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第三生 現地住民舐めたらアカン
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全力の不毛な言い争いが耳に障ったジェゾの一言で、ゼンザとバーターはスンと背筋を正して大人しくなった。
やはり二人とも青い顔で白目をむきながら微かに震えている。最早声を出すと死ぬとすら思っていそうだ。
ジェゾに声をかけられた者は皆こうなるのだろうか? 実はネバルは肝の据わった強者だったのかもしれない。
黙り込んでしまった二人にかわって、一斉はチラリとジェゾを見た。
ジェゾは相変わらず新聞に目を落として我関せず、だ。
カタカタと震えるゼンザたちは困り果てている様子で、横たわるマエセツは具合が悪そうにうーんと唸っている。
「……ジェゾは解毒薬ねぇの?」
「ん?」
一斉は少し考えて、フラリとジェゾに近寄り、猛獣の耳に唇を寄せた。
パタンと身じろいだ耳が一斉のほうにクイと向けられ、促される。
ゼンザたちが目玉を剥き出して絶句しているが一斉の知るところではない。
「なんだ、欲しいのか」
「や、俺は欲しくねぇけど……お客さんらは、欲しそうだぜ」
「ふむ。それがどうだというのだ?」
「や、わかんねぇけど……あげたほうがいい感じなんじゃねぇかなって……なんか、困ってるぽいしよ……」
「そうか。だが己は彼奴らに解毒薬をくれと請われておらぬ。故に己が手持ちの解毒薬の在庫を数えることはないのだ。そうだろう?」
「そうだけど、二日酔いはダルいぜ……」
「まぁ問題なかろうよ。あれは死ぬ毒ではない。丸一日ほど吐き気と頭痛に耐え意識を朦朧とさせておけばそのうち治る。良くあることだ。あれで泣き喚くハンターなどおらんからな」
ボソボソと悩む一斉の頬を、ジェゾはベロォリと舐めて可愛がった。
軽く言ってのけるジェゾの言葉にゼンザとバーターがヒィンと抱き合って震えているが、熟練ハンターのジェゾにとってあの程度の毒はほろ酔いである。
ソロ歴の長いジェゾの基準は自分なので、同じハンターにはちと厳しい。
一斉はもどかしげに眉を下げたが舌を受け入れ、耳飾りのついたジェゾの肉厚の耳たぶをパクンと唇で食み返した。
ジェゾの見立ては間違いない。
死なない毒なら安心だが、一斉にとって店に来た者はみんなお客さんだ。
お客さんが床で唸っていては立仲の愛する喫茶店文化を布教できないし、ゼンザは喫茶店を気に入ってくれたので、ゼンザの仲間なら辛くないほうがいい。そしてできれば揃って常連になってほしい。
(……ツーミン)
『んぉ? どしたん一斉は~ん』
一斉はジェゾの耳にチュ、とキスをしてから、スリープモードのツーミンに頭の中でコソリと声をかけた。
(解毒の付与効果って、あんのか)
『もちあるで! ほんでマックスレベルで作ったらあのくらいの毒なら完治できる思うけど、状態異常の付与とか治癒とかはかなりエネルギー食うで? 今の一斉はんのドリンクバーのレベルやったら67パーセントくらいかな。どっとお疲れるわ。そんでもかまへん?』
(いいよ……昔から俺、食って寝たらなんでも治るし、今日もう閉店だしよ……)
『おしゃ! ほんだらエネルギー効率考えてベースをベリー系の果実水に、付与効果にエネルギー全振りで新しいレシピ組もか~!』
(あぁ。ありがとな、ツーミン)
「じゃ、やるか……」
ジェゾの肉球に顎の下を擽られつつドリンクバーを起動し、一斉はツーミンの提案を元に新たなドリンクを作り始める。
毒消しというと苦そうだ。
ベリー系の果実水なら確かに美味しそうで作るのにあまり力も使わない。
濃厚な果物ジュースというより果汁フレーバーの水という感覚で土台を組み、[毒治癒Lv3]を付与した。
毒の治癒薬なんて普段は作らない。
おかげでほとんどレベルは上げていないが、ツーミンが完治できると言ったのだから問題ないだろう。いざと言う時のために、今後は状態異常関連の治癒効果付与レベルを上げておこう。
薬と言えば瓶に入っているイメージなので、入れ物は透明な小瓶を想像する。
「……ふ」
そっと画面のボタンに触れると同時に急激な疲労感に襲われ、一斉の手には想像通りの解毒水が握られていた。
ジェゾはそれを見て一瞬動きを止めたが、一斉は気がつかない。
顎に触れるジェゾの肉球に頬ずりしてからスルリと身を離して歩き始める。
歩きながら片手サイズの小瓶からコルク栓をキュポン、と引き抜いて、薄紅色の液体の匂いを嗅いだ。
甘いイチゴの香りだ。やはり薬の苦味緩和と言えばイチゴ味である。
立仲の喫茶店のドリンクは、全て美味いものであるべき。
この解毒水は立仲の喫茶メニューでなく一斉のワガママで客に出すもの。なら当然美味く作らねばならない。
「お客さん」
「え?」
一斉は困り果てるゼンザの肩にポンと手を置き声をかけると、そのまま小瓶の中身をグビ、と一息に煽る。
そして困惑するゼンザとバーターが反応するより早く、うんうんと唸って横たわるマエセツの顎をスムーズに持ち上げ──ぶちゅ~っと思い切り唇を重ねた。
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