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獲物にされた猟師ちゃん
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アルの私室にやって来た早苗とユーリカ、そして何故かアウイン。
「……何で黒いのも居るわけ?」
「良いじゃねーか、硬いこと言うなよ」
三人はソファーに座り待つ。ユーリカは、持って来たトランクをソファーの前のローテーブルに慎重に置く。鍵を開け、ゆっくり蓋を持ち上げた。
「うわあ……!!」
「おおっ」
早苗とアウインが同時に声を上げる。そこには、原石が一つと、指輪やピアス、ネックレスやブローチなどの美しい装飾品達が並んでいた。見本と言っても、どうやって一週間で仕上げたのか、百点以上の品が並んでいる。
「どう?」
アルが早苗に向かって聞く。
「どうって……すっっごく綺麗!」
削られ磨かれカットされた石を見ながら早苗は答えた。虹色の輝きが原石の時より増している。この石はオパールのように濁ってはおらず、ダイヤモンドのように透明度が高い。
その美しい宝石が、繊細な細工を施された金や銀の枠に嵌め込まれ、より一層輝きを増している。だが、語彙力の無い彼女には綺麗以外に表現出来ない。
「……君も宝石が好き? 欲しい?」
「え、いや、綺麗だけど私には柄じゃないし。別に要らないかな」
「……ふーん……」
「……あー……何が言いてぇんだ? お前」
まさに早苗が感じた疑問を、アウインがそのまま口にする。
「……別に、何となく。まあ、そう言う訳で、見本が出来たから早速出発したい。準備もあるだろうから、明後日の夜出発しよう。じゃ、今日は解散ね」
早苗とアウインが感じた疑問はうやむやなまま、アルは解散宣言したのだった。
「ようサナエ、ちょっと良いか?」
アルは仕事に戻ったようだ。満腹になった早苗も自室に戻ろうと踵を返す。その時、アウインが話しかけて来た。
「ん? 何ですか?」
早苗が振り返る。アウインは言い辛そうな顔をして少し間を置いた後、切り出した。
「…………お前、あいつに受けてる仕打ちには、気付いてんのか?」
「あいつって、アル? ……獲物の買い取り額が一般的なものより大分低いって事なら……知ってます」
アウインは微妙な表情になる。知っていて何故?と思っているようだ。
「私ね、ここに来るまでニヶ月くらい、野宿生活だったんです。最初はお金無くてパンも買えなくて、食べ物は角兎や野鳥の肉ばっかり」
視線を床に落とし話始めた早苗を見詰め、アウインはじっと耳を傾ける。
彼の真摯な態度に安心し、早苗は続けた。
「何とかお金貯めてここに泊まって……出会いは最低だったけど、理由も多分酷いけど、無料で住まわせてもらえる事になって……それから、私の打ち明けた事……信じてくれて…………彼には感謝してる……」
早苗は顔を上げる。
「騙してるのは最低だけどさ、ここに来る前の取引相手のおじさんの倍はくれてるんですよ。家賃は無料ただだし、生活には何の問題もないんだ」
そう言って、彼女は笑ってみせた。
「だからって……」
「それに、ちゃんと話すつもりで居ます。タイミングを逃してるだけで。…………私、彼に多分、興味があるんです。彼をもっと知りたいし、彼ともっと向き合いたい」
言いかけたアウインを遮り、早苗きっぱりと言う。それを聞いたアウインは、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「…………あー……それってーのは、つまり、あいつが好きだって事で良いのか?」
「へ?! す、好き?! いやいやいや違うし! 興味と好きは別物でしょ!」
思わぬ指摘に、早苗は慌てて否定した。早苗自身、アルを最低野郎だと認識している。そんな相手を恋愛対象として見るなどありえない。と、彼女は思い込んでいた。
アウインは、うえっ……とあからさまに嫌そうな顔になる。
「……趣味わり……んんっ、あー……まあ、何だ? アレだ。お前の詳しい事情は知らねえが、その着てる服なんかも多分めちゃくちゃ高いぜ? お前、何か知らねーがやたら無知だろ? 大方あいつがお前に通貨価値を悟らせない為に、態と高い服屋に連れてったんじゃねーか?」
「えっ? そうなの?」
早苗は驚いた。それは全く気が付かなかった。
「あいつにゃ野望ってか、目的がある。その為には手段は選ばねぇだろう。そんな野郎に、心も身体も預けちまうなんざ……お前迂闊過ぎるぜ」
「か、身体って! 何で知って……?!」
「あいつに聞いた」
