日本語しか話せないけどオーストラリアへ留学します!

紫音みけ🐾新刊2月中旬発売!

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Chapter #4

ごめんね

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 私の心が落ち着くまで、好きなだけ景色を眺めてていいよ、と言われて、私はそれに甘えた。

 手すりに上半身を預け、きらめく街の夜景を静かに見つめる。
 こうしていると、なんだか本当に心が落ち着いてきて、自分の悩みなんてとてもちっぽけなものだと思えてくる。

 しばらくすると、今度はレベッカと入れ替わるようにしてオリバーが私のそばへやってきた。

「Misaki.」

 彼は私の隣で同じように手すりへ身を預けると、

「……I’m sorry.」

 やけにしおらしい声で、そんなことを言った。

 およそ彼の口から出るとは思えない言葉。
 ともすれば聞き流してしまいそうなほど小さく呟かれた『ごめんね』。

「Why do you say such a thing?」

 なんでそんなこと言うの? と、私はちょっと笑いながら聞く。
 彼がこんなことを言うなんて本当に珍しい。

「You still care about what I said.」

 僕が言ったこと、まだ気にしてるでしょ。

 彼はまるでこちらの心を見透かして、確信を持って言う。

 オリバーの言ったこと。

 おそらく、というより、間違いなくあのことだろう。
 図星の私は何も言えなくなってしまう。

「I think Kahin is not playing you. ……He really loves you.」

 カヒンは遊びで君と付き合っているわけじゃないと思う。
 彼は本当に君のことが好きなんだよと、オリバーは前回とは真逆のことを言う。

 オリバーもきっと、私が落ち込んでいたことに気づいていたのだろう。
 私の凹んでいる様子を見て、さすがの彼も罪悪感を覚えたのかもしれない。
 あるいはレベッカに何か吹き込まれたのか。

「……Really do you think so?」

 本当にそう思う? と私が聞くと、

「Sure.」

 もちろん、とすぐに返ってくる。

 そう思ってくれる気持ちは素直に嬉しい。
 けれど、私は反論した。

「Kahin said Japanese girlfriend is popular in Hong Kong.」

 香港では日本人のガールフレンドが人気だってカヒンも言ってたよ。

「I know.」

 それは知ってる、とオリバーは頷いて、そして続けた。

「But, he loves you if you were not Japanese.」

 君がもし日本人じゃなかったとしても、彼は君のことが好きなんだよと。

 ——I love you, Misaki. It’s not a lie.

 君を愛してる。
 嘘じゃないよと、記憶の中のカヒンが言う。

 ——Can’t you believe me?

 俺のことが信じられない?

(……信じたいよ)

 信じたい。

 カヒンは私のことが好き。
 たとえ私が日本人じゃなくても——そんな風に思えるだけの自信が、私にもあればいいのに。

 どうして私はいつも、こんなにも怯えてばかりなのだろう。

 そうやってまた自己嫌悪が始まろうとしたとき、手元のスマホが震えたのに気づいた。
 画面を見ると、SNSアプリで友達申請が来たという通知が表示されている。
 何気なく開けてみると、そこには『Kahin』という名前のアカウントがあった。

(カヒンからだ……)

 いつもは通話アプリで連絡を取ってばかりだったけれど、今回のこれは主に文字でやり取りをするものだ。
 電話だと最近は私が途中で切り上げてしまうから、彼はついに痺れを切らして、こちらでメッセージを送ることにしたのかもしれない。

(怒ってるかな……)

 嫌われたかもしれない。
 一体何を言われるかわからない。
 最悪の場合、別れを告げられてしまう可能性だってある。

 けれど、このままずっと逃げているわけにもいかない。

 申請を承諾しますか? という質問に、私はYESと応えた。
 
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