トラップって強いよねぇ?

TURE 8

文字の大きさ
42 / 51
2章

42話 謎の男

しおりを挟む
「おらぁ、不完全な魚人なんだ。魚人は普通は水魔法が使えて、そして人間の上半身に魚の下半身を持ってんだ……」

 俺は無言で聞く。

「俺の格好を見れば分かるだろ?俺たちは魚の顔を持った異常種なんだよ。だから、俺たちは水棲帝都アルカから追われたんだ」

 水棲帝都アルカ、確かキャラクタークリエイトの時に出身として選べた場所の一つだったか。

「……それで、なんだよ。何が言いたいんだよ」

 俺のヤジのような言葉を無視するようにギョンゾは語った。

「追われて、迫害されて俺たちは行き場を失ったんだよ。だけど、この新大陸の行きの船を見つけたんだよ。自分を天才だと思ったぜ……。新大陸に行けば、もしかして俺らの居場所があるんじゃねぇかってな」

 だが、そうではなかったようだ。ここでも、その格好で追い出され、流れついた獣人領で食料を持ってるやつを積極的に襲っていたらしい。そこで、盗賊団と呼ばれるようになったというのだ。

 こいつらが、ナナシが言っていた盗賊団、なんだろう。

「ある時に、科学者様を襲ったんだよ。だけど、負けた。一つも触れることさえできずに俺たちは地面に転がされてたんだ」


……


 いつの間にか、俺は空を眺めていた。

 さっきまで、誰かの食料を分けてもらおうと思って襲っていたのに。

 記憶があいまいで、俺が体を起こして周囲を見渡すとオクとヒラが地面に転がっていた。

「な!?おめぇら……」

 心配して駆け寄ると、息はしているようだった。

 安心して、どういうことなのかと周囲を見ると、俺を見つめるように切り株の上にその科学者様が座っていた。

 体のラインが見えないようなマントを羽織り、もみあげを片方首まで伸ばしてまとめたような髪型をしており、うつろな目が身に付けている丸ぶち眼鏡から見えていた。

 頭が良さそうに見えて、科学者なのか……?と俺は第一印象で感じた。

 その姿を見た瞬間、俺たち3人がこの科学者様を襲って、返り討ちにあったことを思い出した。

「おめぇは……、いったい」

「お前たち全員に真実を知らせるほどの力を俺はまだ持ってない。だが、正義は示すことができる」

 淡々と告げるようなその声に俺は呆けた声を出す。

「は?」

 いきなり何なんだと思った。正義って、何のことだ?

「せ、正義?」

「そう、正義だ。俺はそれを知っている、いや、知った。」

「何を言って」

 俺の言葉など関係ないように科学者様は続けた。

「正義とは、他の誰にも縛られず、自身の主張、自由を守る力だ」

「守る力」

 俺は科学者様の話を聞いて、なぜかとても『守る』という言葉に強く惹かれた。

「お前の記憶を見させてもらった。実に空虚だな」

 瞬間、俺の頭に血が上る。

「なっ、俺を侮辱するってのか……」

 俺たちのあの苦労の日々を笑われた俺は大きく声を張り上げるが、それに被さるように科学者様は言う。

「いや、事実だ。空虚だ、あきらめろ。どれもかれも空虚なんだよ、俺にとっては、いやこの島全員にとって」

 その男が立ち上がり、俺の前に立つ。

 俺は科学者様の顔を見やり、言う。

「殺すのか?俺を」

「いや?同胞を殺すわけないだろう?その代わり、これを持て」

 そう言って、何らかの骨でできた笛を俺の手のひらに乗せた。

「これは?」

「俺は異世界人の感情を知る必要がある。お前たちは異世界人を探せ、そして捕まえろ。異世界人を捕まえた時、または捕まえきれなかったら、この笛を吹け」

「……どういう」

 要領を掴めない俺の言葉を遮るように、彼は最後に言った。

「いいか、正義を執行する対象は異世界人だ。お前の過去の行いもすべて、すべてが奴らのせいだ。全部、全部。お前の過去も憂いも苦しみも憎しみもすべて清算される。」

「正義を執行しろ」

 言われた言葉を必死に理解しようとしていると、男の姿がいつの間にか消えてしまっていることに気が付いた。

「……兄貴ぃ、おれらぁ寝ちまったんでしょうか?」

「ん?おれもでゲソか?」

 消えた男と代わるように、俺の子分たちが起きだした。

「どういうことなんだ……?」

 先ほどのは夢だったのか、とも考えそうになるが、俺の手の平にはさっきと同じように骨の笛がぽつんと存在していた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。 そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。 軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。 誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。 毎日22時投稿します。

現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン
ファンタジー
 世界中に色々な歪みを引き起こした第二次世界大戦。  大日本帝国は敗戦国となり、国際的な制約を受けながらも復興に勤しんだ。  GHQの占領統治が終了した直後、高度経済成長に呼応するかのように全国にダンジョンが誕生した。  ダンジョンにはモンスターと呼ばれる魔物が生息しており危険な場所だが、貴重な鉱物やモンスター由来の素材や食材が入手出来る、夢の様な場所でもあった。  そのダンジョンからモンスターと戦い、資源を持ち帰る者を探索者と呼ばれ、当時は一攫千金を目論む卑しい職業と呼ばれていたが、現代では国と国民のお腹とサイフを支える立派な職業に昇華した。  探索者は極稀にダンジョン内で発見されるスキルオーブから特殊な能力を得る者が居たが、基本的には身一つの状態でダンジョン探索をするのが普通だ。  そんなダンジョンの探索や、たまにご飯、たまに揉め事などの、華の無いダンジョン探索者のお話しです。  たまに有り得ない方向に話が飛びます。    一話短めです。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

おっさん冒険者のおいしいダンジョン攻略

神崎あら
ファンタジー
冒険者歴20年以上のおっさんは、若い冒険者達のように地位や権威を得るためにダンジョンには行かない。 そう、おっさんは生活のためにダンジョンに行く。 これはそんなおっさんの冒険者ライフを描いた生活記である。

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。

山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。 異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。 その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。 攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。 そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。 前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。 そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。 偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。 チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...