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セレナーデを弾くように
①
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西本は、パジャマの布越しにほなみの指先に込められた力を確かに感じた。
気のせいではない。ほなみは自分にすがるように身を預けている。
彼女からは「嫌い」「近寄らないで」という言葉を散々浴びせられているが、それはきっと真逆なのだろうーー
こんなにか弱くて華奢な肩をしているのに、痛いほどに肉をつかむ力は一体どこからくるのだろうか?
それでいて小刻みに震える彼女のまぶたに西本は切なくなる。
「そんな顔で泣くなよ」
「……女の子に泣かれるのは慣れてるでしょ?」
「そんなんじゃねえよ!」
彼の鋭い声に、ほなみはビクリと身を固くした。西本は彼女の怯えを察し、とりなすように髪をゆっくり撫でた。
「だから……俺は……ほなみが泣いてるのが嫌なんだよ……見たくないんだ」
「じゃあ、西君の前ではもう泣かない」
「それはもっと嫌だ!」
「ええっ?」
「ひとりで泣くな」
ほなみは、きっぱりとした彼の物言いと、色素の薄い瞳に胸を撃ち抜かれる。
「他の奴の前でも絶対に泣くなよ」
「他の奴って、誰の事?」
「だから……俺以外の男に決まってるだろ!」
頭の奥がつんと痛くなり、目の回りがじわりと熱を持つ。また涙が出てしまい、下を向いたが、顎をつかまれて唇を奪われた。
長く長く、彼の唇はほなみを離さなかった。
熱い唇同士が合わさり、時折ビリリと震え、首筋から背中に甘い刺激が伝わる。
彼の舌が割り込み、咥内を掻き回し始めると、ほなみは甘い溜め息を無意識に漏らしていた。
彼の呼吸も乱れている。
(これは……夢?会う筈のなかった西君が、こんなに近くに……)
ーー彼の温もりが現実なのかを確かめたい。
ほなみは、彼の真っ直ぐな前髪に触れる。そこにあるふたつの瞳が妖しい色の焔を宿しているのに気付いた時、ふわりと身体が軽くなった。
いつの間に、抱き上げられている。
「……ベッドは何処?」
その低い声が意味する彼の望みを察し、ほなみの心臓が激しく鳴り始める。
胸の痛みと沸き上がる涙が、これは夢では無い、と教えていた。
「ダメ……」
ほなみは震える手足をばたばたさせた。彼はすぐに寝室のドアを捜し当て、中へと入る。
ほなみはベッドにそっと降ろされ、身を起こす暇も与えられずに両の肩を強く押された。ベッドへ沈んだほなみと西本は一瞬熱く見つめあう。
「……雷、平気?」
「今は平気……」
首筋にキスされながら、くすぐったさに耐えられず身をよじる。彼の腕は細いのに物凄い力で押さえつけられて、身動きが出来ない。
「こ、怖い……」
「何が?」
彼は、唇で胸の先端を捜し当てると、薄いパジャマの上から『ちゅっ』と音を立てて口付けた。
「あ……そんなのっ……」
敏感な場所を刺激されて、ほなみの柔らかい、智也にしか開いたことのない場所が熱く溢れ出そうとしていた。
「俺が怖いの?」
西本は胸から顔を離し、静かに問い掛ける。
彼の瞳の色は硝子のように澄み、何も邪心や欲などないかのように見える。だが、彼の中に猛々しく渦巻く熱を、ほなみは感じ取っていた。
ーーその熱が向かっているのは、この私なのだ。
ふわふわして、嬉しくて……そして、とても恐ろしい。
憧れの彼に抱き締められて、口づけられてーーそんな甘ったるい夢を見ていられるだけでも幸せな筈なのに、もっと、と心の奥で叫んでいる自分がいる。
走り出そうとしている自分の気持ちが怖いの……と、喉まで出かかった言葉を呑み込んだ。
気のせいではない。ほなみは自分にすがるように身を預けている。
彼女からは「嫌い」「近寄らないで」という言葉を散々浴びせられているが、それはきっと真逆なのだろうーー
こんなにか弱くて華奢な肩をしているのに、痛いほどに肉をつかむ力は一体どこからくるのだろうか?
それでいて小刻みに震える彼女のまぶたに西本は切なくなる。
「そんな顔で泣くなよ」
「……女の子に泣かれるのは慣れてるでしょ?」
「そんなんじゃねえよ!」
彼の鋭い声に、ほなみはビクリと身を固くした。西本は彼女の怯えを察し、とりなすように髪をゆっくり撫でた。
「だから……俺は……ほなみが泣いてるのが嫌なんだよ……見たくないんだ」
「じゃあ、西君の前ではもう泣かない」
「それはもっと嫌だ!」
「ええっ?」
「ひとりで泣くな」
ほなみは、きっぱりとした彼の物言いと、色素の薄い瞳に胸を撃ち抜かれる。
「他の奴の前でも絶対に泣くなよ」
「他の奴って、誰の事?」
「だから……俺以外の男に決まってるだろ!」
頭の奥がつんと痛くなり、目の回りがじわりと熱を持つ。また涙が出てしまい、下を向いたが、顎をつかまれて唇を奪われた。
長く長く、彼の唇はほなみを離さなかった。
熱い唇同士が合わさり、時折ビリリと震え、首筋から背中に甘い刺激が伝わる。
彼の舌が割り込み、咥内を掻き回し始めると、ほなみは甘い溜め息を無意識に漏らしていた。
彼の呼吸も乱れている。
(これは……夢?会う筈のなかった西君が、こんなに近くに……)
ーー彼の温もりが現実なのかを確かめたい。
ほなみは、彼の真っ直ぐな前髪に触れる。そこにあるふたつの瞳が妖しい色の焔を宿しているのに気付いた時、ふわりと身体が軽くなった。
いつの間に、抱き上げられている。
「……ベッドは何処?」
その低い声が意味する彼の望みを察し、ほなみの心臓が激しく鳴り始める。
胸の痛みと沸き上がる涙が、これは夢では無い、と教えていた。
「ダメ……」
ほなみは震える手足をばたばたさせた。彼はすぐに寝室のドアを捜し当て、中へと入る。
ほなみはベッドにそっと降ろされ、身を起こす暇も与えられずに両の肩を強く押された。ベッドへ沈んだほなみと西本は一瞬熱く見つめあう。
「……雷、平気?」
「今は平気……」
首筋にキスされながら、くすぐったさに耐えられず身をよじる。彼の腕は細いのに物凄い力で押さえつけられて、身動きが出来ない。
「こ、怖い……」
「何が?」
彼は、唇で胸の先端を捜し当てると、薄いパジャマの上から『ちゅっ』と音を立てて口付けた。
「あ……そんなのっ……」
敏感な場所を刺激されて、ほなみの柔らかい、智也にしか開いたことのない場所が熱く溢れ出そうとしていた。
「俺が怖いの?」
西本は胸から顔を離し、静かに問い掛ける。
彼の瞳の色は硝子のように澄み、何も邪心や欲などないかのように見える。だが、彼の中に猛々しく渦巻く熱を、ほなみは感じ取っていた。
ーーその熱が向かっているのは、この私なのだ。
ふわふわして、嬉しくて……そして、とても恐ろしい。
憧れの彼に抱き締められて、口づけられてーーそんな甘ったるい夢を見ていられるだけでも幸せな筈なのに、もっと、と心の奥で叫んでいる自分がいる。
走り出そうとしている自分の気持ちが怖いの……と、喉まで出かかった言葉を呑み込んだ。
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