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第三生 現地住民舐めたらアカン
09
──そうして平和な時間が流れていた矢先のこと。
ドァバンッ!
「ゼンザいるぅ!?」
「なにごと!?」
「ゼンザいたぁ!」
逆光でピカリと光るスキンヘッド。号泣寸前の重低音。鋭いつり目。
ふわふわのローブを翻してやってきたそのムキムキマッチョは、ゼンザパーティーの魔術師──バーターであった。
またしても一斉の知らない珍客だ。
ジェゾが忘れた小動物でもある。
「ゔぅ……気持ち悪い~……」
よく見るとのっぴきならない様子のバーターの小脇にはもう一人の仲間、ゼンザパーティーの狩人──マエセツが抱えられていた。
しかしこちらも様子がおかしい。
ぐったりと項垂れ微かに呻いている。虚ろな目に青いような白いような紫のような、今にも吐きそうな顔色。
一斉はすぐにピンときた。
覚えがあるのだ。
このような状態の人を、一斉は陽の光を避ける育ちからよく見ていた。
一度手をつけると際限なく溺れ、求め、いつしかやめたくてもやめられないと嘆き中毒と化す。そうして迎える朝、彼らは皆、いつもこんな顔をしていた。
そう、まさしくこれは。
「二日酔い」
「毒だな。状態異常だ」
「どくだ」
毒である。紛うことなき毒の状態異常である。アルコールは無関係である。
現世より数段危険でありながら高度な医療技術など発展していないこの世界では、たいていの病や怪我を不思議の効果で治療する。
生命力や魔力はもちろん、モンスターに非論理ダンジョンが平然とまかり通っているのだ。最先端テクノロジーと神の手を持つ医者がいたところで意味も需要も特にない。
ウサ耳の生えた男の人獣混ざった身体構造やHPの回復方法、生態系ガン無視モンスターの毒の解毒法なんて医科大学でも習わないだろう。
怪我や病気は不思議由来でのことが多く、体への作用の仕方からもう違う。
一斉の世界の常識に当てはめるだけ野暮というものである。
そんな不思議の毒に冒されているらしいマエセツを抱えるバーターは、ぬぅっと足音なく現れたジェゾに短い悲鳴を上げて後ずさったが、よほど仲間の様子が気がかりなのか小動物のように縮こまりオドオドとマエセツを床に横たわらせた。
ジェゾは軽くマエセツを観察したのち興味を失ったのか、すぐそばの席に悠然と座り直してまた新聞を読み始めた。
それを目で追い、ほっと息を吐くゼンザとバーター。
一斉のことは気にならないようだ。ジェゾがいると視線と意識のほとんどをジェゾがかっさらってくれるので、一斉の強面はまろやかに見逃されて助かる。
「[泥刺魚]の毒にやられたんだ。今夜のオカズにどうかと思って」
「ほほーう。まさかそれでうっかりマエセツが[泥刺魚]の群れに落ちたなんて言わないよな?」
「そのまさか!」
「バカヤロウだよ!」
パチン! と指を鳴らすバーターに頭を抱えて絶望を叫ぶゼンザ。
[泥刺魚]は森林の湿地帯に住むナマズに似た姿の魚モンスターだ。
大人が一抱えするほど大きいが攻撃性は低く、群れで暮らす。食べるとうまいので、よくジェゾがお土産に捕まえてフライやソテーにして出してくれる。
けれど口の中に毒袋があり、一匹では微弱だが群れで攻撃されると神経をやられて目眩、吐き気、頭痛、酷ければ意識障害までずいぶん酷い目に遭う。
ソースはジェゾ。補足はツーミン。
一斉は丸覚えを担当した。
「マエセツが足を滑らせたんだ。急いで釣り上げたけど、しっかり状態異常で……だけどもう夕暮れでしょ? 向かってるうちに治癒院も薬屋も道具屋も教会も店じまいする時間になるし、時間外になると割高だし、それでゼンザなら解毒薬持ってるかもって思って白獣の目撃情報を辿ってここまで来たんだ。いや~よくわかんないけどダンジョンのすぐ近くで助かった~」
「ちょっと待て。薬欲しさにオレを追ってきたってことは、それまでオレを白獣から救う気はさらさらなかったってことか? 完全に見捨ててたってことか!? 即刻諦めたってことなのか!?」
「だって逆に聞くけどあの状況のゼンザをボクら如きが救えると思う!? 二秒で全滅するに決まってるじゃんもう死んだと思うじゃんゼンザのぶんまで長生きするよそのために夕飯のオカズだって狩るよハンターだもん中級だけども!」
「それで足滑らせて毒になってちゃ世話ないぜ! 結局生贄になったオレに毒消し要求って恥を知れ友よ! オレのために白獣に挑む輝かしい友情を期待したのに裏切りやがって!」
「恥は知らずとも命は知ってるんですぅ! ボクは昔ハンター協会で白獣を指さしてバカにした上級ハンターがさした指一瞬で全部握りつぶされたの見たことあるの! 最前列だったの! 絶対服従なの!」
「知ってるわオレも隣にいたわオレも最前列だったわ三人とも最前列だわ!」
「もういいから早く解毒薬出して!?」
「実はちょうど切らしてますぅ~!」
「バカヤロウ~!」
「少し声が大きいな」
「「はい」」
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