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Chapter #2
オリバーの憂鬱
しおりを挟むそれからしばらく、オリバーたちは何かを話し合っていた。
話し合う、というよりは『言い合い』に近かったかもしれない。
どことなく平和ではない雰囲気。
言葉の意味はわからないけれど、オリバーが何かを咎められているようにも見える。
やがて川の方から水飛沫が上がり、ショーが始まったのがわかった。
歓声が湧き起こるのを合図に、オリバーたちも会話をやめて早々に別れる。
去っていくメンバーの背中を見送ってから、私はオリバーの元へ歩み寄った。
「Are you OK?」
大丈夫? と恐る恐る尋ねる。
すると彼は一度だけ私と目を合わせてから、ふいと顔を背けてしまった。
何も話したくないという意思表示だろうか。
さてどうしようか、と私が悩んでいると、そこへひょいと横から飲み物が差し出される。
見ると、いつのまにかカヒンがすぐ隣に立っていた。
その腕には三つのジュースが抱えられており、そのうちの一つを私に渡してくれる。
透明なプラスチックの容器に入った、赤いフローズンっぽい飲み物。
差し込まれたストローにはハイビスカスの飾りとミニチュアのコアラの人形が付いていて可愛い。
いつのまに買ってきたのかわからないそれを持って、彼は今度はオリバーの方へと歩み寄る。
川の縁に立てられた柵に上半身を預けるようにして、彼らは二人肩を並べた。
遅れて私もそこへ加わり、オリバーを挟む形になる。
「××××××× ×××××……」
カヒンと話すオリバーはいつになく早口で、やはり私には内容を聞き取ることはできなかった。
(もしかして、わざと早口で喋ってる……?)
普段の彼なら私にもわかるように、易しい英語でゆっくり話してくれる。
それを今回はあえてしないところを見ると、やはりあまり聞かれたくない内容なのかもしれない。
彼が嫌だというのなら、無理に聞き出そうとするのは可哀想だ。
カヒンが彼に話しかけている隙に、私は静かにその場を離れた。
眼前で繰り広げられる噴水の3Dマッピングに背を向けて、道路の反対側へ渡る。
すると、ちょうど視線の先にはさっきのカジノがあった。
こちらも建物全体がライトアップされていて、紫の光を纏ったお城が夜の街に浮かび上がっている。
(綺麗だなぁ……)
しばらく見惚れていると、背後から「Misaki.」と声を掛けられる。
カヒンの声だ。
振り返ってみると、彼は不思議そうにこちらを見下ろしていた。
どうやら追いかけてきてくれたらしい。
「Why did you leave us?」
どうして離れたの、と彼が聞く。
「Because……ええと……Oliver didn’t seem to…… want me…… to hear his talking.」
オリバーが会話を聞いてほしくなさそうだったから。
そう、たどたどしくも素直に答えると、
「For him?」
オリバーのため? と、彼は意外そうな声を出す。
私、そんなに変なことを言っているだろうか。
「I thought you were disappointed in him.」
てっきりオリバーに失望したのかと思った、とカヒンが言う。
「えっ……? No, no, no. Why!?」
なんでそうなるの! と慌てて私が否定すると、彼は先程の会話の内容を簡単に教えてくれた。
どうやらオリバーと話していたグループはみんな彼の友達で、もともと今日は彼らと一緒にここへ来る約束をしていたのだという。
なのに急にそれを断って私たちと同行していたものだから、理由を問い詰められていたのだ。
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