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獲物は反撃を開始する
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「よし、行きますか!」
出発の夜。アル、アウインと共に玄関に立った早苗は、元気に声を上げる。この街から出た事の無い彼女は、実は意外と旅を楽しみにしていたのだ。
「……夜なのに元気だね」
「ぅ、うわあ!! マスター!!」
ズザザザーーッ!!!!
突然隣に来て話しかけて来たアルに、早苗は驚き後ずさる。それはもう、コントのように大袈裟に。その顔は真っ赤だ。
『つまり、あいつが好きだって事で良いのか?』
アウインの言葉が脳内に木霊する。彼に言われた事が丸二日経った今も、相当尾を引いていた。むしろ時間が経てば経つほど、どんどん頭を支配していく気がする。
そんな事無い!と何度も頭の中で否定するのに、アルを見るとどうしても意識してしまうのだ。
飲まされた薬に関する不安も拭えていないのに。
「……え、何、どうしたの?」
早苗の急変した態度に、アルは訳が分からず唖然としている。
「……な、何でもないっ」
眉を八の字にした早苗が首を振った。その頬は朱に染まり、瞳はうるうると潤んでいる。
「………………?」
「………………っ」
アルはポカンと口を開けた。そして手で口を押さえたアウインは、目元を赤くして視線を逸らした。
何だ、この空気は?とアルは不思議に思う。花でも飛んでいそうなふわふわした空気を払うように、彼は咳払いをする。
「んんっ、えー……じゃあ、行こうか」
「あー、うんっ、だな。行こう」
「そ、そうだね! 行こう行こう!」
宿や狩猟組合ハンターギルドの事はユーリカとフィートに任せ、3人は夜の森へと入って行った。
「ねえ、そう言えばさ、何で出発が夜中なの?」
不思議に思っていた早苗は疑問を投げ掛けてみる。夜は夜行性の凶暴な怪獣モンスター達がうようよしている為、大変危険だ。野宿生活の長かった早苗は身に染みている。
現に先ほどから何度か怪獣モンスターに遭遇して戦った。戦ったと言っても、アルが一瞬で焼いてしまったのだが。
「ん? ああ、一つには人目を避けるためだよ」
「人目を……?」
「後は……企業秘密……」
唇に人差し指を当て、ニヤリと笑うアル。早苗の顔にまた血液が集中する。
「そ、その顔止めれー!」
「はぁ?」
先ほどから何なのか。アルの頭上に疑問符がいくつも浮かぶ。真っ赤な顔で怒られるような何かをした覚えは無い。
しかもその早苗の表情は、何かこう……おかしな気分になる。正直、不快だった。
「……君こそ、その顔止めてくれる」
「どの顔だよ!」
一方、取り残されたアウインは、一人居たたまれない気持ちになっていた。そういう会話は二人きりの時にでもやって欲しい。
「……さて、君そろそろ目を瞑ってね。はい、手」
「え? 何で? 手?」
「何でも。俺が手を引くから、君は目を瞑ってて」
良く分からない早苗だが、差し出された手に向かいそろそろと自身の手を伸ばす。アルの手は冷たくも温かくも無く、サラリとしていた。
「ほら、目瞑って」
「あ、うんっ……」
目を瞑ると、手の感触がより一層際立って感じられる気がする。顔が熱い。心臓がドキドキと煩うるさい。
「………………」
何故か彼は止まったまま歩き出そうとしない。早苗が不思議に思った時、急にアウインが声を上げる。
「リフィー、俺が居る事忘れんなよ」
「……っ」
握ったアルの手がビクリと震えるのを感じた。
出発の夜。アル、アウインと共に玄関に立った早苗は、元気に声を上げる。この街から出た事の無い彼女は、実は意外と旅を楽しみにしていたのだ。
「……夜なのに元気だね」
「ぅ、うわあ!! マスター!!」
ズザザザーーッ!!!!
突然隣に来て話しかけて来たアルに、早苗は驚き後ずさる。それはもう、コントのように大袈裟に。その顔は真っ赤だ。
『つまり、あいつが好きだって事で良いのか?』
アウインの言葉が脳内に木霊する。彼に言われた事が丸二日経った今も、相当尾を引いていた。むしろ時間が経てば経つほど、どんどん頭を支配していく気がする。
そんな事無い!と何度も頭の中で否定するのに、アルを見るとどうしても意識してしまうのだ。
飲まされた薬に関する不安も拭えていないのに。
「……え、何、どうしたの?」
早苗の急変した態度に、アルは訳が分からず唖然としている。
「……な、何でもないっ」
眉を八の字にした早苗が首を振った。その頬は朱に染まり、瞳はうるうると潤んでいる。
「………………?」
「………………っ」
アルはポカンと口を開けた。そして手で口を押さえたアウインは、目元を赤くして視線を逸らした。
何だ、この空気は?とアルは不思議に思う。花でも飛んでいそうなふわふわした空気を払うように、彼は咳払いをする。
「んんっ、えー……じゃあ、行こうか」
「あー、うんっ、だな。行こう」
「そ、そうだね! 行こう行こう!」
宿や狩猟組合ハンターギルドの事はユーリカとフィートに任せ、3人は夜の森へと入って行った。
「ねえ、そう言えばさ、何で出発が夜中なの?」
不思議に思っていた早苗は疑問を投げ掛けてみる。夜は夜行性の凶暴な怪獣モンスター達がうようよしている為、大変危険だ。野宿生活の長かった早苗は身に染みている。
現に先ほどから何度か怪獣モンスターに遭遇して戦った。戦ったと言っても、アルが一瞬で焼いてしまったのだが。
「ん? ああ、一つには人目を避けるためだよ」
「人目を……?」
「後は……企業秘密……」
唇に人差し指を当て、ニヤリと笑うアル。早苗の顔にまた血液が集中する。
「そ、その顔止めれー!」
「はぁ?」
先ほどから何なのか。アルの頭上に疑問符がいくつも浮かぶ。真っ赤な顔で怒られるような何かをした覚えは無い。
しかもその早苗の表情は、何かこう……おかしな気分になる。正直、不快だった。
「……君こそ、その顔止めてくれる」
「どの顔だよ!」
一方、取り残されたアウインは、一人居たたまれない気持ちになっていた。そういう会話は二人きりの時にでもやって欲しい。
「……さて、君そろそろ目を瞑ってね。はい、手」
「え? 何で? 手?」
「何でも。俺が手を引くから、君は目を瞑ってて」
良く分からない早苗だが、差し出された手に向かいそろそろと自身の手を伸ばす。アルの手は冷たくも温かくも無く、サラリとしていた。
「ほら、目瞑って」
「あ、うんっ……」
目を瞑ると、手の感触がより一層際立って感じられる気がする。顔が熱い。心臓がドキドキと煩うるさい。
「………………」
何故か彼は止まったまま歩き出そうとしない。早苗が不思議に思った時、急にアウインが声を上げる。
「リフィー、俺が居る事忘れんなよ」
「……っ」
握ったアルの手がビクリと震えるのを感じた。
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