錬金術師な転生エルフの自由気ままな冒険譚!

旅わんこ

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第六章

エルフの姫と収穫祭 

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 二日後。
 ツェッペリン三世以下王府関係者、レイやキヨトら錬金術商工会の一同、縁ができた貴族たちに見送られ、アキラとエリックたちはフリードへの帰還の途に就いた。グリュネルデ族のエルフたちも一般客室に乗ってフリードを目指すが、レイ・ルルスに錬金術師としての素質を見込まれたひとりの少年エルフは彼女の弟子となり預けられた。
「うぅ~、二日酔いがまだ続くとかこれ三日酔い。わたし、まさかここまでお酒に弱いなんて」
「はっはっは。アキラは決して飲んだくれにはならないな。飲んだくれは面倒だぞ。貴族社会では酔った勢いに任せて横暴を働く輩の始末が日常茶飯事で、吾輩も何度頭を抱えたことか」
「あははは……。でも、今考えると何か変ですよね。褒賞だとか叙爵とか、そういうのって玉座の間でちゃんとした式典としてやるべきものだとばっかり」
「普段はそうだが、ちょうど収穫祭と重なったこと、またその席で褒賞することで多くの貴族や商人にアキラの存在を知らしめることが陛下の目的だったのだろう。それに、陛下はその立場からは考えられないくらいフランクなお人だ。陛下の遊び心もあったに違いないだろうな」
「それは感謝しなきゃですね。おかげでおいしい料理をたくさん味わえましたから!」
「ああ。アキラも満足したし、惨撃の二つ名を持つ錬金術師を相手にすればどれだけの仕打ちが待っているかも、浅はかな考えの貴族に対しての示しもついただろう」
「それが狙いかっ!」
「それも狙い、だな」
 長い事列車に揺られてフリードのリヒトホーフェン中央駅に到着。アキラはクラリスに惜しまれつつエリックたちに別れを告げ、エルフの人数分の布団を買ってアパート・フリーデリーケに向かい、ティアナら住民に事情を話してエルフたちを当分アパートの一階で雑魚寝してもらうことになった。
 サンクティス工務店のカルパッチョ・デ・サンクティスにも事情を話し、十二月の最初の週から惑わしの森の開拓に着手。王国とリヒトホーフェン家から支援金を調達できたので、本職の大工や土木事業者に協力を仰ぎ、エルフやフリーデリーケの住民たちの力添えもあって十二月の中旬には『フリーデリーケ二号棟ツヴァイ』が完成し、多少雪に降られたがなんとか一冬を超すことができるようになった。
 怒涛の半月余りだったが、エルフの新しい門出、フリーデリーケ・ツヴァイの完成、アキラの叙爵を祝うべく多くの人が集まり、雪で雪像や雪室を作ったり雪合戦をしたりしながら朝から晩まで飲み明かす。その中にはエルフの生活に必要なアイテムを提供した雑貨屋のクリシュナもいた。
「いやあ、今日まで本当にお疲れさま! それにしてもアキラが貴族でエルフ一族のトップかぁ。これからはカワカミ卿、あるいは村長って呼ばなきゃいけないのかなぁ?」
「そんな、今まで通りでいいよ。わたしたち親友じゃん?」
「いいの? じゃあこれからも親友でよろしく。それにしても、本当にアキラと同じ髪色をしてるよね、皆さん」
「うん。わたしがアストリッドじゃないのが申し訳ないけど、それでも過去のアストリッドがあの人たちの慕う姫なら、その思いも引き継いでいこうと思うんだ。わたしなりにね」
「立派だよ。でも無理はしないで。アキラはアキラなんだから」
「うん。……それじゃあより一層頑張らないとね! 冬を越したらしなきゃいけないこと、今からまとめるぞー!」

