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11店目「異世界のお洒落なバー 前編」
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モルジーが向かった先は、さきほどのお店から路地に入ったところだ。
メイン通りに比べて薄暗く、人通りも少ない。
お店もまばらに存在する程度で、お店よりも住居の割合が多い。
ただ、治安は悪くは無さそうだ。
浮浪者がいる様子もなく、ゴミもなく道も舗装されている。
「ここは隠れ家スポットなんですよ」
キョロキョロしている僕に気づいたモルジーは、後ろを振り返って笑って見せた。
確かにお店や人通り自体は少ないが、落ち着いた感じがする。
お店も高級感があり、一見客は入りにくそうである。
「ミツルさん、着きましたよ」
モルジーが指さした店は、お店というより住居だ。
看板もサインボードなどお店らしいものは何もない。
入り口の木製のドアの横にランタンが灯っているだけである。
「さぁ、参りましょう」
モルジーは木製のドアをギギィ……と音を立てて開け中へと入る。
僕も後ろからついて行った。
お店の中は薄暗く、ランタンと燭台の灯りだけがお店を照らしている。
カウンター席のみというこじんまりとしたお店だ。
壁面や壁はレンガの質感そのままで、塗装すらしていない。
店員はマスターらしき人が1人。
ダークブラウンの無造作に長い髪と、顔全体を覆うような長い髭が印象的だ。
目つきは鋭く、いかにも頑固そうな表情。
小柄ではあるが、タンクトップから見える逞しい胸筋は歴戦の戦士を彷彿させる。
「彼はドワーフなんですよ」
モルジーは僕にそっと耳打ちする。
ドワーフは、この世界に住む種族で、ヒューマン種よりも背丈が低いことが多い。
屈強な肉体と高度な鍛冶技術をもつとされている。
「よぉモルジーさん。随分久しぶりだな。変な奴を連れているが獣人族かなんかか?」
「ヘラルド、しばらくお店に来れなくてすまない。彼はヒューマンですよ、どうやら呪いにかかってしまわれたようで」
ヘラルドと呼ばれるドワーフは僕をちらりと見る。
「そうかい、そいつは災難だったな。ほら、そこに座んな」
ヘラルドと呼ばれる店主は、僕らを目の前のカウンターに座らせた。
カウンターには等間隔に燭台が置かれ、ヘラルドと陳列されている酒瓶を幻想的に照らしている。
どうやら酒瓶にはガラスが用いられているらしい。
もちろん、日本のような薄く透明なガラスではない。
瓶は分厚く、濁ったような色で外からは瓶の中身が確認しづらい。
「モルジーさん、いつものやつでいいか?お前さんも一緒でいいな?」
「はい、お願いします。ミツルさんもイケる口でしたよね?」
敢えて聞くからには強いお酒なんだろう。
どんなお酒かはわからないが、僕はコクンと頷いた。
マスターは片手でカウンターの一番端のボトルを持ち上げると、ガラスで出来たキャップをポンッと引き抜いた。
その瞬間、木樽の匂いやドライフルーツのような匂いが漂ってきた。
かなり熟成されたお酒かもしれない。
僕はウイスキーにも似たその香りで、お酒の味わいを想像する。
カウンターに2つのグラスを用意したヘラルドは、高い位置からゆっくりとお酒を注ぐ。
一切のしぶきを上げず、吸い込まれるように注がれるレンガ色の液体。
まるでスロー再生したかのように、柔らかい香りを発しながらゆっくりゆっくりとグラスが満ちていく。
グラスにお酒が注ぎ終わると、ヘラルドは別の瓶を開けグラスに回し入れる。
するとグラスいっぱいのレンガ色のキャンバスに、真っ白な渦が描き足されたのだ。
