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出逢い、夏フェス

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「うーん、なんか、収まらなくなっちゃったね」



 しのが苦笑している横で、ナンバー2の小椋麻耶(おぐらまや)は騒ぐ男達に手を振っている。



「まやり――ん!」

「おぐまや――っ!」

「結婚してくれえええ――っ」



 麻耶は首を傾げながら、恥ずかしがるようにしのの背中に隠れた。その仕草に男達の保護欲はマックスになり、ひときわ大きな声援が飛んだ。



「あーあ、相変わらずの人気です事」

「来月の総選挙でトップも夢じゃないかもね――?まやりん?」



 後ろから木崎夏(きさき なつ)と阿藤和希(あとう かずき)がステップを踏みながらやって来て、しのと麻耶に抱き着いた。



「なっちーん!」

「かず――!」



 客達は大喜びで声を上げる。







「みーかしの――!とーべ――!」

「みーかしの!ダーイーブ!」



 しのを煽る声は大きくなる一方だった。

 しのの耳元で麻耶は小さな唇を寄せ、可愛らしい笑顔でサラリと言う。



「これはもう、飛ばなくちゃライヴ的には盛り上がらないんじゃない?」

「あら?いつも強気なみかしのがそんな顔するんだ?」

「だーいじょうぶ!ファンが受け止めてくれるって!」



 夏と和希までが麻耶に同調する。

 しのは僅かに眉をしかめるが、周囲の空気が今や一触即発の危険を孕んでいるのを彼女は感じ取っていた。

 ここで乗らなくては、客のフラストレーションが暴走して事故に繋がるかもしれない――

 そう考えたしのは、腕に絡み付く三人を軽く睨み、言い放った。




「私を舐めないで。誰だと思ってるの?――私はオリオン21のリーダー、美佳原しのよ!」








 堺は、そう叫んだしのをファインダーに収めシャッターを切ろうとしたが、その瞬間に彼女の身体はステージから弧を描き客席へと翔んでいた。

 高い飛び込み台からジャンプするアスリートのフォームの様に華麗に飛んだ彼女を受け止めるかと思われた男達は何故か一斉に後ろへと引く。

 ダイバーを受け止める者が居なければ、即ちダイバーはそのまま地面へ落下する。

 周囲から悲鳴が起こり、スタッフ達が慌てて走る中、堺は無意識にカメラを放り出し飛び出していた――
















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