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前編 ; 突然のプロポーズ
しおりを挟む「約束したよね? 僕がエリザより強くなったら、お嫁さんになってくれるって?」
「……」
「ほらエリザよりも背が伸びたし、力も強くなったから逃げられないよ?」
「……」
「忘れちゃったの?」
「あ、あの……」
「こうしたら、思い出してくれる?」
私、エリザ。
この国の近衛騎士で、十九歳。一応、侯爵家の四女。
今、逃げられないように私の腰に右腕を回し、左腕で脇から背中、後頭部をしっかりとホールドして、私の顔中にキスの雨を降らせているのは、この国の第一王子で、ジークフリート王子。十七歳。
サファイヤの瞳の虹彩が光に当たって、アイスブルーに光るのが判るくらい目の前にあって、欲望をたたえた低い声と唇と熱い吐息が引き結んだ唇をかすめる。
服の上からでも判る私のそれより高い体温が、家族以外に、家族でもここまで密着したことがないと思いあたりパニックになる。
約束?
お嫁さん?
強くなったら?
いつ?
ぜんぜん覚えてないよ!
王子にしっかりホールドされて、唯一自由になる左手で肩を押してもびくともしない。
わからない、どうしたらいいの?
わからない!
私、王子付きの近衛騎士として日々精進していただけなのに……。
薄れゆく意識のなか、王子のサファイヤの瞳だけがいつまでも目に焼き付いていた。
◆◇◆◇◆◇
「小さい頃からの想い人にやっとプロポーズしたのに、気絶されてしまうって……嫌われてるのかぁ?」
そんなことはないと解かりきっているのに、小さくつぶやいてうっすらと笑う。
人事不省に陥ってしまったエリザを近くのカウチソファに横たえると近衛の上着を脱がせる。
開襟シャツから豊かな胸の谷間がチラッと見えた。
コルセットをしていないのに見事なプロポーション。眼福だ。
白い柔肌の感触を唇で味わいたい衝動に駆られるが、プロポーズの途中だしね。
ここは王子らしく紳士らしく行こう。
彼女、エリザは、将軍家でもある侯爵家の末の姫。
小さい頃から将軍家の人間として剣術・体術を仕込まれ、僕が五歳の時から毒味役及び護衛としてずっと一緒に居る二歳年上の美しい少女。
自分の事は二の次で病弱だった僕の為に影日向となく支えてくれた。
そんな彼女を大切に思い、恋愛感情を抱くのは当然の事だろう。
体調不良の時を狙って心配する彼女に結婚の約束を取り付けたのに、忘れられたのはちょっと寂しいけれどねぇ。
彼女の成人を待って王子付きの近衛騎士としての嗜みと銘打って王妃教育を始めて三年。
真面目な彼女は疑いもせず、素直に王妃の椅子に近づいている。
外堀もすべて埋まったし、後はエリザの気持ちを姉弟未満から方向転換させるのみ。
「これだけ待ったのだから、エリザの反応をゆっくり味わって楽しまさせてもらわないとね」
とりあえず彼女の深碧の瞳が僕を映すまで、彼女の寝顔を堪能しようか。
「逃がさないよ。かわいい僕のお姫様」
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