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第1章
1-29 王道
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その日は夢を見た。
この後自分自身がどういう結末を迎え、死んでいくのかを。
その後、帝国という国がどう変化していき確実に滅びに近づいていくかを。
元々私は、少しの未来を見ることが出来るのだ…言わば予知夢みたいなものだ。
だが、私の王の能力では数分先か数時間程度先かを予知夢できるのだが(確定した時間を予知夢することは不可能)、それはランダムで起きていた…。
能力を行使したとしてもその程度が限界だった。ここまで、鮮明な夢が出てくるとなるとこれはもしや走馬灯とかその関連するものではなかろうか。
夢に出てきたのはある青年だ。
青年は至極、自己犠牲保身な所がある。青年は強くはない。己が強くないことを知っていて尚仲間たちがピンチな場面ではこぞって、己が盾となり逃がすため闘い傷付き青年が行き着いた先は…。
自分が辿る末路と共に、そんな青年の最後も見た。
以外にも自分の役割と言うものが、全ての事柄は、私の人生は、ここに繋がっていたのかと思うとまぁ、なんと言うかわからなくもない気がする。
私が死ななければ始まらない結末がある。
終わりのない結末を延々と繰り返させ続けるのは、酷いものだ。彼女も彼も。
どうやら、夢ももうすぐ覚めるみたいだ。覚悟は出来た。己がすべき事、成し遂げなければいけない事。
「たとえ、この身が朽ちようとも俺の意思は、想いは、アイツに託した」
「そうだね…、託された彼の方もこの夢を見ているかもしれないね」
「え!?誰だよ、アンタ!!」
指差しながらテレシアが言う。
「一応、この世界で邪神をやってるものです!」
名刺みたいなものを渡された。
――――――――――――――――――――
神様実行委員会会長
邪神
お知らせ兼インフォメーション係
――――――――――――――――――――
「何で邪神がここに来てんだよォ!」
「まぁ、その挨拶をと思ってね」
苦笑いを浮かべながら邪神が答える。
「少し話いいか?」
「何かな、王よ」
俺は、邪神にとある願いを託した。この悪夢を終わらせることも出来るかもしれない必勝の切り札を。
「って事なんだけど出来るか?」
「そうだね…でもそれもだいぶ賭けだよね、ほんと好きだよね君は」
「ギャンブルで負け無しだからな!」
「勝負に買っても、毎度奥さんと娘さんに怒られてたけどね」
「ははっ、でもまぁこれが上手く行けばさ…。くだらん争いやら機関にもアイツら王たちにも打撃を与えることが出来る…最悪隙を作れればいいんだからな、俺は」
「そうだね…、うん分かった。乗るよその賭け」
「サンキュ、じゃあ俺はそろそろ…」
「あぁ、さようなら若き王よ…」
手をひらひら返しながら邪神は帰っていき、俺も現実世界へと帰還した。
「んじゃまぁ、いっちょ殺されに行きますかね」
簡単に身支度を整える。予知夢では、もうすぐ…
「失礼します」
来たか!
「何用だ?」
「はっ、ジールの王とアリシタンの王が面会を求めています…、只今王の間にてお待ちいただいているところです」
「分かった、私もすぐに向かう…悪いが先に行って伝えておいてくれるか?」
「了解致しました」
兵士が、扉から去って行くのを透視魔法で見届けたあと、自身も王の間へと向かう。
「この剣と一緒に今の時代で闘うのもこれで幕引きか…」
名残惜しい気持ちに浸りながら我が愛刀「時雨」を擦る。青く長いその刀身は見るものを魅了する。何より、水属性の魔法を詠唱を省いて発動出来る所がデカい。
「お前には、幾度と無く救われた…付き合いも1番長いし人間であれば確実に親友だと言えるだろうな!」
笑いながら愛刀に話しかける。傍から見れば、変な人だが…。
「次の戦いが、本当にラストだ…作戦が成功したとしてもお前が残っているかどうかは正直五分五分なんだ」
やがて、大きな扉が見えてくる。
「だからまぁ、最後くらいは気張っていこうぜ、相棒!!」
扉を開けるとそこには、王たちが連れてきた精鋭部隊がいた。
「随分なご挨拶じゃねぇか!フェル!シアンッ!」
ニヤついた顔でこちらを見てくる、フェル。その足下には先程言伝を頼んだ兵士の首が転がっていた。
