420 / 462
第九話 スパダリ戦争 〜夏〜
28
しおりを挟む気になるイケメンあんちくしょうとイケメン悪魔ちゃんが自分の預かり知らないところで二人きりでいて、そこに気がつかないわけがない九蔵である。
それも暫定ライバル。
凌馬の出方によっては、陰キャラの九蔵とて死力を尽くして割り込みたい。
そのためには話を聞かねばならないわけだが、盗み聞きしようぜ! なんてモラル的によろしくないことは言えまいて。一応上司だ。……一人ならやったことは内緒にしよう。
九蔵が無言でジットリと三藤を見つめ眼力でそう訴えると、モラルに欠けたおっさんは闇落ち目だとドン引きしながらもピコン! と指を立てる。
「でもほら、お前のいない二人っきりの時の出方とか気になるだろ?」
「…………」
「なぁんで凌馬がニューイにああなのか教えてやろうと思ったけど実際見たほうが早いし、おじさん個人的にゴシップも盗み聞きも大好き」
「…………」
「ってことで共犯かつバレた時は言い訳よろしく! 九蔵きゅん!」
「…………ッス!」
ワクワクと目を輝かせて出歯亀根性を出す三藤に、九蔵はそっと親指を立てた。
よし、負けた。
言いたいことは多々あるがここは目をつぶろうじゃないか。
腕力は皆無だがそれらしい理由をつけて逃げるスキルのレベルは高い自信がある。
(……なんつーか、カントクといると悪い遊びばっか仕込まれる気がすんな……)
「くーにゃん早く早くぅ~」
「くーにゃんではないです」
ニューイが無駄におじさん臭い性知識をつけて帰ってくるわけだ、と納得しつつ、九蔵は三藤に習って聞き耳を立てた。
大人ばかりであまりノイズのない店内。
しかしニューイと凌馬はなにやら熱い話をしているのか、心持ち大きめの声を出しているらしく、問題なく聞き取れる。
「──から好きじゃないんですって!」
「そ、そうかい? だが私は少なくとも普通の人間よりもっとずっとキミが大好きだと思うのだよっ?」
「いやニューイさん九蔵の彼氏ですよねっ? 俺そういうの興味ないんでっ」
「!? 興味を持ってほしいのである!」
「あっはい怒りと悲しみと絶望の三位一体攻撃ですねかしこまりました死にます」
「まぁ待て九蔵くん」
開幕から聞き取りやすく聞き取りたくなかった話を聞いてしまいメンタルゲージを赤く染めた九蔵は、サクッと瞳から生気を消した。
酷い。あんまりだ。
せめて少しずつ殺してほしかった。
「大丈夫大丈夫。たかが最推しこと彼氏がトップアイドルに告ってフラれてる状況により俺の推しメンをそこまでキッパリフラなくてもいんじゃね? っつー怒りといつの間にかアイドルにクラっといっちまったんだな悔しいけどわかるわ、っつー悲しみとあれそれつまり俺このあとフラれるんじゃね? っつー絶望にやられただけだろ?」
「いや割とのオーバーキルで草も生えん」
好きじゃないとか大好きだとか。
九蔵はニューイが大好きであり好きじゃないわけないというのに。
瀕死の部下をまぁまぁと雑に復活させる三藤。そこまで正確に九蔵の気持ちを受け取っていながらアフターケアが雑だ。絶望的!
なんとか持ち直した九蔵は、よろよろと少しだけ二人に視線を向ける。
するとなにやらもどかしげに声を上げているのは凌馬で、ニューイは小難しい顔をしていることに気がついた。
……ふむ? とても告白には見えない。
言葉だけ聞けば三角関係悲恋展開だと思ったもののそうと言えず、九蔵は三藤にむけて首を傾げる。
しかし三藤は謎のお察しフェイスで、あ~あと肩を竦めた。なんなんだ。
そうしてしばらくは察しのいい九蔵でも流石に情報が少なすぎて読めず疑問符を浮かべていたものの、二人の話を聞くにつれ──九蔵の表情がじょじょに死相を帯び始めた。
20
あなたにおすすめの小説
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる