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第二話 気になるモテ期
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しおりを挟む混乱に犯され、目が白黒と反転する。
「こっ、なっ、た、玉子焼きがねぇから怒ってんのか……!?」
「九蔵の好きなものは私の好きなものだがっ! 私の知らないものが九蔵を好いていると、私はしばしばそれを破壊したくなるぅ……っ!」
「ティーンエイジャーの恋心かっ!」
渾身のツッコミも、悋気に駄々を捏ねているニューイには届かない。
言っている九蔵の顔も真っ赤だ。
今の九蔵には桜庭とのマインが途中だったことなんて、残っちゃいない。
ニューイ勢力百パーセントである。
「だって銀髪は酷いのだっ! 九蔵はこれから私とご飯を食べるのに、どうして話しかけてくるっ? 人が話をしている時はちゃんとマテをしていないといけないのに、悪い子だっ!」
「あぁうんそうだな、そう教えたけどな……!」
「私はスマートフォンを持っていないのに! 九蔵とこのメッセージを送り合うことができないのに!」
「そこは気にするとこじゃねぇっつか、もうそろそろ苦しくなってきたから離れろっつか……!」
「お望みとあらば銀髪に染めてくるぞぉっ!」
「お前が一番イケメンだからそれだけはやめろぉっ! 金髪王子は最強であり至宝なんだよっ!」
──その後。
完全に桜庭を敵視したニューイをなだめるまで、小一時間を要することになった。
なんだか浮気疑惑をかけられた旦那みたいだな、と疲弊する九蔵に、どこからか澄央が「どんな王子も所詮は独占欲の塊なオスなんスよ」と親指を立てた気がしたが、気のせいだろう。
──ポコン。
『それじゃ、二人きりで行こう。その同居人には秘密でな?』
「わかった、っと」
ニューイとおやすみを言い合った九蔵は、布団の中でこっそりとマインを返し、スマホを閉じた。
自分以外のイケメンというだけなのにまさかニューイがああもへそを曲げるとは思わなかったので、桜庭との連絡には気を遣う。
秘密の約束なんて隠し事はしたくないが、こればっかりは仕方がない。ゲームと違いリアルでは、違うキャラとストーリーを始めると推しが嫉妬に拗ね始める。
ニューイにやきもちを妬かれると、九蔵は少し背筋がかゆくなるような火照りを感じた。
ニューイが好きなのは九蔵の魂だ。
わかっているので勘違いはしないが、それが悪魔の性だったとしても、独占したいと思われるのは嬉しかった。
悪魔と人間。男同士。
魂きっかけと顔きっかけ。
けれどそのどれもニューイが気にしていないように見えるので、九蔵が愛されるに足る自信を持てれば、もしかして幸せなのでは、と思える。
(俺がコツコツ頑張れれば、魂以外で、なんか、魅力を作れたりして……それなら、いいかもな)
今日はいいことがたくさんあったので、魔が差したのだろう。
九蔵は少し笑って、目を閉じた。
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