赤いトラロープ〜たぶん、きっと運命の

ようさん

文字の大きさ
135 / 144
10

⭐︎バトル・オブ・クロエ1

しおりを挟む
 

「いないわよ」

 本物の清掃クルーに紛れて手分けをしながら船内を捜索中、ンドゥールさんと一緒に本丸と思しきVIP用最上級スィートルームに向かったモリーからインカムで連絡が入る。

「いない?」

「そ。どうせDon't Disturbのプレートが下がってるだろうと思って、弟に頼まれたとホテルマネージャーに言い張ってマスターキーで開けさせたの。誰もいない。さっきまで二人がいたのは確かだと思うんだけど」

「何か手がかりが?」

「それがあまりに酷い部屋でーー勝手に清掃頼んじゃっていいかしら」

「酷いーー?」

 VIP用最上級スィートが?

「そ。状況が状況なだけに、バスルームかクローゼットに死体が押し込まれてることも覚悟して探してみたんだけど。幸いそれは無いわね」

 それに、実の姉が死体発見を覚悟するような部屋って一体……

「ど、どんな状況なんですか?まさか血痕……」

「ううん。10組呼んで乱交パーティでもしてたみたいな事後感満載。実物よりスゴいかも……」

「……はっ……?」

 三連続ジャンプばりに対艦ミサイルぶっ飛ばしてくるお姉様。

「赤の他人はともかく、弟のこういうのって生々しくて耐えられないわあー。臭いも空気も最悪だし」

「な、な……なんか……、そんな事頼んじゃってすみません」

 って、何で俺が謝んなきゃなんないんだよう(泣)俺だって地味にダメージデカいわ!

「念の為、見に来てみる?」「行きません!」

「あ。(ピー)じゃない方の臭いは、呪術用の香に似てるってダーリンが言ってたわ。シャーマンがよく使うもので、違法な物ではないらしいんだけど判断力や思考力が鈍るんだって」

 それって……ギリ脱法なヤツじゃね?
 一体、何やらかしといてくれとんじゃああ!あンの野郎ー!
 

ーーある程度は覚悟してたけど……くっそ、サイコパスめ!

ーーとにかく、早く玄英を探し出さないと……

 船内のジムやレストラン、開店前のバー、温室、スタッフルームやパニックルーム、プライベートバルコニーまで探したが、玄英はどこにもいない。時間切れのリミットだけが刻々迫る。

 俺は古賀さんが調べてくれた詳細な船の見取り図を見直した。足を運べる全ての場所に無数の「×」がつけられているーー玄英は一体どこへ?

 俺は途方に暮れてデッキに立ち尽くした。足元で鈍色の真冬の海が咆哮をあげている。

ーーまさか……

ーー激昂したユーラに……あるいは絶望して自ら海にーー

「恒星!」

 インカムから古賀さんの声が聞こえた。

「ユーラがイェン社を出たのですが、交渉を求める座り込みの一団と警備員が小競り合いになり、警察を呼ぶ騒ぎになったそうです」

「何だって!」

「既に騒ぎは落ち着きましたが、パーティには遅れるかもしれません。しかし他のパーティ客達が既に乗船し始めています。人目につかないうちに撤収してください」

「でも……玄英がまだ見つからない!この中にいるはずなのに!」

「これ以上はまずい。後は私が客として潜入し、交渉を試みます」

「坊ちゃん、古賀さんの言う通りです」

 バディで行動していた清さんが言った。

「ここは一旦引いて、作戦を考え直しましょう」

「一旦って……!ユーラが説得に応じなかったら?今を逃したら、船が世界一周に出たっきりになっちゃうかもしれないのに?」

 そんなの耐えられない。あと一歩のはずなのにーー探してない場所がまだあるはずだ。

「ーー機械室とか……操舵室?」

「待ってください!それはさすがにまずいです!シージャック犯にされてしまう!」

「いくら上客ったって、部外者がそんなところに入れるわきゃないでしょうが!」

「だけど……だったら、玄英はどこにいるんだ?」

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

あの部屋でまだ待ってる

名雪
BL
アパートの一室。 どんなに遅くなっても、帰りを待つ習慣だけが残っている。 始まりは、ほんの気まぐれ。 終わる理由もないまま、十年が過ぎた。 与え続けることも、受け取るだけでいることも、いつしか当たり前になっていく。 ――あの部屋で、まだ待ってる。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

【完結】取り柄は顔が良い事だけです

pino
BL
昔から顔だけは良い夏川伊吹は、高級デートクラブでバイトをするフリーター。25歳で美しい顔だけを頼りに様々な女性と仕事でデートを繰り返して何とか生計を立てている伊吹はたまに同性からもデートを申し込まれていた。お小遣い欲しさにいつも年上だけを相手にしていたけど、たまには若い子と触れ合って、ターゲット層を広げようと20歳の大学生とデートをする事に。 そこで出会った男に気に入られ、高額なプレゼントをされていい気になる伊吹だったが、相手は年下だしまだ学生だしと罪悪感を抱く。 そんな中もう一人の20歳の大学生の男からもデートを申し込まれ、更に同業でただの同僚だと思っていた23歳の男からも言い寄られて? ノンケの伊吹と伊吹を落とそうと奮闘する三人の若者が巻き起こすラブコメディ! BLです。 性的表現有り。 伊吹視点のお話になります。 題名に※が付いてるお話は他の登場人物の視点になります。 表紙は伊吹です。

宵にまぎれて兎は回る

宇土為名
BL
高校3年の春、同級生の名取に告白した冬だったが名取にはあっさりと冗談だったことにされてしまう。それを否定することもなく卒業し手以来、冬は親友だった名取とは距離を置こうと一度も連絡を取らなかった。そして8年後、勤めている会社の取引先で転勤してきた名取と8年ぶりに再会を果たす。再会してすぐ名取は自身の結婚式に出席してくれと冬に頼んできた。はじめは断るつもりだった冬だが、名取の願いには弱く結局引き受けてしまう。そして式当日、幸せに溢れた雰囲気に疲れてしまった冬は式場の中庭で避難するように休憩した。いまだに思いを断ち切れていない自分の情けなさを反省していると、そこで別の式に出席している男と出会い…

薔薇摘む人

Kokonuca.
BL
おじさんに引き取られた男の子のお話。全部で短編三部作になります

【完結】それより俺は、もっとあなたとキスがしたい

佑々木(うさぎ)
BL
一ノ瀬(27)は、ビール会社である「YAMAGAMI」に勤めていた。 同僚との飲み会に出かけた夜、帰り道にバス停のベンチで寝ている美浜部長(32)を見つけてしまう。 いつも厳しく、高慢で鼻持ちならない美浜と距離を取っているため、一度は見捨てて帰ろうとしたのだが。さすがに寒空の下、見なかったことにして立ち去ることはできなかった。美浜を起こし、コーヒーでも飲ませて終わりにしようとした一ノ瀬に、美浜は思いも寄らないことを言い出して──。 サラリーマン同士のラブコメディです。 ◎BLの性的描写がありますので、苦手な方はご注意ください *   性的描写 *** 性行為の描写 大人だからこその焦れったい恋愛模様、是非ご覧ください。 年下敬語攻め、一人称「私」受けが好きな方にも、楽しんでいただけると幸いです。 表紙素材は abdulgalaxia様 よりお借りしています。

処理中です...