姉の彼女を好きになりました。

榊󠄀ダダ

文字の大きさ
2 / 26
姉の彼女

第2話

しおりを挟む


「ほんと助かるわね。雨、ツーちゃんだと嫌がるしねぇ」
「別に月謝とかはいいってさ」
「あら、そんなわけにはいかないわよ。ちゃんとそうゆうの頼んだら、かなりするんだから」
「夜ごはんご馳走するくらいでいいんじゃない?かすみ一人暮らしだし助かると思うよ。お金なんか出したら逆に申し訳無いって断るかも」
「そうなの?ごはんはもちろん食べてってもらうつもりだったけど……困ったわね」
「いいんだよ、かすみは教員志望で自分の為にもなるからって言ってんだし」


 土曜日の昼下がり、トイレに行って部屋に戻る途中で、リビングからお母さんとツグミの話す声がが聞こえた。

「なに?なんの話?」

 私は自分の知らないところで自分のことを話されてるのが気に障って、二人の会話に入り込んだ。

「あ、雨!ちょうど良かった。あなたにね、家庭教師つけようと思って」
「なにそれ!そんなの私いらない!」
「いるとかいらないじゃないのよ、 必要なの。ずっと言ってるでしょ?もう高二の夏休みなのよ?なのに毎日毎日部屋でマンガばっかり読んで……ツーちゃんに教えてもらうっていうならいいけど」
「ツグミは絶対にやだ!」
「こないだ会ったでしょ?かすみって私の大学の友達。教員希望だから、雨のこと教えたいんだって」
「勝手に私を練習道具にしないでよ!」


 その時、


 ピーンポーン……


 チャイムが鳴った。


 お母さんとツグミは抵抗する私を置き去りにして、そそくさとリビングを出て玄関へ向かった。私は終わっていない話の行場を無くし、そのままリビングに残ってしまった。


「いらっしゃーい!」
「かすみ、早かったね」 
「あ、お母さんこんにちは!お邪魔します!ツグちゃん、予定より早くてごめんね。あんまり暑いから駅からバスで来ちゃったの」
「あらー!大変だったわね!ほらほら上がって!上がって!」

 パタパタとリビングに三人分のスリッパの音が近づいてくる。部屋に戻るタイミングを逃した私の前に、お母さんとツグミに続きこないだの失礼なあの人が現れた。

「あ、雨ちゃん!こんにちは!今日からよろしくね!」
「なんで私のことなのに私に話もなく突然今日からなの?!」

 私は挨拶も返さず、その人の存在を無視するように言った。

「別に家庭教師が今日からってわけじゃないって。今日は顔合わせみたいなもんだよ」 

 つくづく勝手な母親とツグミにはもう何も言わず、私はリビングから出て部屋へと戻った。ベッドに座って一番好きなマンガを手に取ったけど、病的なほどイライラが止まらず内容が全く入ってこない。


 コンコン……


 しばらくすると、部屋をノックする音がした。


 嫌な予感がした。
 

 ツグミやお母さんはそんな丁寧な訪問なんてしない。


「雨ちゃん?ちょっといいかな……?」


 やっぱりあの人だ。


 嫌だ。話したくない。


 どうせお母さんやツグミの魂胆で、他人に説得されたら私が断りづらいと思ってこの人をよこしたんだ。私がなんの反応も見せないでいると、その人はそのままで話し始めた。

「あのね……雨ちゃん、私も雨ちゃんの言う通りだと思う。ごめんね、この話は無かったことにしてもらうから……」

 意外な言葉をかけられ、私は少し動揺した。

「もう家庭教師の話はしないから、だから、少しだけ話せないかな……?」
 
 話すことなんか何もないし面倒だと思ったけど、私は起き上がってそっと扉を開けた。
 


「雨ちゃんてツグちゃんと全然似てないよね」
「え……」

 私と並んでベッドにそっと腰掛けると、その人はまた意外な言葉を口にした。

「初めて会った時は本当に似てるって思って、まるでツグちゃんの分身みたいだって思ったんだけど、それは本当に外見だけだね。似てないって言うより、姉妹と思えないくらい違うかも」
「そんなこと言われたの……初めてです……」
「そうなの?こんなこと言ったらツグちゃんに怒られちゃうけど、ツグちゃんてほら、ありのままって感じじゃない?細かいことは気にしないってゆうか。それはそれで私は好きなんだけど、雨ちゃんはとっても繊細なんだなって。あっ、全然知らないくせに勝手に決めつけたら失礼だよね!ごめんね?」
「……あの、家庭教師の話は本当に無しでいいんですか?」
「うん、別に説得の為の口実じゃないよ?私は本当に、雨ちゃんの気が進まないならやるべきじゃないって思う。実は今回の話ってね、雨ちゃんに家庭教師つけるかもって話をたまたまツグちゃんから聞いて、それなら是非!って私からお願いしたのがきっかけだったんだけど……」
「そうだったんですか。でもなんで?」 
「教師目指してるからっていうのはもちろんあったんだけど、前から雨ちゃんと仲良くなりたいなぁって勝手に思ってたってゆうのが一番の理由かな」


