ハロウィンの魔法

るい

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ハロウィンの魔法

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今日は、年に一度のお祭り、ハロウィン。
世界中の人間も、世界中のおばけも、みんなワクワクした気持ちを抑えきれず、忙しなくハロウィンを迎えました。

街の子供たちのハロウィンは、おばけの仮装をして近所にお菓子を貰いに行きます。
大きなカゴを手にぶら下げて、お友達とニコニコしながら歩いています。

おばけたちのハロウィンは、街の人間たちを驚かせたり、街の子供たちに混ざってお菓子をもらいに行ったり、街のあらゆる所でイタズラをして困らせたり、目的は様々です。

「この先には、人間界が広がっています。人間界はとても楽しいところです。今日だけ、このハロウィンの日だけは、イタズラをしても、お菓子をもらいにいっても構いません。ですが、いいですか皆さん。くれぐれも、本物のおばけだとバレないようにしてくださいね。もしバレたら、大変なことになってしまいますよ。」

警官姿でふわふわ浮いている幽霊たちが、大きな門の前に立って注意をします。
ハロウィンの夜になると、おばけたちは人間界に繋がる大きな門の前に集まって、開くのを待ちます。
大きなカマと黒いマントを来たガイコツや、人間の子供の姿に仮装した1つ目のおばけ、宙を自由に飛びまわる虹色のコウモリなど、色んなおばけが集まってきました。

そんなおばけの列から少し離れたところに、大きな大きなトラネコのおばけがいました。
しっぽが3本もあり、車よりも大きなトラネコのおばけも、ワクワクした気持ちが隠せていません。

このトラネコの名前は、パロ。
パロは、今年初めてハロウィンに参加します。
パロは元々人間に飼われていた小さなトラネコでしたが、1年前に車に轢かれて死んでしまいました。
パロが目を覚ましたときには、大きな大きなトラネコのおばけに生まれ変わっていたのです。

「よーし、仮装の準備はOK。あとは門が開くのを待つだけ…」

パロが独り言を言っていると、ハロウィンの時間がやって来ました。
人間界に続く門が開かれると、おばけたちは続々ともんをくぐりぬけました。

「いっちばーん!」

死神の格好をしたガイコツが最初に門を通ります。

「待ってましたー!」

1つ目のおばけも、門を通ります。

「沢山イタズラするぞー!」

虹色のコウモリも、バタバタ飛びながら門をくぐりました。

「よし!僕も行くぞ!」

パロは1番最後に門を通り、人間界にやってきました。


パロが着いた頃には、街は大変賑わっていました。
早速イタズラし放題なおばけや、すでにカゴいっぱいにお菓子を貰っているおばけ。それぞれ楽しんでいるようでした。
街の子供たちも上手に仮装をしていて、子供たちなのか、それとも本物のおばけなのか、区別に悩むほどでした。

しかし、パロの目的は、お菓子を貰うことでも、イタズラをすることでもありませんでした。
パロの目的はただ一つ。大好きだった飼い主の男の子に会いに行くこと。
パロは早速、全身を白い布で隠して仮装すると、男の子を探しに街を歩きました。


コンコンコン。

「この子を知りませんか?」

パロは紙に書いた男の子の似顔絵を首に掲げ、色んな家を訪ねて聞いて回りました。

「うーん、知らないねぇ」

真っ白髪のおじいさんはそう言って、パロにお菓子をくれました。

「ところで、君とっても大きな体だね。どこの子だい?」

おじいさんはパロの大きな体をジロジロ見ながら言いました。

「まずい…本物のおばけだってバレたら大変なことに…」

パロはおじいさんから貰ったお菓子が飛んでいくほどのスピードで走り出し、その場から逃げました。

「おやおや…」

おじいさんは、パロの後ろ姿を不思議そうにみながら、落ちたお菓子を拾いました。



「この子を知りませんか~?」

パロはまた、男の子探しを再開しました。
街を見渡しながらのそのそ歩いていると、5人の子供たちの集団がパロに近づいてきました。

「ねえねえ、あなただあれ?」

「それ、なんの仮装?」

「大きな体!車よりも大きいよ!」

子供たちは、パロに沢山話しかけました。
車よりも大きな体のパロが街にいると、やっぱり目立ってしまいました。

「あなたはお菓子貰えた?」

「う、う~ん。まだかな…」

子供たちはパロに興味津々。パロは逃げるタイミングを失ってしまいました。

「そうなのね。じゃあ、よかったら私たちと一緒にお菓子貰いに行かない?」

「えっ」

このままだとバレてしまう。パロはだんだん焦ってきて、冷たい汗が出てきました。
すると、一人の男の子がパロの仮装を引っ張りました。

「ねえ、お顔見せてよ!」

「え!ちょっと!やめてよ!」

男の子はパロが被っている白い布を引っ張りました。

「みたいみたい!」

「僕も見たい!見せて!」

子供たちは次々にパロの頭へ手を伸ばし、一斉に引っ張り始めました。

「だめだってば!離して!」

「せーの、それ!」

パロは必死に抑えましたが、5人の子供たちが同時に引っ張ると、白い布はヒラヒラと宙を舞いました。

「キャーー!!化け物だー!!」

白い布に隠されていたパロの姿があらわになると、子供たちは一斉に叫び、走って逃げていきました。

「どうしよう…」

パロは顔を見られてしまったので、急いで帰らなくてはなりません。

すると、さっきの子供たちが戻ってきました。
後ろには、大勢の人間たちを連れて。


「本当だ!化け物がいるぞ!」

「キャー!怖いー!」

大人も子供も、パロの姿を見て叫びました。
パロはその場から走って逃げだし、ハロウィンの街に隠れました。

「あ!逃げたぞ!追えー!」

人間たちもパロの後を追って、走りました。


「ここまで来れば大丈夫かな…」

パロは街の少し静かな路地裏に身を隠しました。
パロが地面に座りため息をつくと、白い息が漏れました。

「本物のお化けだってバレちゃった。急いでお化けの国に帰らなくちゃ。もう、男の子に会いに行けないなぁ…」

パロはもう一度溜息をつき、静かに泣きました。

すると、パロの後ろで足音が聞こえました。
ハッとして振り返ると、そこにはパロの飼い主だった男の子がいました。

「お前、もしかしてパロなのか?」

男の子は、車よりも大きくなったパロを怖がることなく、パロに近づいていきます。

「ワン!ワン!」

パロは大きな声で返事をするように鳴きました。

「パロだ!やっぱりパロだ!パロ!」

男の子はパロに向かって飛びつき、そして強く抱きつきました。

「パロ!会いたかったよ!」

「ワンワン!」

パロと男の子は、抱きつきながら泣きました。
パロがどんな姿になっても、男の子はすぐにパロだとわかりました。

その時、警察官の仮装をした幽霊たちが、パロを連れ戻しにやって来ました。
幽霊たちはパロを囲み、そのままパロと共にふわふわと浮かび、おばけの国に帰っていきました。

「ワン!ワンワン!」

パロは男の子に気持ちを伝えようと、大きな声で鳴きました。
男の子はパロをじっと見つめ、最後は大きく手を振ってお別れをしました。

「パロ、会いに来てくれてありがとう。また、来年。」

男の子はパロが見えなくなると、そっと手をおろし、家へと帰っていきました。

ハロウィンが終わると、街の子供待ちも、おばけたちも、みんな家へ帰っていきます。
人間界への門が閉まると、また1年経つまで開けられないように鍵が掛けられました。
そうして、おばけたちのハロウィンは幕を閉じました。
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