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番外編 鈴木和夫のお話
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しおりを挟むオレがこの奇妙なトリオと仲良くなったのは、今ここにはいない須藤涼という男のお陰である。
須藤は三人の中で一番、話しやすい。
構内のベンチで空を眺めてぼーっとしていたら、急に背中を叩いたのが須藤だった。
その頃オレは原因不明の片頭痛に悩まされていて、太陽の下にいると緩和される事に気が付き、 時間さえあれば外で日光浴をしていた。
身体の血液が温められて体内を循環すると筋肉も解れて片頭痛が和らぐ。
効果はテキメンでそれから快晴が続き、オレの身体は徐々に回復していった。
それからオレは何故か玉様や御門森にも頭や肩を叩かれることがあり、不思議と構内で三人と絡むことが多くなっていった。
良くも悪くもこの三人は目立っており、いつも周りに人がいた。と言っても大半が女で、玉様は完全無視だし、御門森も必要最低限しか構わない。
唯一須藤だけが防波堤の様に女達から二人を守り遠ざけ、オレはそれに便乗して何度か楽しい思いをさせてもらっている。
玉様は女とは仲良くしないけど男とはそれなりに交流を持っていて、オレは玉様が男にしか興味がないと思っていたら、なんと婚約者にベタ惚れなんだと須藤がこっそり教えてくれた。
ストイックな玉様らしいと言えばそうだが、年頃の男だぜ?
隠れて遊べばバレないと何度もコンパに誘っても頑なに首を縦には振らなかった。
そんなこんなで周囲の人間は玉様の婚約者に興味津々だったが、誰も一度も会ったことがなかった。
……いや、何人かいたな。
通山出身の奴の中に何人か婚約者と同級生だったのが、いた。
高校の途中で転校してしまったらしく、どうやら話を繋ぎ合わせるとそれ以降にどうにかなったようだ。
噂によるとそれなりな美人であったらしく、須田の超絶美人の彼女の親友だったらしい。
美女は美女と仲良くなる。
これはオレの理論だ。
だから玉様の婚約者がいる田舎には美女がいるに違いない。
にやけた顔をすれば、ミラー越しに玉様に睨まれる。
全て考えはお見通しのようだ。
オレは慌てて窓の向こうの夜景を眺めるふりをした。
通山市から出発し早三時間以上経過。
外は夕方を通り越し、お月様が輝く。
これまで生きてきた中で一度も経験したことのない真っ暗な山中を走り、もしや置き去りにするつもりかと内心穏やかではなくなってきた頃、ようやく心許ない人家の灯りがぽつぽつ見え始めてオレは 胸を撫で下ろした。
疑ってごめんよ、二人とも。
途中何故か玉様は御門森と運転を代わり、わりと真剣な眼差しで真っ暗闇の景色を遠目に眺めていた。
須藤が言っていた通り本当に絵に描いた様な田舎で、橙の街灯が時たま照らす景色は田んぼ以外何もない。
こんなところに本当に人間が住んでいるのか、狐に化かされているんじゃないかと喉元まで出かかった。
鈴白村に入り数十分すると、馬鹿みたいなスピードで走っていた車が徐々に速度を落とし、寺へ続くような石段の前で停まった。
そこには提灯を持った着物の女の子が胸元で小さく手を振っていた。
着物を着ると女の子は三割増しで可愛く見えることを差し引いても、絶対に可愛い。
オレは誰よりも早く車を降りて彼女に駆け寄った。
オレの勢いに後ずさりした彼女は目を見開いて提灯を持っていない方の左手を前に出す。
するとどうしたことかオレの身体はそこから動けなくなった。
近寄らないでという彼女の思いにオレの身体が無意識に従ったのか。
そうだ。オレは彼女の気持ちに大人しく従ってしまうほど惹かれてしまったんだ。
見れば見るほどドストライク。
ちょっと釣目のキツイ印象だけど、無造作に結い上げた髪が小顔を強調する。
肌も田舎暮らしとは思えないほど荒れてなく、白い。
いわゆるナチュラルメイクだが、全然ノーメイクでもイケるレベルだ。
自己紹介をしようにもときめくオレの感情に口が付いてこなく言葉が出てこない。
すると背後から玉様に頭を掴まれ後ろへ引き倒された。
オレは固まったまま倒れ込んだけど御門森が受け止めてくれた。
持つべきものは口が悪くても優しい友達だと思った。
御門森に肩を叩かれるとオレはやっと自分の足で地に立った。
いざ自己紹介!と意気込めば、彼女は玉様の腕の中で見つめ合って微笑んでいた。
え、マジか。 彼女が噂の婚約者か。
見たことも無い玉様の笑顔にオレは失礼ながら鳥肌が立った。
綺麗な男だとは思っていたが感情が薄くどこか造り物のようだった奴を始めて人間だと認識した。
二人並べば出来過ぎたカップルで粗探しをしたくなったが、この鈴木和夫。
人の物には手を出しません!
貶めることも致しません!
何故なら、この彼女から拡がるであろう美女の友達の輪に希望を持っているから!
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