悪魔様は人間生活がヘタすぎる

木樫

文字の大きさ
38 / 462
第一話 片想いと片想われ

28※【挿絵注意】

しおりを挟む


「いや、おまっ……な、なん……っ」


 驚愕のあまり言葉にならない。
 あぁもうイキそびれた……じゃなくて、きちんと眠っていることを確認したのになぜニューイが起きているのか。

 混乱で思考がまとまらない九蔵に対し、当のニューイは気にしちゃいない。
 匂いが濃すぎて起きてしまったと言うが、まだ出していないのになんの匂いで起きたのだろう。


「それはもちろん欲望の」

「つかなっんでお前こんなの無言で見てたのかねっ。見てんなら言えっ。いや、言われても困るけど……!」

「むっ?」

「ブラジルまで穴掘って逃げてー……っクソ、アホ、バカ、ドジ犬っ」

「なぜ!?」

「それがわかったら人間度ワンナップですよっ。深夜のオ✕ニーガン見される趣味なんかねーのに、もう……あーもうッ」

「えぇぇぇ……!?」


 ガビンッ! とショックを受けるニューイ。カァァァ……ッと官能により火照った体が更に熱を増して、九蔵は頭から足先まで余すところなく真っ赤に茹で上がった。

 膝小僧に額を当てて、死にたい死にたいと何度も頭の中で唱える。
 なのにニューイはなぜ怒られたのかわからないらしい。九蔵はガクリと項垂れる。


「嘘だろお前……」

「え、えと、九蔵は恥ずかしがっているみたいだが、大丈夫だぞ? むしろ嬉しい」

「は?」

「私は人間の魂や欲望を食べる悪魔なのだ。だから実は、九蔵の醸し出す肉欲……性気もごちそうなのだよ」

「ぅわっ……」


 ニューイはそう言いながら不意に真玉のような手を伸ばし、九蔵の身体をグッと抱き寄せた。

 途端、熱を持った肩が、ニューイのたくましい胸板に触れる。その体温にドクンと心臓が高鳴る。
 しかし気を取られたのも一瞬。


「っひ……っ!?」


 ニューイの手に肩を強く握りこまれるやいなや──九蔵の喉から、反射的に音の高い悲鳴が漏れてしまった。

 恐怖からではない。
 強烈だが確かに、しぼみつつあったはずの官能由来のものである。

 それはつまり、九蔵は肩を握られただけで感じてしまったということだ。


「ちょ、ニューイっ」

「ムフフ。こうして触れると気持ちいいだろう? 感じてイキたいと欲を持つと、それが人間には見えないモヤになって溢れ出す」

「ぁっ……う、っ」


 ニューイが軽く力を込めただけで、ピクン、ピクンと筋肉がしなった。

 慌てて確認すると、真横から抱き寄せているニューイの指が九蔵の肩の肉の内へズブリと埋まっている。いや、刺さっている。
 粘土人形をこねるように、確かに深々とニューイの指が刺さっていた。


(肩の中、触られて……んの、か……っ?)

「これができるから、私のほうがキミを気持ちよくできると思ったのだ」

「……っ、ふ……」


 九蔵はフルリと震えた。
 痛みも傷もない。血だって出ていない。

 なのに寝間着ごと貫通し肉の中へ侵入を果たしている指は、内側のなにかに触れているようだ。そしてその指がそのなにかをこねると、なぜか、気持ちがいい。

 体の中から性器に繋がる官能線を揉まれているように、直接的な快楽を感じる。


「ンッ……く……」


 酷いデジャブを感じた。他人が自分の内部をまさぐり、自分でもこれと確信できない身体の芯を淫猥な手つきで弄ぶ感覚。

 これはまるで、最近繰り返し見る夢の行為のようじゃないか?


「これ……ゆ、夢じゃなか、った、のか……? ニューイ、お前……」

「っバ、バレ……!?」

「ぅあっ」


 今日という日の最後の最後。
 ハマり始めたピースを組み立てた九蔵は、口角をヒクヒクと引きつらせ、引き攣った笑顔でニューイを伺った。
 もちろん気持ち焦点は避けたとも。





しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

薔薇摘む人

Kokonuca.
BL
おじさんに引き取られた男の子のお話。全部で短編三部作になります

処理中です...