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住人十色

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 さて、今日は〇月〇日。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。新生活へ向けて準備を進めている方も多いかと思います。念願の上京、一人暮らし、就職に進学、新しい環境に期待しながらも、ちょっとだけ地元や実家を離れるのが寂しいなぁなんていう人もいるかもしれませんね。
 私はというと、超がつく田舎出身ですからやっぱり学生時代は東京に憧れたものです。どのくらい田舎かというと、小学校まで徒歩1時間、一番近いコンビニは車で5分。まぁそれでも車で30分も行けば買い物には困らないし、少し遠出すれば大きい映画館やショッピングモールにも行けるので、まだマシなほうかもしれません。
 実際、東京に住んでみると意外に不便なこともありますよね。何でもあって楽しい反面、大きめの戦利品は自分で持って帰れないし、本なんて大量に買った日には腕が筋肉痛で仕事にならないなんてことも。大音量で音楽も聴けないし、ライブ映像を観ながら飛んだり跳ねたりにも気を遣う。言うなれば結局は『ないものねだり』なんでしょうね。
 東京出身の大学時代の友達に、ある日「帰る家があって羨ましい」と言われたことがあります。確かに、東京でちょっと失敗して嫌なことがあっても、私にはそこから遠く離れたところに帰る場所がある。それだけでなんだか安心するし、だからこそ東京で何だってできそうな前向きな気分にもなれる。家っていうのは不思議ですよね。一人暮らしの狭い部屋でも帰ればほっとするし、家族団欒ができる居間は賑やかだなぁと思いつつやっぱり落ち着くものです。今は持っていなくても、過去のあるいは未来の、そういう自分の居場所に想いを馳せることは、きっと一度は皆さん経験があるはず。
 現代は一昔前と違って、家にもいろんな形態があります。このところといっても結構経ちますが、よく耳にするのは『シェアハウス』でしょうか。『下宿』とも似て非なる共同生活ですが、向き不向きは別れそうですよね。かく言う私は、憧れるもののやっぱり自分には向いていないだろうなと思います。だからこそ、書いてみたくなったのかもしれません。先週もお話しましたが、この度あるアプリゲームのシナリオを担当致しました。公式サイトでの発表もありましたので、この場を借りて改めて私からもご報告します。
 タイトルは『住人十色』。ラジオでは伝わりづらいかもしれませんが、四字熟語の十人十色ではなく、『住む人みんなにそれぞれの人生がある』そんな想いを込めてつけた名前です。そう、お察しの通り、シェアハウスでの日常を描いたお話になっています。
 学生から母子まで10人が住むシェアハウス。年齢や職業はもちろん、性格も生活リズムも全く違う男女が同じ屋根の下で交わす何気ない日々。けれど、人が集まるところに謎は集まり、住人それぞれの過去や未来に迫るストーリーがそこかしこに散りばめられています。プレイヤーつまり『あなた』は、メインキャラクターを男女どちらかから選択することができ、同居人たちと共に日常の、ひいては人一人の人生の謎を解き明かす毎日を送ることに。
 時にはシェアハウスの外へ飛び出し、小さなミッションをクリアしながら、選択肢を進めていってください。結末は『あなた』の選択肢によって変わります。それはそう、『最初の選択』から既に。
 どこが変わっているかわかりますか?なんてクイズ番組の問題によくありますが、ぜひそれを身をもって体験してください。一つしかないと思った答えも、見方によって二つにも五つにも増えることがあります。皆さんの現実の世界と同じように。
 あんまり言うと、どんどんプレッシャーがかかって危うく押しつぶされてしまいそうになりますが、ゲームというのはプレイした人それぞれ感想が違って当たり前です。主人公の考えに共感する方もいれば、「なんか思ってたのと違う」そういう方もいるでしょう。それでいいんです。『家に帰るまでが遠足』なら、『意見を持つまでがゲーム』です。プレイした『あなただけ』しかわからない感覚を、大切にしてください。
 育成ゲームではありませんが、メインストーリーの他にイベントストーリーや、登場人物それぞれにフューチャーしたキャラクターストーリーもありますので、そちらもぜひ併せてお楽しみください。イベントストーリーでは、限定的に他のキャラクターを操ることもできますよ。
 公式サイトではキャラクターのビジュアルや操作方法なども特集されております。配信記念としてゲーム内で必要なポイントなどの特別配布もあるようですので、そちらもご確認ください。
 私はSNSアカウントを持っていないので、このラジオでご紹介しましたが、もちろん強制ではありませんよ。ゲームに興味があって、ちょっとやってみてもいいかな。そんな軽い気持ちで始めていただけたら、制作冥利に尽きます。アプリゲームに不慣れな方でも決して難しくはありません。戦闘もありませんし、正解もありません。
 あなたがあなたらしくプレイできるゲームだから、『十人十色』と言うのです。ああ、この場合の意味は、四字熟語のほうですよ?
 世の中も人生もいろいろあります。苦しいこと辛いこと、楽しいことに嬉しいこと。もし誰かに「あなたは幸せか、不幸せか」なんて聞かれたら、あなたはどう答えますか? きっと皆さん、「私は」と答えるはず。誰が何と言おうと「あなたが」でいいんですよ。幸せか不幸せかなんて他人にはかることはできません。できるとすれば「自分と比べて」、です。人は他人の主観には立てない生き物ですから、あなたは私より幸せ、あの人は私より不幸せなんて言い方をします。でも、本人にとってはそれが不幸せで、それが幸せかもしれない。
 難しく考えることはありません。『あなたはあなたでいい』、ただそれだけです。少なくともこのゲームをプレイする間は、そのことを忘れないでください。そして願わくは、現実世界でも覚えていてください。
 そろそろお別れの時間です。最後にひとつだけ。このゲームの感想をいただけるのならとっても嬉しいですが、人生はミステリでもあります。どうかSNSなどで他人の人生を大っぴらに明かさないようにだけお願いしますね。そうでないと、あなたの心の中も、自ずと見透かされてしまいますよ? それではまた来週お会いしましょう。深見小夜子でした。



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