「遅かったじゃないか、テレシア王!」
「お前らの要求は俺の首だろ?なぜ殺した!」
「ほぅ…君のお得意の未来を見通す力かな?それとも情報漏れかな?まぁ、どっちでもいいんだけどね?殺した理由?そんなのあるわけないよ、煩かったから殺した…それだけだよ?」
猛烈な殺気をテレシアは、辺り一体に放つ。
「本当に変わってしまったんだな…、お前らは」
「ははっ、そんなに殺気立たないでよ?これから戦うんだからさぁ!」
いきなり、切りかかってくるフェル。
「くっ…」
舞台は整ったと言ったところか、シアンの横に立つ6人のヤツらが目に入った。そいつらは、武装が様々で弓、槍、片手剣、大剣等などを持っていていつ襲ってくるかわからない状況だ。1度、フェルとの距離を引き離すため剣で弾き飛ばした。しかし、衝撃を上手いこと殺して浅いダメージにしかならなかった。
「ふむ…、これは一筋縄では行かなそうだねぇ…お前達、出番だぞ!」
「やっとか」「はよ、終わらせて帰ろうぜ」「この仕事いくら位になるの?」「知らん、俺は飯食えればどうでもいい」「…」
どうやら、アイツらは冒険者の様だ。雇われの身とはいえ、シアンお手製の装備だ。一筋縄では行きそうにないぞ。
「焔纏」
剣に炎を纏いながら近づいてくる奴らの攻撃を受け流す。装備の関係上、下手をすれば時雨の強度よりも高い可能性があるため武器破壊を目的として常に纏って置く必要がある。
「流石に王様の中でも武闘派な訳はあるなぁ!まぁ、俺たちの攻撃を防ぐので手一杯の様子だがな!」
6人の攻撃には無駄がなく、魔法で攻撃しようにもあの防具であれば低階級魔法では太刀打ちができない。それに、何よりも強力な魔法は詠唱が長いため発動することさえままならない。となれば、この場合俺が使える手としては、
「流石に1本じゃキツいか、アイテムボックス!春雨」
この剣は、時雨とセットで使うことによって強力な魔法でも詠唱を必要とせず使うことが出来る。最もこの剣は強力過ぎるがゆえ、アイテムボックスに収納していた訳だが…。
「宣言しよう、王として…俺はお前らを断罪する」
「はっ…笑わせてくれるじゃねぇか!お前ら、連携してやるぞ!後衛組は、詠唱開始だ!」
戦闘が始まると同時に春雨から逆噴射で水を出し一気に間合いを詰めると同時に時雨で攻撃を仕掛ける。
「穿て焔」
僅か一撃で、槍使いの男を殺すことは出来たが詠唱を終えた魔術師が俺にめがけて魔法を放とうとしていた。
「火炎地獄」
時すでに遅し、俺の周りには炎の渦が近づいてきており今にも俺を飲み込もうとしている。3000度以上あるこいつに触れると骨も残らないほど消えるため大変危険なのだが春雨を持ち時雨を手にしている俺には造作のないもので
「火炎吸収」
このスキルは、文字通り炎を吸収できるもので時雨と春雨を持つと勝手に付与されるスキルなのである。因みに吸収した炎を魔力に還元できる。
「なん…だと…!!俺の魔法をこうもあっさり!!」
「そりゃまぁ、王様だしこれぐらい出来ねぇとやってらんねぇだろ」
ここまで、順調そうに思えるが実はかなりやばい状況だ。未来視で見えたがどうやら、テレシアの動向が怪しいとコイツら着けてやがるみたいだ。今現在この城にいるのだがコイツらは、テレシアも仲間に入れようと企んでいるみたいだな。刃向かったら容赦なくアイツの国を消しにかかる気みたいだが…。
「そうか…、俺はアイツに…ふっ、まったく食えない男め!」
「何をほざいているのかは知らんが間もなくここにネイシアが来る、貴様の最も親しかった友が貴様を殺しにな!」
嘲笑気味に見てくるフェルを無視して冒険者たちに向き直る。
「一刀」
ただそれだけを言葉として放ち、冒険者たちは倒れた。首を落として、実際には冒険者たちに観測できない速さで水属性魔法を放っただけなのだが…。
「さてと、んで舞台は整ったんだろ?早く連れてこいよネイシアをよ!」
間もなくしてネイシアが到着した。
「まずは、お前を殺す役目が俺だと言うことを謝罪したく思う…こちらも国としての存命が掛かっているため背に腹は変えられんすまないな」
「…!いや気にするな」
また未来視が見えた。コイツが俺を逃がすためまるで殺したかのような魔法を使ったが故に一緒にフェルに魔法で打たれて絶命する未来だ。見せかけの魔法はどうやらバレるらしい、魔法に精通してないはずのあいつらに何故そんなことが分かるのかは知らないが。
