異世界食レポ!~現地の料理店を冒険しながら紹介~

めしめし

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20店目「珍味!コカトリスの軟骨 後編」

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カシムが連れてきてくれた店は、木造の小さな店だ。
どこか東洋風の趣のあるこの店は、日本人の僕には馴染みやすい。
席はカウンター席のみの5席。
僕らの他には客はいないようだ。

「マスター、いつものあれを頼む」
「あいよ」

マスターは狼系の獣人族のようだ。
僕の数倍はあろう太い腕は、一面毛に覆われている。

「カシム、この店にはよく来るのか?」
「ああ、俺のお気に入りの店でね。あまり人族が食べない物を出してくれるんだ。ミツルは食べれないものは無いだろ?」

人族が食べないもの?
一体何だろう?

「あいよ、出来たぜ」

僕らのカウンターに置かれたのは、串にささった肉のような物が二本ずつ二種類。
見た目は特に変わったことも無い串焼きの様だ。

「食ってみろ」

カシムは僕に先に食べるように勧める。
僕は言われるがまま、串を取った。
臭いも悪くない。香辛料にクミンのようなものを使っているようだ。

パクッ。
噛みしめると口の中に脂の甘味が広がる。
見た目よりも濃厚な味付けだが、香辛料のおかげでしつこくはない。
弾力のある肉は噛めば噛むほど味わいが広がる。

これはホルモンだ。
おそらく何かの動物の小腸の部分だろう。
こってりとした脂と濃厚な下味、香辛料の味わいが合わさって口の中が旨味の大洪水だ。

「これは臓物なのか?」

僕がそう言うと、カシムは驚いた顔を見せる。

「そうだ、ミツル食べたことがあるのか?人間は肉だけしか食べないと思っていたが?」
「ああ、僕の好物だ。確かに食べれない人も多いけど、好きな人には最高の部位だ」
「そうか!ここの世界の人族は食べる奴がいなくてね、狩りをしても内臓はそのまま捨てているんだ」
「もったいない。この部分が旨いのに」

僕がそう言うとカシムは嬉しそうな表情を見せる。

「ミツルとは合いそうだ。マスター、どんどん出してくれ。エールもな」

カシムはお替りのエールを注文する。

「次はこいつだ」

次にマスターが出した料理は、どうやら鳥の軟骨らしい。
ただ、鶏の軟骨よりも何倍も大きい。

「これはコカトリスの軟骨だ、偶然手に入ってね」

マスターが料理の素材の説明をする。
コカトリスは、雄鶏と蛇を掛け合わせたような魔獣で、ドラゴンの翼をも持っているという。
戦闘力が高く、相手を石化させる魔眼も持っており、驚異度はその他の魔獣と比べても圧倒的に高い。

軟骨にはうっすらと衣をつけて揚げてあるようで、小麦色に焦げ目もついている。
香味野菜をベースにしたソースの香りが、僕の食欲をさらに刺激する。

口に入れると、サクッという衣の食感とコリコリとした軟骨の食感が気持ちいい。
軟骨自体は淡白な味わいだが、香味野菜のあっさりとしたソースが味の広がりを感じさせる。

もちろん、エールに見事にマリアージュする。
軟骨をかじった後に、エールをグイッと一飲みする。
すばらしいまでの一体感で、一瞬で満足感が満たされる。

マスターは次々とホルモン料理を出してくれた。

オークの心臓・大腸の串焼き、レッサーサーペントの心臓のステーキ、ダンジョンバイソンの臓物煮込みなどこの店以外では食べられない料理が並ぶ。

その中でも特に僕が気に入ったのが、ダンジョンバイソンの胃袋のカリカリ炒めだ。
ぼくらの世界でいう「ミノ」に十分下味をつけ、焦げ目が付くまでしっかり焼いた料理だ。

脂のしっかり乗ったミノは旨味が凝縮され、噛めば噛むほど口中に甘味が広がる。
コリコリした食感も面白い。
これならいつまででも食べられてしまいそうだ。

グイッとエールを流し込む!
ぷはーっ、これが旨い!
ホルモンにはエールやビールがつきものだ。

隣を見るとカシムも旨そうにミノを食べている。
こんな美味しいものが食べられないなんて、この世界の人族は大きな損をしているだろう。

「ミツル、明日から訓練の場所を移そう」

カシムはエールをぐいっと傾けながら話す。

「俺相手に剣の腕を磨いても、所詮対人向けの練習だ。魔獣を倒すなら魔獣と戦うのが一番だ」
「ああ、僕もそれを感じていた。今のまま訓練していてもペリュトンには通用しないだろう」
「その通りだ。明日から魔獣討伐に向かう。それで剣は決まったのか?」

今日はカシムと様々な剣を使っての訓練を行った。
剣に慣れるという意味もあったが、自分に合う剣のタイプを試したという意味合いが強い。

「僕には片刃剣(刀)が合っていると思う。一番手に馴染んだようだ」
「そうだな、俺もそう思う。明日は片刃剣を持っていけ」
「ああ、世話になる」

僕がそう言うと、カシムはこくんと頷く。

「堅い話はこれで終わりだ。せっかく旨い店に来ているんだ。今日はたっぷり飲もうじゃないか」

カシムは新たにエールを注文する。
僕もエールを飲み干し、次のエールを注文するのだった。
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