お盆に台風 in北三陸2024

ようさん

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8月11日(日)

「てんでんこ」はアリかナシかーー孤高のグルメ鉄道、JR八戸線物語(?)

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 教えられた通りにホームに降りると、「北三陸行き」と表示された見慣れない小綺麗なディーゼル車両がドアを開けて待ち構えていたーーどうにか間に合った。東北地方の今や貴重なJR在来線、八戸線だ。

 新しめの車内には清潔で座り心地のよさそうなシート席とボックス席があった。観光地化とインバウンドの潮流に乗ってブレイクしたのか。
 夏休みシーズンの台風予報のせいか、地元の高校生の姿も観光客の姿もない。座席をまばらに埋めている客のほとんどが帰省客のようだ。

 俺がこの路線の世話になっていたのは平成の始めーーざっと1990年代の真ん中頃だ。今振り返るとまだ昭和の残照がずいぶん色濃く残っていたと思う。

 駅舎だって今通って来たようなどこもかしこもピカピカで広々とした現代的な高架駅ではなかった。その頃、全国の何処にでもあったような国鉄時代の典型的な木造平屋駅舎で、街の大きさと反比例するような昭和感溢れるひなびた駅だった。
 当時、JR線の一通過駅に過ぎない北三陸駅でさえ既にコンクリート駅舎だったので少し不思議な気もしたが、貨物を含めた複数線が乗り入れる大きな駅ではあった。
 一駅隣には本八戸という中心街の都会的な駅がちゃんとあったので、その頃はそんなもんかとも思っていた。

 ディーゼルカーも絵に描いたような赤字ローカル線のボロ車両で、まだ暑さよりも寒さが命に関わる時代だったから冬は強力な暖房があったが、夏場の冷房なんてものはなかった。
 駅のコンコース兼待合室には扇風機くらいはあったかもしれないが、なかったかもしれない。どうだったろう。

 別にJRの赤字のせいではなく、この辺りは昔は夏が短く涼しかったのだ。学校はもちろん、エアコンが未設置の公共施設だって珍しくなかった。
 バスも列車もマイカーも窓全開で走っていたが、その時代はそれでも十分過ごせた。街中はうだるように暑いこともあるが、海沿いを吹き抜ける風は機械が作った冷気よりも心地良かった。
 昔から三陸地方一帯の夏はと呼ばれる冷たい海風が吹く年は、霧雨混じりの寒い日か続いた。ある時までは高齢者の熱中症よりも米の冷害の方が深刻だったーーさすがにどちらがいいとは言えないが、温暖化の影響はシャレにならない。

 改札鋏かいさつばさみ片手に国鉄時代から奉職してそうな駅員のオッサン達、毎日同じような雑談に花を咲かせていたキヨスクのおばちゃんと行商の婆ちゃん、出稼ぎ帰りらしきワンカップ片手にした白髪混じりのオヤジさんーーあの人達は流石にリタイアしているだろう。どこかで元気にしているかな。

 八戸線の下りの終点、俺の故郷である北三陸駅から先は、国鉄民営化に先駆けて第三セクター化した大老舗、我らが三陸鉄道だ。安全上・防災上の理由から意外と山中やトンネルの中が多く、車窓からの景色の良さに関しては「海岸列車」のイメージ通りの八戸線に軍配が上がる。

 一方、青森方面の下りや盛岡方面に向かう上り列車は「青い森鉄道」というまた別の第三セクター線だ。何だかややこしいが何のことはない、新幹線が通るまでは全部新JRの在来線だった。

 昔気質で古株のJR八戸線先輩は気がつくと、「放課後、ちょっと来いや」とばかりに「いわて銀河鉄道」を含むイキリ後輩の第三セクター私鉄軍団に体育館裏で囲まれてしまっていたのだった。
 鉄オタの間では「JRの孤島線」として有名な路線なんだそうで、JRの「青春18きっぷ」は私鉄区間で途中下車しない条件で使えるーーとかなんとか、圭人が新幹線車内でウンチクを語り続けていた。
 ちなみに「三陸鉄道」だけは昭和の国鉄時代の頃の誕生なので、時代性を反映してちょっとお堅めのネーミングだ。

 八戸線の受難は続く。大震災の時には路盤と鉄橋が流されて一年の運休を余儀なくされ、数年前の台風豪雨の時にも被害を受けた。
 だが、我らが八戸線は満身創痍ながらも不死鳥のように蘇った。実は無二の同志であるメルヘン私鉄達とも肩を組み、地元の学生やお年寄り、レトロや癒しを求めてやってくる旅人のために今日もコツコツ健気に走り続けているーー(完)ーー



 いや、(完)じゃねえわ。俺的にまだ何にも解決してねえし、列車だって明日は絶賛運休予定だ。

 ちなみに後で調べたら、観光シーズンには山海のフルコースつきのイベント列車も走っているとそうだが、路線の収益的には他在来線ともども厳しいものがあるようだ。
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