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獲物は反撃を開始する
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「……俺の名前はアルだ」
「へぇへぇ、アル。時と場合と場所考えろ」
「……言ってる意味が分からないな。時間が無い、急ぐよ」
グイッと早苗の手を引っ張り、アルが早足で歩き出す。容赦無いスピードに、ついて行くのがやっとだ。目を瞑ったままと言うのは、手を引かれていても結構怖い。
「何? 何の話? てか早いよ!」
「………………」
無言のアルに引き摺られるように歩き続ける。どれくらい歩いただろう。やっと彼の足が止まった。
開けた場所に出たのだろうか。日の出が近いのか、瞼の裏にほのかな光を感じる。
「黒いの、見える? 行くよ」
「ああ」
アルとアウインが短い会話を交わしたかと思うと、急に強い光が瞼に当たる。目を閉じているにも関わらず、眩しくて手で遮ってしまうくらいだ。
「君も行くよ。まだ目は開けないでね」
また手を引かれる。言われなくても眩し過ぎて目など開けられない。早苗は素直に彼に従った。
「はい、もう目を開けて良いよ」
言われて早苗は、そっと目を開ける。そこは森では無く草原が広がっていた。後ろを振り返るが、後ろにも草原が広がるばかりで、背の高い木々は見当たらない。
「…………え、ど、どゆこと??」
「あれは迷いの森だからね。不思議な力が働いてるのさ」
「迷いの森……? ロープレみたい……」
思わず呟いた早苗の言葉に、アウインが反応する。
「ろーぷれ? 何だ、それ?」
「いいから行くよ、ここから街まで少し歩くんだし」
アルが遮り、早苗の手を引いて歩き始めた。
「あ、あの、マスター! 手! 手はもう良いんじゃ……」
早苗が慌てて言うと、彼はピタッと足を止める。そして繋いだ手を持ち上げて少し見詰め、フイッと離した。
「あ……忘れてた。じゃあ、行こっか」
アウインはひたすら空気になる事に徹している。
気を取り直し、一行は歩き出す。街までは3時間ほどかかった。三時間は少しである。
辿り着いた街は、とても美しい街だった。建物は黄みがかった白色の外壁に、青緑の屋根。いくつもの並ぶ窓には緑色の扉が付いている。
街路樹や花壇も多く、色とりどりの花々が咲いていた。一階部分は商店になっているものも多く、軒先のテントも景観を損ねない緑や水色、白などの煩くない色合いで纏まっている。
その代わり、店先に並ぶ野菜や果物、魚や肉、花や菓子などが鮮やかに際立つ。
「うわ……綺麗な街……まだ朝なのに人も凄い……」
街並みの美しさも人々の賑わいも、アムータスの街とは比べ物にならない。
あの街しか見た事が無かった早苗は、こんな物なのだろうと、疑問にも思わなかったのだ。
この街を見てしまうと、アムータスがいかに薄汚れた暗い街なのかが良く分かる。
行き場の無い者の集まる街……アムータス。早苗の心境は複雑だった。
「……腹減ったな、朝飯にしようぜ」
「そうだね。サナエ、何が食べたい?」
確かに朝食の時間だ。寝ずに歩いて眠くはあるが、空腹も感じる。
だが何が食べたいと聞かれても、何があるのか分からない。
「えーと……」
早苗が答えられずに居ると、アルが助け船を出す。
「何があるか、ちょっと見て回ってみる? この辺りは海産物とチーズが有名だよ」
「チーズ! 大好きだ! じゃあ色々見てから決めようかなっ」
「あ、電話があった。ちょっと待って、取引先に連絡して来るから」
アルが戻ってから、三人で露店の多い商店街を回る。仕事は午後になったらしい。
アルやアウインにお勧めされた物を中心に、アムータスでは見られなかった菓子も購入した。
それを持ち込み可な店のテラス席に広げる。この店で注文したのは魚介のクリーム煮と飲み物だ。
「凄い、美味しそう!」
「良かったね」
「よし、食おうぜ!」
