ノア、月へ行く。

るい

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ノア、月へ行く

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ある町に、平凡な男の子が居ました。
名前は、ノア。
青いニット帽と、首に巻かれたマフラーが、ノアのトレードマーク。
毎日出かける前に、ちゃんと身につけてから家を出ます。

ノアには、不思議なお友達がいました。
羊の毛のようなもこもこを全身にまとい、その隙間から、キラキラした目だけを覗かせている、この子名前は、メープル。
メープルはとても優しい男の子で、ノアの良き友人でした。
メープルの苦手なことは、水がかかること。

ノアには、双子の弟がいます。
名前は、ニア。顔も体もノアにそっくり。
でも、性格は正反対でした。
ノアは優しい男の子だけれど、ニアはクールな男の子。
でも、ヒーローに憧れているんだって。
ニアのトレードマークは、背中に大きくかぶさった赤いマント。


平凡な男の子のノアは、そんなお友達と、毎日毎日楽しく過ごしていました。

ノアには、ある夢がありました。それは、月へいくこと。

「いつか必ず、あの大きな月に乗っかって、この町に手を振るんだ。」

ノアは、月を見上げる度に、こう言っていました。

それでも、ノアには月へ行く手段がありませんでした。
ノアは平凡な家庭で育ったので、月に行くお金なんてありませんし、自分のロケットなんて持っていません。

ノアは屋根の上で、月を見つめることしか出来ませんでした。

そんなある日、友達のメープルが、あるものを持って、ノアの元へやってきました。
メープルの手には、細い紐がいくつも結ばれており、その先にはぷかぷか浮かぶカラフルな風船がありました。

「ノア!これで月へ行こう!」

メープルはキラキラした目をノアに向けて、真剣に話しました。

「風船で?風船で、どうやって月まで行くのさ」

「このぷかぷか浮かぶ風船を見て、何も思いつかないかい?」

「全くだよ。君が何を言いたいのかさっぱり…」

「君がこの風船を持つんだよ。いくつも、いくつも、両手で持てないくらい抱えて!体にも巻きつけよう。そうしたらどうなる?」

「僕の体が浮いて、月に行ける!」

「そう!さっそくやろう!」


2人は町中のありったけの風船をかきあつめて、空き地へと向かいました。

「これだけあればきっと上手くいくよ。さあ、さっそくやってみよう」

ノアとメープルは、丁寧に1つずつ巻き付けました。
すると、ノアの体がだんだん軽くなり、宙に浮き始めました。

「やった!成功だよ!ノア!」

いくつもの風船を抱え、ぷかぷか空へ向かうノアに向かって、大きく手を振るメープル。
ノアは、だんだん小さくなるメープルに向かって手を振り返します。

「すごいや。本当に月まで行けるぞ!」

ノアは、あっという間に家の屋根を超え、周りは青く染まりました。

するとその時、1羽のカラスがノアに近づきました。

「なんだお前、空を飛ぶなんて生意気だな」

カラスはそう言うと、ノアの持つ風船を全て割ってしまいました。

ノアは逆さまに落っこち、大きな木の枝に引っかかってしまいました。


次の日、今度は双子の弟のニアがあるものを持ってきました。

「風船なんかじゃ月へは行けないよ。これを使わなきゃ」

ニアが持ってきたのは、大きな大きなロケット花火。
ノアと同じくらいの大きさです。

「これなら勢いも問題なし。あっという間に月へひとっ飛びだよ。」

「ロケット花火?それでどうやって月へ行くのさ」

「いいか兄ちゃん。大事なのはスピードだよ。風船なんかでぷかぷか浮かんでちゃだめだ。このロケット花火なら、瞬きしている間に月へ着く事ができるよ」



ノアとニアは、早速空き地へと向かいました。

「さあ行くよ。」

ノアは自分と同じ大きさのロケット花火を背負い、全身にぐっと力を入れました。

「火をつけるよ」

そう言うと、ニアはポケットからマッチを取りだし、ジュッと火をつけると、それをロケット花火に移しました。
ロケットの導火線はみるみる小さくなっていき、ノアはあっという間に空高く飛びました。

「わあすごい!これなら月へ行けるぞ!」

と思ったのもつかの間、ロケット花火はゆるゆると地面に向かっていき、ノアは頭から追突しました。


またまた次の日、散歩をしていたノアはあるものを拾いました。

「宇宙旅行チケット!?」

その紙には、月で遊ぶ子供たちの絵も書かれていました。
ノアはその紙切れをギュッと手に握りしめ、家に帰りました。
早速ニアとメープルに見せました。

「ノア、これはだめだよ。もう使われてる」

ニアの言う通り、このチケットは前の持ち主によって使われていました。
ノアは、使用済みのチケットを拾ってきただけなのでした。
ニアとメープルは、紙切れをパタパタと仰ぎ、ゴミ箱へ捨ててしまいました。
宇宙旅行チケットと書かれたその紙切れは、なんの価値もありませんでした。


それからも3人は、色々なことを試しました。
大きなフーセンガムを膨らませて飛んでみたり、トランポリンの上で月に届くまで跳ねてみたり、屋根の上にハシゴを立てて登ってみたり。
思いつく限りやって見ますが、何をやっても月へは行けません。

それでもノアは、決して諦めませんでした。


ある日の夜中、ノアはふと目を覚ましました。
なんだか眠れずにいると、部屋の窓を叩く音がしました。
カーテンをあけ外を覗いてみると、底には真っ白な布を被った、絵に書いたようなおばけがいました。

「僕が月へ連れて行ってあげるよ」

おばけはそう言うと、ノアの手を窓から引っ張り出し、2人でゆらゆらと夜の町を飛びました。
2人はどんどん高く飛んで行きます。
大きな町は段々と小さくなっていき、大きな月はさらに大きくなっていきます。

「君はどうしてそんなに月へ行きたいんだい?」

「どうしてって、月は綺麗だからさ。月は僕にとって、憧れなんだ。」

「ふ~ん、行けるといいね」

白い布のおばけはそう言うと、大きな大きな月に向かって、ノアの手を離しました。

「そのままゆっくりと向かうといいよ。必ず月にたどり着けるよ」

おばけはそう言うと、サーっと暗闇に姿を隠しました。

ノアは、ゆっくり、ゆっくりと、月へ近づいていきました。


やがて朝になると、ノアはベッドの上で目を覚ましました。

「なんだ…夢か…」

ノアは眠い目をこすりながらベッドを抜け出し、階段を下りていきました。

ノアのベッドの上には、昨晩のおばけがキャッキャッと楽しそうに跳ねている姿がありました。

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