 その人は少し照れくさそうな笑みを浮かべてそう言った。その顔を見てたらなんだかくすぐったい気持ちになって、私は姿勢を正した。

「だから、こうやってお話出来たら私はそれで。家庭教師つけるかどうかっていうのは、雨ちゃんの意思を何より優先するべきだと思うし」
「………」
「だから、家庭教師の件はなくなっても、これからはもっと雨ちゃんと話したいな。それはいいかな……?」
「………はい」
「良かったぁ!」

 その人はすごく嬉しそうに笑いながら、聞き分けの良くなった幼児を褒めるように、やさしい手つきで頭を撫でてきた。

「……さっきは失礼な態度してすみませんでした」 

 目は合わせられず、私は下を向いたまま言った

「ううん!こちらこそだよ。今度は一緒に遊ぼうね!ツグちゃんと三人で」

 話がまとまるとその人は私の部屋から出て行った。

「かすみ、ごめん」

 ドアの外で待ち受けてたらしいツグミの声が聞こえた。

「ツグちゃんが謝ることなんてなんにもないよ!私こそ強引にごめんね。でも雨ちゃんと話せてよかった。雨ちゃんて素直でいい子だね!なんかかわいいなぁ……」



 扉越しのに聞こえてきたあの人の言葉に、なぜか胸がきつく締めつけられた。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

さくらと遥香

youmery
恋愛
国民的な人気を誇る女性アイドルグループの4期生として活動する、さくらと遥香(=かっきー)。 さくら視点で描かれる、かっきーとの百合恋愛ストーリーです。 ◆あらすじ さくらと遥香は、同じアイドルグループで活動する同期の2人。 さくらは"さくちゃん"、 遥香は名字にちなんで"かっきー"の愛称でメンバーやファンから愛されている。 同期の中で、加入当時から選抜メンバーに選ばれ続けているのはさくらと遥香だけ。 ときに"4期生のダブルエース"とも呼ばれる2人は、お互いに支え合いながら数々の試練を乗り越えてきた。 同期、仲間、戦友、コンビ。 2人の関係を表すにはどんな言葉がふさわしいか。それは2人にしか分からない。 そんな2人の関係に大きな変化が訪れたのは2022年2月、46時間の生配信番組の最中。 イラストを描くのが得意な遥香は、生配信中にメンバー全員の似顔絵を描き上げる企画に挑戦していた。 配信スタジオの一角を使って、休む間も惜しんで似顔絵を描き続ける遥香。 さくらは、眠そうな顔で頑張る遥香の姿を心配そうに見つめていた。 2日目の配信が終わった夜、さくらが遥香の様子を見に行くと誰もいないスタジオで2人きりに。 遥香の力になりたいさくらは、 「私に出来ることがあればなんでも言ってほしい」 と申し出る。 そこで、遥香から目をつむるように言われて待っていると、さくらは唇に柔らかい感触を感じて… ◆章構成と主な展開 ・46時間TV編[完結] (初キス、告白、両想い) ・付き合い始めた2人編[完結] (交際スタート、グループ内での距離感の変化) ・かっきー1st写真集編[完結] (少し大人なキス、肌と肌の触れ合い) ・お泊まり温泉旅行編[完結] (お風呂、もう少し大人な関係へ) ・かっきー2回目のセンター編[完結] (かっきーの誕生日お祝い) ・飛鳥さん卒コン編[完結] (大好きな先輩に2人の関係を伝える) ・さくら1st写真集編[完結] (お風呂で♡♡) ・Wセンター編[完結] (支え合う2人) ※女の子同士のキスやハグといった百合要素があります。抵抗のない方だけお楽しみください。

名もなき春に解ける雪

天継 理恵
恋愛
春。 新しい制服、新しいクラス、新しい友達。 どこにでもいる普通の女子高生・桜井羽澄は、「クラスにちゃんと馴染むこと」を目指して、入学早々、友達作りに奔走していた。 そんな羽澄が、図書室で出会ったのは—— 輝く黒髪に、セーラー服の長いスカートをひらりと揺らす、まるで絵画から抜け出したような美しい同級生、白雪 汀。 その綺麗すぎる存在感から浮いている白雪は、言葉遣いも距離感も考え方も特異で、羽澄の知っている“普通”とは何もかもが違っていた。 名前を呼ばれたこと。 目を見て、話を聞いてもらえたこと。 偽らないままの自分を、受け入れてくれたこと—— 小さなきっかけのひとつひとつが、羽澄の胸にじわりと積もっていく。 この気持ちは憧れなのか、恋なのか? 迷う羽澄の心は、静かに、けれど確かに、白雪へと傾いていく—— 春の光にゆっくりと芽生えていく、少女たちの恋と、成長の物語。

身体だけの関係です‐三崎早月について‐

みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」 三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。 クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。 中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。 ※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。 12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。 身体だけの関係です 原田巴について https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789 作者ツイッター: twitter/minori_sui

処理中です...