136 / 462
第三話 恋にのぼせて頭パーン
47(sideニューイ)
しおりを挟む「同情なんかじゃないって、これでわかっただろっ?」
「う、ぐぅ……っ」
「わかったらさっさとアイツに全部ゲロして、今の自分は九蔵を一番愛してるんだって言ってこいさ!」
ズーズィは叫び、泣きじゃくって脱力するニューイの胸ぐらを強く引き寄せ、ガクガクと乱暴に揺すった。
「だってお前も、アイツのこと、めちゃくちゃ愛してんじゃん……っ!」
(──そうだよ)
ズーズィに言い当てられ、ニューイは歯を噛み締めて溢れそうになった本心を閉じ込めた。
九蔵の気持ちを知らなくても、無理に笑う姿を見てプロポーズを取り消すと決めたニューイは、別れを引き伸ばしてイチルの墓地へ引きこもっている。
もともと、嘘や誤魔化しがヘタでドがつく素直なニューイだ。
幼なじみのズーズィの目から見ると、九蔵を離れがたく愛していると一目瞭然だったのだろう。
しかしニューイはふるふると首を横に振る。必死になって横に振る。ズーズィは、カッと顔を真っ赤にして怒鳴った。
「なに嫌がってんのさクソボケニューイ! お前を本気で愛してるアイツは、お前がなにも言わなくてもお前を優先するんだよっ! ボクとの約束を守ってんのっ!」
「うぅ、うぅ……っ」
「でも、自己肯定感カスだから、お前がイチルだけを愛してるって思い込んでる……っ! お前を困らせて嫌われないように、〝好き〟も〝愛してる〟も言わないイイコでいようとしてんだぞっ! それでも死人を優先して、九蔵を選ばないのかよっ!」
「うぅっ……う~……っ」
ゴリッ、ゴリッ、と鋼鉄の塊が心を殴打しのしかかるような罪悪感を与えられても、ニューイは頑なに拒否し続ける。
「嘘つき! 嫌なら泣くなよ! どうせアイツが全部承知でお前を本気で愛してたって知って、もっともっと好きになってるくせに……! だからのうのうとプロポーズした自分のこと、殺したいくらい大嫌いなの、わかってるっ……」
「うぅぅ……っ」
どれだけ図星を突かれようとも、ニューイは頷くわけにはいかなかった。
ズーズィの気持ちはよくわかる。
きっと彼には理解できない。
イチルは死んだ。生まれ変わった。九蔵になった。それでいいだろう?
九蔵はひねくれ者のズーズィが認められるほど、傷ついてばかりの大事な幼なじみを愛してくれている。
弱々しい人間でありながら、ズーズィからすると面倒くさくてアホらしいやり方で、懸命に愛してくれている。
ニューイがやっと幸せになるのだから、なぜ躊躇うのかわからない。
そんなズーズィの言い分はよくわかるが、それでもニューイは首を縦に振らなかった。
「バカニューイ……お前、イチルと九蔵が違うって、気づいてたじゃん……」
悲哀と疑問の混じったぼやき。
グッと、胸ぐらを掴むズーズィの手に力がこもる。
「別な九蔵を愛してるのに……なんで、イチルにこだわるんだよ……なんで、九蔵に愛してるって、言ってやらないんだよ……っ」
質問を重ねられると、涙でしとどに濡れた青白い頬が震えた。
ニューイは九蔵の姿をしたズーズィの琥珀色の瞳を見つめながら、恋しげに眉を歪める。
そうだ。わかっていた。
九蔵とイチルは、魂だけが同じで、後はまるで同じじゃない別人。
「だから、ダメなのだ……」
「はっ?」
「九蔵が本気で私を愛してくれているなら、なおのことさよならをしなければならない……」
「なんでっ」
これだけ発破をかけても九蔵との別れを選ばれ、驚いたズーズィは掴んでいたニューイの胸ぐらを離した。
ニューイはドサッ、と柔らかな若草の上に尻もちをつく。
今なら何も言わずに逃げ出すことはできたが、立ち上がる気にはならない。
涙で汚れた、悲痛な慟哭をあげる。
「だって、イチルじゃないなら、私が九蔵を選ぶことは──ただの裏切りじゃないか……っ!」
「っ……!」
土ごと若草を握りしめて、一人きりじゃもう抑えられない罪を叫んだ。
33
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる