赤いトラロープ〜たぶん、きっと運命の

ようさん

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「おまけにスキミング系の昏睡強盗とか疑ってカード全部止めちまったもんだから、不便で仕方ねえっつーの!」

 玄英はますますしょぼくれて半泣きになった。

「ご迷惑をおかけするつもりはなかったんです。僕だって行きたくなかったけど、朝早くから別な打ち合わせがあったんです。眠るあなたを起こしたくなくて………ですが、僕の名刺の裏に一応連絡先を」

 遠山の名刺???

「んなもんどこにも無かったぞ!」

「部屋の中だとゴミに紛れて捨てられてしまうと思い、ちょうどカバンが開いていたので、名刺入れの中に……」

ーー名刺入れ?

 探してみると、確かにあった。SNS映えしそうな装飾性の高いアースカラーの名刺は、やはり玄英の会社で和紙をヒントに開発したという草本由来のクラフト紙なのだろう。裏返すと確かに電話番号が書かれている。

 変なとこで丁寧だなっ!てか、言われなきゃ気づかねえよ!営業じゃねえから名刺入れなんか、何日も開かない事だってザラだし!

「僕たち、これで終わりですか?」

 遠山が情けない声で聞いてくるなり、顔を覆ってしまった。

「終わりも何も、始まってもいないだろうが!事故だ事故」

 奴がはらりと溢れた前髪と長く形のいい指の隙間から「こんなに好きにさせといて……酷くないですか?」と呟くのが聞こえてギョッとした。

ーーいや待て。昨夜の顛末のどこにそんな要素あったよ?

 この人も俺同様、一刻も早く忘れて通常運転に戻りたがってるんだとばかり思ってたのに。

「お、おい。泣くなって。場所変えるぞ」

 慌てて彼の腕を抱えて慌てて席から立たせた。俺がまるでクズ男みたいじゃないかーー実際、過去の恋愛だって褒められたもんじゃなかったけどさ。
 常連の女性客の視線が痛い。このままじゃ「マドンナ」の全員を敵に回しかねん。
 怪訝そうなマスターに「ちゃんと仲直りしなよ」と心配されながら店を出た。

 かくなる上はさらなる深淵を覗き、自分自身の所業と向き合わねばなるまい。


 行き先も決まらないまま、駅前の通りをだらだら歩くーー21世紀が始まってこの方、あまり変わらないと思っていたこの界隈にもコンビニやはやりのチェーン店、お洒落系のこだわり系の店がずいぶん増えた。
 部外者に聞かれたくない話をするには個室のある店がいいんだろうが、二度と酒は飲みたくない。

「恒星さん」

 今度は玄英の声と表情が硬い。少しギョッとした。

「何?」

「本当は僕と何にも無かったと思い込もうとしてませんか?全部僕の狂言だと」

「……いや、あなたを疑ってるわけじゃ……」

 でも正直、そういう場合に男同士で何をどうするのかーー耳学問として聞いたことはあるが、やはり想像がつかない。
 朝起きて全裸だった以外、俺の方の身体には何も異変や違和感は無かった。強いて言えばスッキリしている割に昼間、やたらだるかったくらいか。

「それで……たった今閃いたことなんですが」

「なっ、何?」

 閃きーーそう、天才とは1パーセントの閃きが超新星レベルで神がかっているからこそ天才なのである。忘れかけていたけどこの人は一流の経営者にして天才研究者だ。

「何か斬新な解決策でも?」

「店に来てここでのことを思い出せたんだから、二人でまた同じホテルの部屋に行ってみればもっと……」

「フザけてんのかあんた?」

 俺は苛々して叫び返した。

「すっ、すみませんっ……お嫌、ですよね……」

 玄英が一転、平謝りに謝った。

「お嫌に決まってんだろうが。何が悲しくて男とやらかしたホテルにわざわざまた行かなきゃいけないんだよ」

 ぐす、と半歩下がって歩く玄英が啜り上げる音が聞こえた。

ーーこれ本当に、昼間のスーパーエリートと同一人物?

 いや、カリスマ社長云々以前にいい大人の男がこれだけ泣きやすいって、社会人としてどうなの?

 元々上背がある一般人離れした容姿だから、すれ違う人が時々目に留めたり振り返ったりする。顔を泣き腫らしている美形だから余計に目立つ。何をしてても腹ただしいほどに美しい。

 連れの俺の方が人相も悪いし、間違いなく悪役に見えているんだろうーー知ってる誰かがどこかで見てないとも限らないし、先に社会的に死ぬのは俺の方かもしれない。
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