 そして、冬の間も作物を育て、動物を狩り、保存食を消費しつつ冬を越し、巣ごもりの間も楽しめる娯楽を作って遊んでは勉強にいそしむ、そんな日々が続く。春になって雪が解けたら、森を開拓してエルフたちの村を作らなければならない。
 そしてその日がやってきた。
 四月上旬、アキラは、マキシをはじめとするエルフの中でも狩りに秀でた若者たちを引き連れてハンターギルドに赴き、エルフたちのハンターライセンスの申し込みをしようとするのだが。
「どけ、俺様が先だ!」
 ライセンス登録をしていたマキシの肩をつかんで押しのけた、と言うよりは殴打に近い手つきで薙ぎ払った筋肉の鎧のような大男がいた。
「でっ!?」
「だっ、大丈夫ですかマキシさん!? ……ちょっとあなた、何するんですか!?」
「あ?」
 筋肉鎧の男はアキラを見やる。目つきはとても凶悪で、目だけで人を殺しそうだ。
 別のハンターがアキラに言う。
「やめておけ、アキラちゃん。そいつは最近入った、傭兵組合の元・組合長だ。強いなんてもんじゃない」
「そう言うことだ。つまりこの場で俺がギルドマスターの次に偉いんだよ。だから雑魚はすっこんどけ。依頼達成の報告だ、依頼主のサインの確認をしろ」
 害獣・魔獣討伐達成の証拠として、その対象の体の一部を切り落として持ち帰らなくても依頼受注書に依頼主のサインがあればそれで達成が確認される。筋肉鎧の男は、受付の女性にサイン入りの受注書を提出するのだが。
「それはないでしょう! あなたが誰であろうと順番は守るべきです! もとは偉かった人なのにそんなことも分からないんですか!?」
「あ? なんだこの小娘は。この俺様に、『ボルトン町傭兵組合』前会長ゴルト・カースに盾突こうってのか? あ!?」
 筋肉鎧の男ゴルトはアキラの襟首をつかみ上げようとする。だがアキラは彼の右手を左腕でつかんで腕力と握力(アガートラームの出力)でひねり上げ、右手でゴルトの前髪をつかんだと思ったら自身を旋回させて立体的な遠心力のもとにギルドホールの床に深く沈めた。
「が……!?」
「はぁ? 小娘ぇ? 誰に向かって口きいてんのかなぁ、このおっさんは?」
 するとアキラは、くぼんだ床から頭を上げ額から血を流しているゴルトに、トライアームを抜きながら言う。受付の女性は「それはあんまりです、カワカミ様!」と叫ぶが、アキラはその切っ先をゴルトではなく頭上に向けて、黒光りする剣身の側面をゴルトに向けて、この上なく残忍な目つきと気迫を帯びた声で言った。
「ひっ! ひひひっ、人殺しの、目だと……ッ!?」
「見なよ」
 アキラはトライアームを、ゴルトにとどめを刺すためではなくあるものを見せるために抜いたのだ。
「そ、それは……! その紋章は!?」
「そう。これはツェッペリン王家との加護と、わたしが準男爵の称号を持つ貴族であるということの証。ゴルト・カースよ頭が高い。このアキラ・カワカミ準男爵の前にひざまずけ」
 剣身に刻まれていたのは、ツェッペリン王家の紋章とアキラのために作られた家紋。アキラの家紋は、錬金術の紋章である『フラメルの杖』があしらわれた盾、直立したトライアーム、それらを囲う二つの環で描かれていた。環はおそらくファルラートの車輪から取られているのだろう、すべての意匠はアキラの功績や立場にちなむものに由来する。
「そ、それは! 存じ上げなかったとはいえ失礼いたしました、カワカミ卿!」
「なら、わたしと親しい者に手を上げ横暴横着を働くことを金輪際許さない。そしてわたしの同胞に手を挙げたことをここで詫びて列に並びなおせ」
「た、大変、失礼……」
「『マキシに』詫びろ!」
「はいぃぃ! ハンター候補・マキシ様、大変失礼いたしましたあああああああああ!」
 そう言うとゴルトは跪いて深々と頭を下げて謝罪し、血まみれのままマキシの列の最後尾にすごすごと並びなおした(止血すら許されない)。アキラはマキシにハンター登録の続きをするように言うが、途端にギルドのホールは騒然となった。
「マジか! アキラちゃん、貴族になったってマジか!?」
「すごい迫力だったわよ! よくあの『横暴ゴルト』を退けてくれたわ!」
「こ、これからはカワカミ卿って呼ばなきゃいけないのか。遠い人になっちゃったなあ」
「だがこれまでの功績を考えれば、国王に認められるのも納得だ」
 ゴルトは「マジで誰なんだあいつ」と唖然となるが、アキラを知る全ての人はアキラの叙爵を喜び、中には恭しく頭を下げる者もいた。
「いやあ、好きなことや人助けをやってたらこうなっただけで、別に何も特別なことはしてないですよ。それに領地だって森ひとつだけですし、リヒトホーフェン卿には遠く及びません。それよりは、これからもフリードの町の先輩方としていろいろ教えてくださればうれしいですから!」

 その日、アキラがゴルトを沈めた大きなくぼみは『惨撃の爪痕』として残された。それは「礼を尽くすか無礼を働くか、その行いは己に帰ってくるものだ」という教訓として今後語り継がれることとなる。
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