悪魔様は人間生活がヘタすぎる

木樫

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第七話 男たちのヒ・ミ・ツ

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『く、九蔵……意見交換会……意見交換会を申し込みたい……!』


 わなわなと震えてベッドをポンと力なく叩くニューイに、九蔵はベッドへあがり正座をした。その正面で、大きな体を縮こまらせた悪魔が正座をする。

 頭蓋骨のヒビが稲妻のようだ。
 もしもの話でどれだけショックを受けているのやら。

 やや気の毒に思った。
 なにも泣くことはなかろうに。


『ヒン……ヒン……』

「あのな、もしも話だぜ?」

『ヒィン……わかっているがあんまりだ……わた、私を殺さないでおくれ……!』

「だってお前、恋人への最重要事項セックスじゃねーか。スケベ」

『スケベ!?』


 九蔵に睨まれ、ニューイはカロンッ! と頭蓋骨を飛び跳ねさせて身構えた。

 九蔵は腕を組む。

 強気も強気。最強の九蔵だ。
 昨夜の暴挙で地道なトレーニングも棒にふり、全てゲロった上でハチャメチャに抱かれた九蔵に、守るものはない。


「この際だから、ハッキリ言います」


 フン、と男らしく厳しめた顔を堂々と見せつけ、震える頭蓋骨を見つめる。


「スキンシップに重き置きすぎじゃね?」

『ぐはっ』

「理由ナイショでお触り避けた俺も酷いけど、頑なになんでなんでって触りたがられるとヤリたいだけに聞こえてお前も酷い」

『ぎゃふんっ』

「てか夜中に出歩く理由はなんですか」

『!? ななななぜそれをっ』

「当方二人寝に慣れておりましてね」

『ひえ……』


 言葉を失うニューイ。
 二人寝に慣れると、夜中の起床率が上がってしまうのだ。


『く、くぞ』

「ニューイ」

『あうっ』

「その昔、俺は嘘つきがキラ、……ダメだって言ったよな?」

『あぅぅ……』

「お前浮気しねーのになんで嘘つくんだよ。セックス重視で言えないような夜遊びしてる彼氏に、お触り禁止を嫌がる権利あると思います?」

『ぅあう……』

「つかあんなに脱がせたがってたくせに、さんざ抱いたら上裸程度じゃ無反応ですか。そうですか。フーン? あっそ。じゃあやっぱ初夏までもう脱ぎませんし、しばらく服の下には触んねーでくださいませ」

『ぴっ!?』

「それが嫌なら説明して」

『ぴぇ……っ』

「言いたくてもニューイにはどうしようもない事情があるならいい。まぁ、それでも今日はもう口聞かねーけど」

『え、ぇうあっ、あっ』

「そうじゃねーなら、今すぐ全部説明してください。言わないと……昨日ゲロってニューイが忘れた俺のアレコレ、死ぬまで教えねーですからね? 一生、ヒミツ」

『あぅぁあ~~~~……っ!?』


 強気な態度を押し通すと、言葉を忘れたニューイはヒビを頭蓋骨全体に広げ、ダバーッ! と滝のように泣き出した。

 久しぶりに九蔵に本気で叱られて、とても耐えられなかったようだ。

 あうあうと鳴きながら泣きつつプルプルと首を横に振るニューイの伸ばした両手は、哀れにカタカタ震えている。

 それと同時に黒い翼から一気にバサァッ! と羽が抜けてシーツに降り注ぐ。

 残った骨組みだけがホラーだ。
 その骨組みすらヒビだらけで、今にも折れてしまいそうである。

 翼がハゲるほどショックを受けて喘ぐニューイを前にした九蔵だが、それでも組んだ腕をニューイに伸ばしたりはしなかった。

 強気な九蔵。慈悲はない。


『あ、あう……っう……っ』

「イヤイヤしても許しません。マジでどんだけセックス好きなんだよ……」

『うがっ、が、我慢する、ごめ、あ、お、怒、一生我慢するから、ヒィン……っ』

「いや! 我慢とかはいいですけど」

『ぅあ……っ』

「まぁ俺も好きですしおすし。嫌ではないです。なので一切しないわけではないです。若干、若干体目的感がつまらんだけで。うん」

『やはりお、怒って……? く、くぞうに怒られると、世界滅亡……ヒンヒン……っ』

「別にこれはあくまでも意見交換会なんで! いいからとっととシャキっとしてください。はい。お話しましょう」

『でも、れ、レスは別れの秒読みだと……っヒン……九蔵は私と別れ』

「いやいや基本はいいから! 基本は! てか初夏になったらいいから! 別に悪いとも言ってねーしな? 思うところがニョキニョキあるだけで、基本はレスじゃねーから!」

『ほ、ほんとうかい?』

「はい。別れるとか一生ノーセックスではないです。わかったら説明しろください」


 強気なのは態度だけだった。

 言いすぎて泣かせてしまったことで嫌われる可能性を考え、結局ちょこちょこフォローを入れる九蔵。

 ニューイは気づいていないが、裏の〝万が一にも破局ルートはナシで平和的解決をッ!〟という下心が見え見えである。

 コラそこ。やっぱり惚れた弱みの致命傷は不治の病じゃねーかとか言うな。

 自覚症状しかないのだ。
 九蔵さんはなにかともうダメである。




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