「では、お前には死んでもらうとしよう…次元」
突如俺の後ろに風穴が空いたかと思うと俺を飲み込もうと吸い込み始めている。
「くっ…このままだとあいつも、それはダメだ!鎖水」
透明な見えない鎖がネイシアの腕を拘束した。
「なっ!?えっ!!」
風穴が空いている部分へと投げる。すれ違いざまに俺はテレシアに一言。
「娘と…、この国を頼む…またなネイシア」
次元に巻き込まれてネイシアは、消えていった。
「さてと、ん?おいおいなんだよ、その100以上ある無数の槍は」
振り返ると、どうやら極大魔法の詠唱が完了していたみたいだ。俺はと言うと常に魔力を食う魔法を連発して使っていたため魔力が切れました。
「最早これまでか、最後くらいは華々しく戦いの中で散ってやろうじゃねぇか!」
剣を握りしめひたすら前へと光の槍を叩き切りながら進む。
「終わりの槍」
無数の槍が俺を貫いた。右腕は千切れ全身の至る所に穴が開き、かつて無いほどの…おびただしいほどの出血。
「ぐっは!!…っはぁ!はぁ!」
「情けない最後だなテレシアよ」
「うるせぇよ…っはぁ!お前らがあんな奴らに操られるなんて…ぐっ…こちとら考えてなかった…ゲホッゲホッ…、はぁはぁ」
口の中は鉛の味しかしない。
「死ぬ前にひとつ教えておいてやる、俺たちは操られてなんかいない、俺たちは自分の考えの元やっているだけだ!」
「…っ!」
言いたいことは山ほどあったが次第に俺の視界は落ちていった。
これが、テレシア・ヴァーミリオン最後の戦いである。
この後自分自身がどういう結末を迎え、死んでいくのかを。
その後、帝国という国がどう変化していき確実に滅びに近づいていくかを。
元々私は、少しの未来を見ることが出来るのだ…言わば予知夢みたいなものだ。
だが、私の王の能力では数分先か数時間程度先かを予知夢できるのだが(確定した時間を予知夢することは不可能)、それはランダムで起きていた…。
能力を行使したとしてもその程度が限界だった。ここまで、鮮明な夢が出てくるとなるとこれはもしや走馬灯とかその関連するものではなかろうか。
夢に出てきたのはある青年だ。
青年は至極、自己犠牲保身な所がある。青年は強くはない。己が強くないことを知っていて尚仲間たちがピンチな場面ではこぞって、己が盾となり逃がすため闘い傷付き青年が行き着いた先は…。
自分が辿る末路と共に、そんな青年の最後も見た。
以外にも自分の役割と言うものが、全ての事柄は、私の人生は、ここに繋がっていたのかと思うとまぁ、なんと言うかわからなくもない気がする。
私が死ななければ始まらない結末がある。
終わりのない結末を延々と繰り返させ続けるのは、酷いものだ。彼女も彼も。
どうやら、夢ももうすぐ覚めるみたいだ。覚悟は出来た。己がすべき事、成し遂げなければいけない事。
「たとえ、この身が朽ちようとも俺の意思は、想いは、アイツに託した」
「そうだね…、託された彼の方もこの夢を見ているかもしれないね」
「え!?誰だよ、アンタ!!」
指差しながらテレシアが言う。
「一応、この世界で邪神をやってるものです!」
名刺みたいなものを渡された。
――――――――――――――――――――
神様実行委員会会長
邪神
お知らせ兼インフォメーション係
――――――――――――――――――――
「何で邪神がここに来てんだよォ!」
「まぁ、その挨拶をと思ってね」
苦笑いを浮かべながら邪神が答える。
「少し話いいか?」
「何かな、王よ」
俺は、邪神にとある願いを託した。この悪夢を終わらせることも出来るかもしれない必勝の切り札を。
「って事なんだけど出来るか?」
「そうだね…でもそれもだいぶ賭けだよね、ほんと好きだよね君は」
「ギャンブルで負け無しだからな!」
「勝負に買っても、毎度奥さんと娘さんに怒られてたけどね」
「ははっ、でもまぁこれが上手く行けばさ…。くだらん争いやら機関にもアイツら王たちにも打撃を与えることが出来る…最悪隙を作れればいいんだからな、俺は」
「そうだね…、うん分かった。乗るよその賭け」
「サンキュ、じゃあ俺はそろそろ…」
「あぁ、さようなら若き王よ…」
手をひらひら返しながら邪神は帰っていき、俺も現実世界へと帰還した。
「んじゃまぁ、いっちょ殺されに行きますかね」
簡単に身支度を整える。予知夢では、もうすぐ…
「失礼します」
来たか!