がっちりとした体格のドワーフの繊細な技術。
ドワーフの卓越した鍛冶の技術が、ここでも見事に活かされているのだ。
「ミツルさん、グラスを掲げましょう」
モルジーと僕はお互いのグラスを持ち、ドワーフの店主に向かって掲げる。
「ギルスラーク(幸運を我らに)」
僕はさっそくグラスを口につけた。
ドライフルーツと、木樽の香りが僕の鼻を駆け巡る。
うわっ、きつい。
アルコールの強さが、真っ先に舌を襲う。
おそらく40度以上はあるのだろう。
勢いよく飲んでいたら、むせていたに違いない。
飲み口は重厚で乾燥させたイチジクのような味わいを感じる。
その後に辛みと苦みのある黒コショウのような後味が続く。
最後に、ミルクの甘味が口の中を癒してくれる。おそらく最後に入れたのはミルクだろう。
ミルクが加わることで、重厚なお酒が柔らかく飲める。
「どうだ、俺の国の酒は?」
ヘラルドが僕の顔を覗き込む。
「いやぁ、旨い。こんな酒が飲めるとは思わなかった」
僕が率直な感想を述べると、強面のヘラルドの顔が僅かに緩む。
「ガッハッハッ、そうだろう。お前気に入ったぜ」
ヘラルドの笑い声が静かな部屋中に響き渡る。
「ゆっくり飲んでいってくんな」
ヘラルドはもう一組のお客さんに呼ばれて、注文を聞きに向かった。
「ここはいい店でしょう?」
モルジーさんは僕に話す。
「ああ、マスターの風貌にはびっくりしたが、居心地のいい店だな」
「そうでしょう。実はヘラルドも元冒険者だったんですよ」
「へぇーどおりで」
時折目つきが鋭くなるのは、冒険者時代の名残だろうか。
きっと冒険者としても気持ちのいい男だったに違いない。
僕は、グイッとお酒を流し込む。
味わいはウイスキーにも似ているが、より個性が強く出ている気がする。
「ミツルさん、少し聞きたいことがあるのですが?」
急に真剣な表情になったモルジーは、僕の目を正面からしっかりとみつめる。
「ミツルさん、あなたはこの世界の人じゃないでしょ?」
メイン通りに比べて薄暗く、人通りも少ない。
お店もまばらに存在する程度で、お店よりも住居の割合が多い。
ただ、治安は悪くは無さそうだ。
浮浪者がいる様子もなく、ゴミもなく道も舗装されている。
「ここは隠れ家スポットなんですよ」
キョロキョロしている僕に気づいたモルジーは、後ろを振り返って笑って見せた。
確かにお店や人通り自体は少ないが、落ち着いた感じがする。
お店も高級感があり、一見客は入りにくそうである。
「ミツルさん、着きましたよ」
モルジーが指さした店は、お店というより住居だ。
看板もサインボードなどお店らしいものは何もない。
入り口の木製のドアの横にランタンが灯っているだけである。
「さぁ、参りましょう」
モルジーは木製のドアをギギィ……と音を立てて開け中へと入る。
僕も後ろからついて行った。
お店の中は薄暗く、ランタンと燭台の灯りだけがお店を照らしている。
カウンター席のみというこじんまりとしたお店だ。
壁面や壁はレンガの質感そのままで、塗装すらしていない。
店員はマスターらしき人が1人。
ダークブラウンの無造作に長い髪と、顔全体を覆うような長い髭が印象的だ。
目つきは鋭く、いかにも頑固そうな表情。
小柄ではあるが、タンクトップから見える逞しい胸筋は歴戦の戦士を彷彿させる。
「彼はドワーフなんですよ」
モルジーは僕にそっと耳打ちする。
ドワーフは、この世界に住む種族で、ヒューマン種よりも背丈が低いことが多い。
屈強な肉体と高度な鍛冶技術をもつとされている。
「よぉモルジーさん。随分久しぶりだな。変な奴を連れているが獣人族かなんかか?」