「いやーっ!! 何っで言っちゃうのかなあ! あの男はあ!!」
何だかんだお人好しらしいアウインは、早苗の行く末が心配になって来る。いつか師に占ってもらおうと心に決めたのであった。
「……何で黒いのも居るわけ?」
「良いじゃねーか、硬いこと言うなよ」
三人はソファーに座り待つ。ユーリカは、持って来たトランクをソファーの前のローテーブルに慎重に置く。鍵を開け、ゆっくり蓋を持ち上げた。
「うわあ……!!」
「おおっ」
早苗とアウインが同時に声を上げる。そこには、原石が一つと、指輪やピアス、ネックレスやブローチなどの美しい装飾品達が並んでいた。見本と言っても、どうやって一週間で仕上げたのか、百点以上の品が並んでいる。
「どう?」
アルが早苗に向かって聞く。
「どうって……すっっごく綺麗!」
削られ磨かれカットされた石を見ながら早苗は答えた。虹色の輝きが原石の時より増している。この石はオパールのように濁ってはおらず、ダイヤモンドのように透明度が高い。
その美しい宝石が、繊細な細工を施された金や銀の枠に嵌め込まれ、より一層輝きを増している。だが、語彙力の無い彼女には綺麗以外に表現出来ない。
「……君も宝石が好き? 欲しい?」
「え、いや、綺麗だけど私には柄じゃないし。別に要らないかな」
「……ふーん……」
「……あー……何が言いてぇんだ? お前」
まさに早苗が感じた疑問を、アウインがそのまま口にする。
「……別に、何となく。まあ、そう言う訳で、見本が出来たから早速出発したい。準備もあるだろうから、明後日の夜出発しよう。じゃ、今日は解散ね」
早苗とアウインが感じた疑問はうやむやなまま、アルは解散宣言したのだった。
「ようサナエ、ちょっと良いか?」
アルは仕事に戻ったようだ。満腹になった早苗も自室に戻ろうと踵を返す。その時、アウインが話しかけて来た。
「ん? 何ですか?」
早苗が振り返る。アウインは言い辛そうな顔をして少し間を置いた後、切り出した。
「…………お前、あいつに受けてる仕打ちには、気付いてんのか?」
「あいつって、アル? ……獲物の買い取り額が一般的なものより大分低いって事なら……知ってます」
アウインは微妙な表情になる。知っていて何故?と思っているようだ。
「私ね、ここに来るまでニヶ月くらい、野宿生活だったんです。最初はお金無くてパンも買えなくて、食べ物は角兎や野鳥の肉ばっかり」
視線を床に落とし話始めた早苗を見詰め、アウインはじっと耳を傾ける。
彼の真摯な態度に安心し、早苗は続けた。
「何とかお金貯めてここに泊まって……出会いは最低だったけど、理由も多分酷いけど、無料で住まわせてもらえる事になって……それから、私の打ち明けた事……信じてくれて…………彼には感謝してる……」
早苗は顔を上げる。
「騙してるのは最低だけどさ、ここに来る前の取引相手のおじさんの倍はくれてるんですよ。家賃は無料ただだし、生活には何の問題もないんだ」
そう言って、彼女は笑ってみせた。
「だからって……」
「それに、ちゃんと話すつもりで居ます。タイミングを逃してるだけで。…………私、彼に多分、興味があるんです。彼をもっと知りたいし、彼ともっと向き合いたい」
言いかけたアウインを遮り、早苗きっぱりと言う。それを聞いたアウインは、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「…………あー……それってーのは、つまり、あいつが好きだって事で良いのか?」
「へ?! す、好き?! いやいやいや違うし! 興味と好きは別物でしょ!」
思わぬ指摘に、早苗は慌てて否定した。早苗自身、アルを最低野郎だと認識している。そんな相手を恋愛対象として見るなどありえない。と、彼女は思い込んでいた。
アウインは、うえっ……とあからさまに嫌そうな顔になる。
「……趣味わり……んんっ、あー……まあ、何だ? アレだ。お前の詳しい事情は知らねえが、その着てる服なんかも多分めちゃくちゃ高いぜ? お前、何か知らねーがやたら無知だろ? 大方あいつがお前に通貨価値を悟らせない為に、態と高い服屋に連れてったんじゃねーか?」
「えっ? そうなの?」
早苗は驚いた。それは全く気が付かなかった。
「あいつにゃ野望ってか、目的がある。その為には手段は選ばねぇだろう。そんな野郎に、心も身体も預けちまうなんざ……お前迂闊過ぎるぜ」
「か、身体って! 何で知って……?!」
「あいつに聞いた」
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