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第四話 ケダモノ王子と騒動こもごも
16(sideズーズィ)
しおりを挟む撮影を任せている責任者がなにも言わないのでズーズィもなにも言わないものの、個人的に腹立たしい。
バチン。シャッター音。
「やっぱりニューイさん、カッコイイわ~……スタイルいいからなんでも着こなすし系統選ばない正統派のイケメンだし、私たちスタイリストにとっちゃ最高の素材よ」
「ホントよね~……まぁ喋るとワンコっぽいんだけどさ」
「それもカワイイじゃん! ギャップ的な? 違う国から来たとかでたまに言葉変だけど、裏表ないし、人懐っこいし」
「アハハ、素直だもんな~。気取ってないから男のスタッフとも仲良いわよね」
「そーそー。けどこないだ男たちと猥談してたの笑った。夜のプレイ講習会」
「あれねっ。私も笑った」
「彼女のためらしいわよ?」
「かーわいっ。でもたぶん教えてもらってたやつのいくつかは、AVとか風俗の知識だろうけどねー」
「まぁ気づくでしょ? 彼女」
「そうよね」
壁際に下がりクスクスと控えめに笑うスタイリストたちの話に、桜庭の姿をしたズーズィは、ンベ、と舌を出した。
持ち前のコミュ力と人の良さ、いや悪魔の良さで、半年経たずすっかりスタッフたちに受け入れられている。
黙っていれば写真を撮っている人間たちまでもがほう、と見惚れるほど美しい。
自然体がニューイの才能であり魅力。
今はバカほど腹が立つが。
(あ~おもしろくな~い)
ニューイがイキイキしていると全くもってつまらない、イジメっ子のズーズィ。
そんなズーズィのスマホが、不意にポケットの中でブブ、と震えた。
開いてみるとメッセージが来ていた。
送り主は──澄央である。
またオリジナルズボラ飯でも開発したのだろうか。いつもレシピをシェアハピされる。たいていマズイ。
ズーズィがそれをニューイに送り、ニューイが九蔵にアレンジしてもらって美味しいレシピに昇華するのが毎度のことだ。
画面をタップし、トーク画面を開く。
『今夜あたりニューイと盟友メシ会したいんスけど、ココさんいるのヤなんで連れ出してほしいス』
『ついでにニューイにも口封じよろ』
『報酬はイタズラ協力券一枚で』
途端、ズーズィはニマ、と口元に意地の悪い笑みを浮かべた。
グッドタイミング。平和でラブラブな幼なじみのデレ顔より、人間の悪友のほうが断然楽しそうじゃないか。
『クーにゃんと喧嘩したオアクーにゃんに聞かれたくない話したいどーれだ』
『ダブル』
『最高じゃん。テンアゲ止まらん~。あとで全部ゲロってくれんならりょ!』
『いっスよ。たいしたことじゃないし。でも俺は拗ねてるス。俺は年の差とか関係なくココさんが一番のズッ友スけど、ココさんはよくわかんねぇス。もっと俺にもデレデレするべきス』
『なにそれどちゃんこ大爆笑捗りまくりんぐなんですけどクソウケる。取引成立。悪魔の名において契約しまーす』
『笑い事じゃねぇ』
心ウキウキ。素晴らしきかな、他人事のトラブル。ズーズィは澄央とのトーク画面を閉じ、代わりに九蔵へメッセージを打ち込む。
『クーにゃん』
『今日ボクと夜景デートしよ♡』
「拒否権なしっと!」
さーて。澄央に協力するついでに九蔵をからかって遊んでやろう。
コスプレ衣装と大人のオモチャ。
どちらのプレゼントをオススメするとよりいい反応をするだろうか。
そのまま夜景の綺麗なホテルの一室を予約し、ズーズィはなにも知らずに九蔵へのラブが爆発して溢れまくっているニューイを見つめて、ケケケと笑った。
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