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変動的不等辺三角形はじまる メグミ編
その2
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年末年始の休みの前に来年もよろしくおねがいしますと、直接挨拶に行くのは時代遅れと昔は思っていたが、やはり人と人のつながりはダイレクトに会う方が強いと近頃は感じる。
新人の北今くんは昔の僕みたいに、めんどくさいメールでいいじゃないですかとボヤいているが、今の得意先とは手応えを感じているらしく言われる前に行くようになった。部下の成長を感じるのは嬉しく思う。
「班長、進捗はどうですか」
「予想よりちょっと遅れているかな。今回はネクタイの小売りだったから細かい数字が多いからなぁ」
「こっちもです。ちょっと休憩しましょう、コーヒー淹れてきます」
「ありがとう」
コンビニで買ってきたドリップコーヒーでわざわざ淹れてくれる。安いし早いからインスタントでいいよと言ったのだが、彼女のこだわりで我が班は美味しいコーヒーを飲むことができている。
書類と端末から離れて休憩しながら休み前の予定を確認、二十九日からの休み前に予定契約数を達成してデータの整理すること、その前に明後日は班だけの忘年会、その二つが話題だ。
「ところで……」
と、蓮池さんが話題を変えようとする度に仕事の話を続けて誤魔化す。昨夜の話は絶対にしたくない。
「さ、仕事に戻ろう。気持ち良く忘年会をしたいし年越ししたいしね」
コーヒーを飲みきると自分で給湯室にカップを持っていき洗って拭いてケースにしまう。そして蓮池さんが来る前に席に戻り黙々とデータ整理をはじめる。彼女も少し膨れながらもデータ整理をはじめる。よし、休憩時間は乗り切ったぞ。次は昼休みか、どこか見つからない所を探してそこでお弁当を食べなくては。
書類と端末を見ながら時計に目をやる、もうすぐ昼休みだ。お弁当の入っているカバンを取ってすぐさま会社を出て近場にある公園で食べるプランを立てて、頭の中でコースをシミュレーションした。よし、蓮池さんが声をかける前に行くぞ。
キーンコーンカーンコーン
隣接している織物工場から昼休みのチャイムが鳴る。同時にこちらも昼休みに入る。そしてプラン通りカバンを持って足早に出口へと向かう。
「うわっ、さむっ」
予想以上に北風が強かった。伊吹山方面からやってくるこの寒風は伊吹おろしといい、かなり厳しい。
あまりの寒さに外で食べるのを断念し、社内の人気の無いところを探してうろうろしていると、空いている会議室を見つけた。
「よし、ここにするか」
「そうですね、このフロアの給湯室も近いですし」
──ひとり言を拾って流れる様に言われると気づくのに遅れる。絶妙のタイミングだった。
そして振り向くとそこには小悪魔が微笑んでいた。
「さ、一緒に食べましょうか」
新人の北今くんは昔の僕みたいに、めんどくさいメールでいいじゃないですかとボヤいているが、今の得意先とは手応えを感じているらしく言われる前に行くようになった。部下の成長を感じるのは嬉しく思う。
「班長、進捗はどうですか」
「予想よりちょっと遅れているかな。今回はネクタイの小売りだったから細かい数字が多いからなぁ」
「こっちもです。ちょっと休憩しましょう、コーヒー淹れてきます」
「ありがとう」
コンビニで買ってきたドリップコーヒーでわざわざ淹れてくれる。安いし早いからインスタントでいいよと言ったのだが、彼女のこだわりで我が班は美味しいコーヒーを飲むことができている。
書類と端末から離れて休憩しながら休み前の予定を確認、二十九日からの休み前に予定契約数を達成してデータの整理すること、その前に明後日は班だけの忘年会、その二つが話題だ。
「ところで……」
と、蓮池さんが話題を変えようとする度に仕事の話を続けて誤魔化す。昨夜の話は絶対にしたくない。
「さ、仕事に戻ろう。気持ち良く忘年会をしたいし年越ししたいしね」
コーヒーを飲みきると自分で給湯室にカップを持っていき洗って拭いてケースにしまう。そして蓮池さんが来る前に席に戻り黙々とデータ整理をはじめる。彼女も少し膨れながらもデータ整理をはじめる。よし、休憩時間は乗り切ったぞ。次は昼休みか、どこか見つからない所を探してそこでお弁当を食べなくては。
書類と端末を見ながら時計に目をやる、もうすぐ昼休みだ。お弁当の入っているカバンを取ってすぐさま会社を出て近場にある公園で食べるプランを立てて、頭の中でコースをシミュレーションした。よし、蓮池さんが声をかける前に行くぞ。
キーンコーンカーンコーン
隣接している織物工場から昼休みのチャイムが鳴る。同時にこちらも昼休みに入る。そしてプラン通りカバンを持って足早に出口へと向かう。
「うわっ、さむっ」
予想以上に北風が強かった。伊吹山方面からやってくるこの寒風は伊吹おろしといい、かなり厳しい。
あまりの寒さに外で食べるのを断念し、社内の人気の無いところを探してうろうろしていると、空いている会議室を見つけた。
「よし、ここにするか」
「そうですね、このフロアの給湯室も近いですし」
──ひとり言を拾って流れる様に言われると気づくのに遅れる。絶妙のタイミングだった。
そして振り向くとそこには小悪魔が微笑んでいた。
「さ、一緒に食べましょうか」
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