まず早苗は、ぶつ切りにした生魚が乗ったサラダに手を伸ばす。紙の箱に入っている。魚と野菜を一緒にフォークに刺し、ぱくりと口に入れた。
「へぇへぇ、アル。時と場合と場所考えろ」
「……言ってる意味が分からないな。時間が無い、急ぐよ」
グイッと早苗の手を引っ張り、アルが早足で歩き出す。容赦無いスピードに、ついて行くのがやっとだ。目を瞑ったままと言うのは、手を引かれていても結構怖い。
「何? 何の話? てか早いよ!」
「………………」
無言のアルに引き摺られるように歩き続ける。どれくらい歩いただろう。やっと彼の足が止まった。
開けた場所に出たのだろうか。日の出が近いのか、瞼の裏にほのかな光を感じる。
「黒いの、見える? 行くよ」
「ああ」
アルとアウインが短い会話を交わしたかと思うと、急に強い光が瞼に当たる。目を閉じているにも関わらず、眩しくて手で遮ってしまうくらいだ。
「君も行くよ。まだ目は開けないでね」
また手を引かれる。言われなくても眩し過ぎて目など開けられない。早苗は素直に彼に従った。
「はい、もう目を開けて良いよ」
言われて早苗は、そっと目を開ける。そこは森では無く草原が広がっていた。後ろを振り返るが、後ろにも草原が広がるばかりで、背の高い木々は見当たらない。
「…………え、ど、どゆこと??」
「あれは迷いの森だからね。不思議な力が働いてるのさ」
「迷いの森……? ロープレみたい……」
思わず呟いた早苗の言葉に、アウインが反応する。
「ろーぷれ? 何だ、それ?」
「いいから行くよ、ここから街まで少し歩くんだし」
アルが遮り、早苗の手を引いて歩き始めた。
「あ、あの、マスター! 手! 手はもう良いんじゃ……」
早苗が慌てて言うと、彼はピタッと足を止める。そして繋いだ手を持ち上げて少し見詰め、フイッと離した。
「あ……忘れてた。じゃあ、行こっか」
アウインはひたすら空気になる事に徹している。
気を取り直し、一行は歩き出す。街までは3時間ほどかかった。三時間は少しである。
辿り着いた街は、とても美しい街だった。建物は黄みがかった白色の外壁に、青緑の屋根。いくつもの並ぶ窓には緑色の扉が付いている。
街路樹や花壇も多く、色とりどりの花々が咲いていた。一階部分は商店になっているものも多く、軒先のテントも景観を損ねない緑や水色、白などの煩くない色合いで纏まっている。
その代わり、店先に並ぶ野菜や果物、魚や肉、花や菓子などが鮮やかに際立つ。
「うわ……綺麗な街……まだ朝なのに人も凄い……」
街並みの美しさも人々の賑わいも、アムータスの街とは比べ物にならない。
あの街しか見た事が無かった早苗は、こんな物なのだろうと、疑問にも思わなかったのだ。
この街を見てしまうと、アムータスがいかに薄汚れた暗い街なのかが良く分かる。
行き場の無い者の集まる街……アムータス。早苗の心境は複雑だった。
「……腹減ったな、朝飯にしようぜ」
「そうだね。サナエ、何が食べたい?」
確かに朝食の時間だ。寝ずに歩いて眠くはあるが、空腹も感じる。
だが何が食べたいと聞かれても、何があるのか分からない。
「えーと……」
早苗が答えられずに居ると、アルが助け船を出す。
「何があるか、ちょっと見て回ってみる? この辺りは海産物とチーズが有名だよ」
「チーズ! 大好きだ! じゃあ色々見てから決めようかなっ」
「あ、電話があった。ちょっと待って、取引先に連絡して来るから」
アルが戻ってから、三人で露店の多い商店街を回る。仕事は午後になったらしい。
アルやアウインにお勧めされた物を中心に、アムータスでは見られなかった菓子も購入した。
それを持ち込み可な店のテラス席に広げる。この店で注文したのは魚介のクリーム煮と飲み物だ。
「凄い、美味しそう!」
「良かったね」
「よし、食おうぜ!」
まず早苗は、ぶつ切りにした生魚が乗ったサラダに手を伸ばす。紙の箱に入っている。魚と野菜を一緒にフォークに刺し、ぱくりと口に入れた。
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