「何用だ?」
「はっ、ジールの王とアリシタンの王が面会を求めています…、只今王の間にてお待ちいただいているところです」
「分かった、私もすぐに向かう…悪いが先に行って伝えておいてくれるか?」
「了解致しました」
兵士が、扉から去って行くのを透視魔法で見届けたあと、自身も王の間へと向かう。
「この剣と一緒に今の時代で闘うのもこれで幕引きか…」
名残惜しい気持ちに浸りながら我が愛刀「時雨」を擦る。青く長いその刀身は見るものを魅了する。何より、水属性の魔法を詠唱を省いて発動出来る所がデカい。
「お前には、幾度と無く救われた…付き合いも1番長いし人間であれば確実に親友だと言えるだろうな!」
笑いながら愛刀に話しかける。傍から見れば、変な人だが…。
「次の戦いが、本当にラストだ…作戦が成功したとしてもお前が残っているかどうかは正直五分五分なんだ」
やがて、大きな扉が見えてくる。
「だからまぁ、最後くらいは気張っていこうぜ、相棒!!」
扉を開けるとそこには、王たちが連れてきた精鋭部隊がいた。
「随分なご挨拶じゃねぇか!フェル!シアンッ!」
ニヤついた顔でこちらを見てくる、フェル。その足下には先程言伝を頼んだ兵士の首が転がっていた。
「遅かったじゃないか、テレシア王!」
「お前らの要求は俺の首だろ?なぜ殺した!」
「ほぅ…君のお得意の未来を見通す力かな?それとも情報漏れかな?まぁ、どっちでもいいんだけどね?殺した理由?そんなのあるわけないよ、煩かったから殺した…それだけだよ?」
猛烈な殺気をテレシアは、辺り一体に放つ。
「本当に変わってしまったんだな…、お前らは」
「ははっ、そんなに殺気立たないでよ?これから戦うんだからさぁ!」
いきなり、切りかかってくるフェル。
「くっ…」
舞台は整ったと言ったところか、シアンの横に立つ6人のヤツらが目に入った。そいつらは、武装が様々で弓、槍、片手剣、大剣等などを持っていていつ襲ってくるかわからない状況だ。1度、フェルとの距離を引き離すため剣で弾き飛ばした。しかし、衝撃を上手いこと殺して浅いダメージにしかならなかった。
「ふむ…、これは一筋縄では行かなそうだねぇ…お前達、出番だぞ!」
「やっとか」「はよ、終わらせて帰ろうぜ」「この仕事いくら位になるの?」「知らん、俺は飯食えればどうでもいい」「…」
どうやら、アイツらは冒険者の様だ。雇われの身とはいえ、シアンお手製の装備だ。一筋縄では行きそうにないぞ。
「焔纏」
剣に炎を纏いながら近づいてくる奴らの攻撃を受け流す。装備の関係上、下手をすれば時雨の強度よりも高い可能性があるため武器破壊を目的として常に纏って置く必要がある。
「流石に王様の中でも武闘派な訳はあるなぁ!まぁ、俺たちの攻撃を防ぐので手一杯の様子だがな!」
6人の攻撃には無駄がなく、魔法で攻撃しようにもあの防具であれば低階級魔法では太刀打ちができない。それに、何よりも強力な魔法は詠唱が長いため発動することさえままならない。となれば、この場合俺が使える手としては、
「流石に1本じゃキツいか、アイテムボックス!春雨」
この剣は、時雨とセットで使うことによって強力な魔法でも詠唱を必要とせず使うことが出来る。最もこの剣は強力過ぎるがゆえ、アイテムボックスに収納していた訳だが…。
「宣言しよう、王として…俺はお前らを断罪する」
「はっ…笑わせてくれるじゃねぇか!お前ら、連携してやるぞ!後衛組は、詠唱開始だ!」
戦闘が始まると同時に春雨から逆噴射で水を出し一気に間合いを詰めると同時に時雨で攻撃を仕掛ける。
「穿て焔」
僅か一撃で、槍使いの男を殺すことは出来たが詠唱を終えた魔術師が俺にめがけて魔法を放とうとしていた。
