上 下
40 / 69
変動的不等辺三角形はじまる メグミ編

その2

しおりを挟む
「あらメグミちゃん、班長って昔からそうなのー」

「うん、ちっちゃい頃からそうでねー、アタシわざとやってるのかなーって思ってたー」

「圭一郎さんかわいい~」

やばいやばいやばい、メグミのヤツ完全に酔っ払ってる。初期設定の弟の知り合いだってこと忘れてやがる。
 それに美恵ももう酔っている感じだ。あんな短時間で酔ったの見たことないぞ、どうして……。

はっ! 蓮池さんか!!

 コップからジョッキに持ち替えて口につけている蓮池さんに目を向けると、したり顔でこちらを見ている。

「美恵になにかしたの」

「してませんよー、ただねぇ、班長よりつき合いが長いんですよね~。たとえばー」

 美恵の前に置いてあるジョッキを取ると、僕の前で振ってみせる。

「美恵がビール飲んでるの見たことありますー」

──いや、そういえばないな。日本酒、ワイン、焼酎なんかは見たことあるが、ビールは無い。

「どういうわけか知らないけど、美恵はビールだけは酔いが早いんですー、そして中ジョッキ二杯、いいですか二杯ですよ、その頃合いがもっとも口が軽くなるんですよ」

 な、なんだと。

「それじゃ質問ターイム、班長のこと好きなひとー」

「「はーい」」

美恵とメグミが元気よく手を上げる。

「班長のことがステキだと思うひとー」

「「はーい」」

「班長の様子がおかしいと思うひとー」

「「はーい」」

「なにか隠していると思うひとー」

「「……」」

「え!?」

美恵もメグミも手を上げずに、首を捻っていた。どうやらどさくさで隠し事を言わせようとしたが失敗したらしい。これは僕も予想外だった。
 考えてみれば当たり前か。今現在の隠し事はメグミが僕の弟だということだ。それを隠しているということを来たばかりの美恵が知るわけがない。
 そしてメグミとしては初期設定を忘れているので隠し事そのものが何か分からなくなっているのだろう、助かった……。



「失礼します」

 背後から声をかけられ振り返ると店員さんだった。

「そろそろお時間なので締めの飯物をお持ちしたいのですが」

 ああそうか、年末進行で時間制だったんだった。それにカラオケルームの予約の時間でもあるんだっけ。

「あ、じゃあおにぎりでお願いします。美恵とメグミちゃんは何にする」

「あたし、サケとタラコ」

「じゃあアタシは梅干しとおかか」

 蓮池さんが自分と男達の分の注文をすると、スマホを取り出しタクシーを手配する。

「北今くんと玉野くんはリタイアですよね、納会はお開きということで班長は二人を送ってあげてください」

「君たちは」

「もちろんカラオケです。今からは女子会です。ねー」

「「ねー」」

いつの間にか美恵とメグミが仲良しとなっていた。
しおりを挟む

処理中です...