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第六話 敗北せよ悪魔ども!
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しおりを挟む今更そんなことを痛感しながら、九蔵は頭蓋骨、体ともに?だらけで混乱するニューイにスマホの画面を見せた。
『え、えぇと……〝泣いてる恋人を放ったらかしてうじってるうじ虫は、カスだよな〟?』
「!」
『ぅひえっ』
返事の代わりにニューイの頭蓋骨をカポッと首に戻し、その空っぽな体にむぎゅぎゅっと抱きつく。
不安や強がりやプライドや焦燥や混乱やと、うまく生きるために必要なごちゃついた感情でミスを重ねてドツボにハマり見失っていた絶対的な価値基準。
本来の九蔵には、ニューイを泣かせてまで守りたいものなんて、なにもなかった。
(馬鹿だよな、俺……ちゃんと好かれてるって安心して日常に慣れちまったから、愛する役目もなんとかする役目もお前だけに乗っけて、挙句に泣かせて……嫌われるかもって怖くなった途端焦って空回りして、無様に転んだ)
カスでごめん。
自分のことばっかりでごめん。
それでも九蔵はニューイが好きで、好きだからニューイと一緒にいたい。
ならニューイと一緒にいる結果生まれる騒動は九蔵の騒動。ニューイがいるせいでとは、思えないし思わない。
いたいから、いてほしいから。
失敗ばかりでどれもうまくできなかったカスだけど、何度でも奮い立ちたい。
頭を潰し、心で体を動かす。
ニューイが泣くなら、九蔵は泣かないのだ。
『も、もう平気だから、そのっ』
「……………」
「く、九蔵~……っ」
スリスリスリと抱きしめたニューイの胸に額を擦りつけ続けると、ニューイはいつの間にやらいつもの姿に戻っていた。
顔を上げてみれば、いつものニューイが頬を桃色に染めて眉を下げ、情けない表情でこちらを見つめて説明を求めている。
九蔵はフイ、と目を逸らした。
そんな顔で見ないでほしい。こっちだってかなり恥ずかしいのだ。
普段はあまり自分から抱き着くことなんてないのだが、声が出せないのでこうでもしないとニューイの背負うものを奪ってやれなかった。
逸らした目をもう一度上げて、名残惜しいニューイの体から離れる。それからスマホに文字を打つ。
『お前のおかげで、目が覚めた』
「私の? 私はなにもしていないしなにもできず、ちょっと九蔵から目を離した隙にみすみすドゥレドにしてやられたポンコツダメっ子悪魔だが……」
おっと、こちらはこちらで自信喪失中だったのか。
こう見えてニューイは、自分がポンコツだという千年越えの思い込みにより一度始まった自己反省会がなかなか止まらない系悪魔で、一度弱ると思考がネガティブである。
わかっていても理解できない。
守る代わりに自由にさせているのだから守れなかったら自分のせいだ? ちょっと意味がわからないニューイ論だ。
しょんぼりと肩を丸めて自己嫌悪するニューイに、九蔵はプルプルと首を横に振ってちまちま文字を打った。
『お前が泣いたから目が覚めた』
「へっ?」
『俺、やることいっぱいで混乱してたんだけど……よく考えれば、ニューイが泣いて謝ることに比べたら他全部どってことないかなって気づいたんだ』
「ほ、他全部より私の涙がかい?」
その通り。ニューイは意味がわからないとばかりに目を見開いて九蔵を見つめるが、九蔵は撤回する気なんてない。
これが真理で九蔵の愛し方なのだ。
「私が泣くことなんていつものことである。九蔵の舌と声より大事な涙を流した記憶は千年遡ってもないぞ? おかげで九蔵はアルバイトも行けず、ずいぶん不自由することだろう……」
『どってことない。バイトは休みを貰ったんだから思いっきり休む。迷惑だろうとか考えません。貯金あるから平気。どかっと休んで、やることメキメキやって整える』
「整える」
反芻するニューイにコクリと頷く。
できることを一つずつ確実に熟してカス人間から普通の人間に返り咲くとすると、まず一番に熟すべきことは〝ニューイを泣かせないこと〟だ。
言い換えると〝ニューイを笑わせること〟と言える。
九蔵の惚れた愛しいニューイの笑顔。
ニューイを笑わせて行動や心を見つめなおしてから、次に手を出せばいい。
迷ったら愛せ。
バイ、個々残 九蔵。名言だろう。
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