きを示した仕草を受け取り、ジェゾは「残念だ」と笑って一斉の髪を嗅ぐ。
 半分本気で残念なことは一斉の知らない話である。




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