「火炎地獄」
時すでに遅し、俺の周りには炎の渦が近づいてきており今にも俺を飲み込もうとしている。3000度以上あるこいつに触れると骨も残らないほど消えるため大変危険なのだが春雨を持ち時雨を手にしている俺には造作のないもので
「火炎吸収」
このスキルは、文字通り炎を吸収できるもので時雨と春雨を持つと勝手に付与されるスキルなのである。因みに吸収した炎を魔力に還元できる。
「なん…だと…!!俺の魔法をこうもあっさり!!」
「そりゃまぁ、王様だしこれぐらい出来ねぇとやってらんねぇだろ」
ここまで、順調そうに思えるが実はかなりやばい状況だ。未来視で見えたがどうやら、テレシアの動向が怪しいとコイツら着けてやがるみたいだ。今現在この城にいるのだがコイツらは、テレシアも仲間に入れようと企んでいるみたいだな。刃向かったら容赦なくアイツの国を消しにかかる気みたいだが…。
「そうか…、俺はアイツに…ふっ、まったく食えない男め!」
「何をほざいているのかは知らんが間もなくここにネイシアが来る、貴様の最も親しかった友が貴様を殺しにな!」
嘲笑気味に見てくるフェルを無視して冒険者たちに向き直る。
「一刀」
ただそれだけを言葉として放ち、冒険者たちは倒れた。首を落として、実際には冒険者たちに観測できない速さで水属性魔法を放っただけなのだが…。
「さてと、んで舞台は整ったんだろ?早く連れてこいよネイシアをよ!」
間もなくしてネイシアが到着した。
「まずは、お前を殺す役目が俺だと言うことを謝罪したく思う…こちらも国としての存命が掛かっているため背に腹は変えられんすまないな」
「…!いや気にするな」
また未来視が見えた。コイツが俺を逃がすためまるで殺したかのような魔法を使ったが故に一緒にフェルに魔法で打たれて絶命する未来だ。見せかけの魔法はどうやらバレるらしい、魔法に精通してないはずのあいつらに何故そんなことが分かるのかは知らないが。
「では、お前には死んでもらうとしよう…次元」
突如俺の後ろに風穴が空いたかと思うと俺を飲み込もうと吸い込み始めている。
「くっ…このままだとあいつも、それはダメだ!鎖水」
透明な見えない鎖がネイシアの腕を拘束した。
「なっ!?えっ!!」
風穴が空いている部分へと投げる。すれ違いざまに俺はテレシアに一言。
「娘と…、この国を頼む…またなネイシア」
次元に巻き込まれてネイシアは、消えていった。
「さてと、ん?おいおいなんだよ、その100以上ある無数の槍は」
振り返ると、どうやら極大魔法の詠唱が完了していたみたいだ。俺はと言うと常に魔力を食う魔法を連発して使っていたため魔力が切れました。
「最早これまでか、最後くらいは華々しく戦いの中で散ってやろうじゃねぇか!」
剣を握りしめひたすら前へと光の槍を叩き切りながら進む。
「終わりの槍」
無数の槍が俺を貫いた。右腕は千切れ全身の至る所に穴が開き、かつて無いほどの…おびただしいほどの出血。
「ぐっは!!…っはぁ!はぁ!」
「情けない最後だなテレシアよ」
「うるせぇよ…っはぁ!お前らがあんな奴らに操られるなんて…ぐっ…こちとら考えてなかった…ゲホッゲホッ…、はぁはぁ」
口の中は鉛の味しかしない。
「死ぬ前にひとつ教えておいてやる、俺たちは操られてなんかいない、俺たちは自分の考えの元やっているだけだ!」
「…っ!」
言いたいことは山ほどあったが次第に俺の視界は落ちていった。
これが、テレシア・ヴァーミリオン最後の戦いである。
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