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田崎咲との不倫

敏腕若手編集長

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     午前0時。
日付の変わる瞬間・・・

浅野海斗(あさのかいと)は、重たい瞼の重力に負けないように、首を上に向けたり下に向けたりともがいてきた。

多すぎる、それに何でこんなダメな作家ばかりなんだ・・・

デスクに積まれた大量の原稿用紙に、さっと目を通しては捨て、通しては捨てる作業を繰り返していた。

業を煮やした海斗は、バンッ!とボツの原稿用紙をデスクに叩きつけ、立ち上がった。

そろそろ終わったかな・・・

オフィスの隣に位置する工場では、複数の機械が新人作家の為に初版を刷っては丁寧に押し出してゆく。

綺麗に重ねられた初版の山・・・

俺も、こんな時代があったな・・・
ま、この新人作家に比べれば、初版の数も桁違いに多かったけどな。

機械のスイッチを全て停止し、工場の電気を消そうとしたところでケータイが鳴る。

あぁ、もしもし、遅くなってすまなかった。
今終わったからこれからホテルで落ち合おう・・・

電話の相手は女性、しかも旦那のいる人妻だ。

海斗には、世の女性を惹きつける魅力があった。
ルックス、経済力、地位、若くして人の何倍も努力した末掴み取った現実は、世の男性誰もが羨むような栄光を物語っていた。

今日は人妻か、そそるぜ。

期待に胸を膨らませ、工場を後にした海斗は愛車のランボルギーニに乗り込み、甲高いエンジン音を吹かせてホテルへと向かった・・・


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