「ヘラルド、しばらくお店に来れなくてすまない。彼はヒューマンですよ、どうやら呪いにかかってしまわれたようで」
ヘラルドと呼ばれるドワーフは僕をちらりと見る。
「そうかい、そいつは災難だったな。ほら、そこに座んな」
ヘラルドと呼ばれる店主は、僕らを目の前のカウンターに座らせた。
カウンターには等間隔に燭台が置かれ、ヘラルドと陳列されている酒瓶を幻想的に照らしている。
どうやら酒瓶にはガラスが用いられているらしい。
もちろん、日本のような薄く透明なガラスではない。
瓶は分厚く、濁ったような色で外からは瓶の中身が確認しづらい。
「モルジーさん、いつものやつでいいか?お前さんも一緒でいいな?」
「はい、お願いします。ミツルさんもイケる口でしたよね?」
敢えて聞くからには強いお酒なんだろう。
どんなお酒かはわからないが、僕はコクンと頷いた。
マスターは片手でカウンターの一番端のボトルを持ち上げると、ガラスで出来たキャップをポンッと引き抜いた。
その瞬間、木樽の匂いやドライフルーツのような匂いが漂ってきた。
かなり熟成されたお酒かもしれない。
僕はウイスキーにも似たその香りで、お酒の味わいを想像する。
カウンターに2つのグラスを用意したヘラルドは、高い位置からゆっくりとお酒を注ぐ。
一切のしぶきを上げず、吸い込まれるように注がれるレンガ色の液体。
まるでスロー再生したかのように、柔らかい香りを発しながらゆっくりゆっくりとグラスが満ちていく。
グラスにお酒が注ぎ終わると、ヘラルドは別の瓶を開けグラスに回し入れる。
するとグラスいっぱいのレンガ色のキャンバスに、真っ白な渦が描き足されたのだ。
がっちりとした体格のドワーフの繊細な技術。
ドワーフの卓越した鍛冶の技術が、ここでも見事に活かされているのだ。
「ミツルさん、グラスを掲げましょう」
モルジーと僕はお互いのグラスを持ち、ドワーフの店主に向かって掲げる。
「ギルスラーク(幸運を我らに)」
僕はさっそくグラスを口につけた。
ドライフルーツと、木樽の香りが僕の鼻を駆け巡る。
うわっ、きつい。
アルコールの強さが、真っ先に舌を襲う。
おそらく40度以上はあるのだろう。
勢いよく飲んでいたら、むせていたに違いない。
飲み口は重厚で乾燥させたイチジクのような味わいを感じる。
その後に辛みと苦みのある黒コショウのような後味が続く。
最後に、ミルクの甘味が口の中を癒してくれる。おそらく最後に入れたのはミルクだろう。
ミルクが加わることで、重厚なお酒が柔らかく飲める。
「どうだ、俺の国の酒は?」
ヘラルドが僕の顔を覗き込む。
「いやぁ、旨い。こんな酒が飲めるとは思わなかった」
僕が率直な感想を述べると、強面のヘラルドの顔が僅かに緩む。
「ガッハッハッ、そうだろう。お前気に入ったぜ」
ヘラルドの笑い声が静かな部屋中に響き渡る。
「ゆっくり飲んでいってくんな」
ヘラルドはもう一組のお客さんに呼ばれて、注文を聞きに向かった。
「ここはいい店でしょう?」
モルジーさんは僕に話す。
「ああ、マスターの風貌にはびっくりしたが、居心地のいい店だな」
「そうでしょう。実はヘラルドも元冒険者だったんですよ」
「へぇーどおりで」
時折目つきが鋭くなるのは、冒険者時代の名残だろうか。
きっと冒険者としても気持ちのいい男だったに違いない。
僕は、グイッとお酒を流し込む。
味わいはウイスキーにも似ているが、より個性が強く出ている気がする。
「ミツルさん、少し聞きたいことがあるのですが?」
急に真剣な表情になったモルジーは、僕の目を正面からしっかりとみつめる。
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