上 下
11 / 111
初チュー!なのに?

しおりを挟む


「げほっ……うぐほおおおっ……ぐえっ……」



ゆうみは噎せながら手にしたメモを小さく折り畳み、口の中へと突っ込んだ。




(うぎゃああ……やった……)


顎の上に紙がぴったり貼りついてしまい苦しむ十五歳の自分を見て、ゆうみは掌で顔を覆う。



忘れもしない十五歳の夜。
十五の夜だ。

決して尾崎豊ではない。


ゆうみは一大決心をし、かねてから準備を進めていた計画を実行に移したのだ。




それは……



『玉子 召喚計画』



……玉子、ではなく、
王子、としたつもりだったのだが……


当時オカルトやまじないに凝っていたゆうみは、

"マイ ブラックボックス"
と名付けた、秘密のノートに様々な呪術の方法や、自分の妄想を書き綴っていた。



『玉子召喚計画』
は、その中で一番力を入れて構想を練ったものだった。








「たかだか高校受験でびびるなっ!テメェは何をぬるい事を言ってんだ!バーカバーカ」と全国の受験生に罵倒されたら、ゆうみはグゥの音も出せないが、ゆうみにとっては一大事なのだからそれは仕方がないのだ。


"世の中の人達はもっと大変な思いをしている、もっと頑張っているんだから貴方も気合いを入れなさい"
等と云われても、自分には自分の可能な事しかなし得ないし、それ以上の事は出来ない。



特に勉強が好きでも得意でもなく、他に特技がある訳でもない自分は、高校に行って……
適当な短大に行って……相変わらずラノベやアニメに浸りきりのキャンパスライフを送り……
彼氏が出来ないまま過ごして……
そんな男慣れをしていない自分は……
数合わせで行った合コンで、ろくでもない男どもに酔わされて輪姦されて……恥ずかしい写真を撮られて脅されて金をむしり取られて……



ゆうみは、目標が持てない自分に不安を抱き、そして芋づる式に膨らむ破滅の未来を頭に描いた。








(そんなの、いやだあああ――!)


ゆうみは、一か八か、その禁断の呪術を試してみる事にしたのだ。




☆☆満月の夜、零時に呪文を唱えながら円陣を描き、白い粉を被り願いを書いた紙を飲み込みましょう。
美の女神アフロディーテがきっと貴女の願いを叶えてくれるはず☆☆



↑↑↑↑↑

こんなライトな調子で説明が載っていた。


「けっ、アホじゃねーのか!」

と、おまじないや占い等を信じない人や、まっとうな人なら一笑して終わるだろう。


だが、ゆうみは藁にもすがる思いで計画を立てた。



しおりを挟む

処理中です...