悪魔様は人間生活がヘタすぎる

木樫

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第一話 片想いと片想われ

32※

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「はっ……も、っと、シて……はっ」

「フフ、わかったとも。九蔵のためならいくらでもシよう。カワイイ、九蔵」

「ニュ、ィ……っはっ……ぅ…コレ、んっ……出ねぇ、よ……んっ……」

「ムフフ、カワイイ、カワイイね」

「ンぁ…あ……」


 ニューイは始終上機嫌だ。
 乳首を強く摘み、捻じるようにこねながらカリ、と魂を引っ掻かれ、九蔵は身を丸めてプルプルと震えた。


「出したい……んっ……ニューイ……」

「いいかい? 九蔵が握っているモノを自分で慰めなければ、性気は練られるばかりで解放されない。それは嫌だろう?」

「ぁ……? ぁ、っん……いや、だ……」

「ふふ、よしよし。それじゃあ、九蔵は自分でするのだ。それを思う通りにあやしてごらん?」

「ん、く……ン……っン……っン……」


 ニューイの声は耳に残る。
 理性の崩れた頭では、熱の籠った肢体を動かし、ユルユルと動いてしまう。

 優しく諭す誘導。胸の表と裏から襲う快楽を糧に、九蔵はニューイの言う通りに手を動かして、解放を求めた。


「じょうずだ」

「ひ……っ……はっ……っ」


 ふふ、と耳元で低く笑われ、手の中の肉棒がドクッと張り詰める。

 自慰がうまいと言われてどうしてこんなに気持ちいいのやら。声までオカズになっている。悪魔という生き物は、どこまでも人間を惹きつけて止まない。

 九蔵が夢中になって屹立を扱くと、ニューイはそれに合わせて乳首をこね、魂をやわく揉み、小刻みな絶頂を与え続ける。

 何度も何度も繰り返し。もう言葉も話せないほど溶けた九蔵の髪に、ニューイはスリスリと頬を擦り寄せ嬉しげに笑って甘える。


「あっ……ぁっ……あッ……」

「あぁ、夢のようである。キミをまた味わうことができるなんてたまらないよ、九蔵、キミの匂いで酔いそうだ。それにこんなに濃度の高い欲を舌に乗せて転がしたら、中毒になったっておかしくないよ、九蔵」

「ぁッ……ぁッ……ァッ……ッ」

「人間は悪魔は常識が通じなくて気が変だなんて言うけれど……私はとても真面目なイイコでね」

「あッ……ぁッ……あぁ……ッ」

「キミ以外を、食べたりしない」

「あぁぁ……ッ」


 そうして限界まで昂った精がようやく迸り──九蔵は自分の手のひらに、ドクドクと粘度の高い白濁を吐き出した。

 それと同時に、人には見えないモヤが九蔵の周囲にうごめく。
 ニューイが九蔵の髪に口付けると、それはフワリと舞って捕らわれていく。


(──……っあ)


 射精の蕩揺と言葉にできない大きな恍惚に沈む九蔵は、自分の体の中からなにかが霧散したことを感じた。

 酷い倦怠感の中で、ズルリとニューイの手が体内から引き抜かれる。しなやかな背がわずかに仰け反り、微かに「ぁっ……ん……」と声が漏れた。

 泥に溺れていく意識と視界。
 ペロリと唇を舐める悪魔が、無邪気に頬を弛めて笑う。


「私の舌は、もうキミのものなのだよ」


 ──味覚もセリフも、全て捧げる。
 つまりそういう、告白だ。


(そんな言い方、無自覚にするなんて……確かに悪魔は、気が変だな……)


〝魂が尽きるまで甘く甘く、キミだけを愛するのだから、早くここまで堕ちておいで〟

 無邪気に誘うこの悪魔様には、絶対に、ハマってはいけない。
 頭が痛くなるほど痛感した一日は、こうして熱を持ち、閉じていくのだった。




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