僕とケンが、入れ替わっちゃった

るい

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僕とケンが、入れ替わっちゃった

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「は~あ。夏休み終わっちゃうな~。」

8月のカレンダーを見つめ、しょうたくんは呟きました。

「しょうた、宿題は終わったの?」

お母さんが、後ろから声をかけます。

「わかってるよ~。あと少しだけだもん」

夏休みも、残りあと1週間。
しょうたくんは、勉強机とにらめっこ。

「は~あ。夏休み伸びないかな~」

そんなことばかり考えて、宿題は進みません。


ふと窓の外を見ると、庭には元気に走り回るケンの姿が見えます。
赤いボールを、あっちへこっちへ投げ回します。

「ケンはいいなぁ。毎日呑気に遊んでて。たまにはさ、代わりに学校に行って欲しいよ」

しょうたくんは不満を漏らしつつも、宿題をするしかありませんでした。

「…ん?そうか!学校がめんどくさかったら、ケンに行ってもらえばいいんだ!」


その日の夜、しょうたくんは夜空を見上げ、お願いごとをしました。


「神様、お願いします。まだ夏休みを終わらせたくありません。なので、僕とペットのケンを入れ替えてください。どうか、お願いします。」

しょうたくんは、両手をしっかり組み、一生懸命願いました。


次の日の朝。

「クンクン。ん?なんだこの美味しそうな匂い…。」

しょうたくんが目を覚ますと、目の前にはお母さんが入れたドッグフードがありました。

「どうしてこんなところに?」

しょうたくんが腰をあげると、何故か上手く立てません。
辺りを見渡すと、しょうたくんは外で寝ていました。

「え!どうしてどうして!」

しょうたくんが叫ぶと、お母さんが窓から顔をのぞかせました。

「ケン、そんなに吠えてどうしたの?お散歩かしら?」

「ケン?なにいってんのお母さん!僕だよ!しょうただよ!」


しょうたくんが必死に叫んでも、お母さんには伝わりません。

「お散歩は後で行こうね」

お母さんはそう言って、窓を閉めてしまいました。
しょうたくんは窓に駆け寄りました。
そして、窓に移る自分を見て、ひっくり返ってしまいました。
そこにはしょうたくんではなく、犬のケンが映っていたのです。

「な、な、なんだこれー!!」

しょうたくんは大慌て。
庭をばたばた駆け回ります。


「なんでなんで!なんでケンになってるの!?」

しょうたくんは、昨日の夜のことをおもいだしました。

「そうだ!昨日の夜、お願いごとしたから…じゃあもしかしたら!」

しょうたくんは、慌てて家の中へと入りました。
しょうたくんが自分の部屋に入ると、ベッドには布団で丸まっているケしょうたくんの姿がありました。
ケンが走り回ったのか、部屋の中は散らかっていて、あちこちがぐちゃぐちゃでした。

「こら!起きろ!」

しょうたくんは叫びました。
すると、お母さんが部屋にやって来ました。

「こら!ケン!家の中に入っちゃだめって言ってるでしょ!部屋も廊下もこんなに汚して!早く出ていきなさい!」


お母さんはケン(しょうたくん)を叱りつけ、家の外へと放り出してしまいました。


「そんな~...僕はしょうたなのに...」


しょうたくんは仕方なく、ケンが起きるまで、ケンの小屋で大人しくすることにしました。

しばらくすると、ケンが起きてきました。
ケンはしょうたくんに近づくと、ニヤリと笑いました。

「ありがとう、しょうたくん。しょうたくんのおかげで、僕は人間になれたよ。僕はしょうたくんになりたかったんだ。僕は自由になったんだ!」

ケンはそう言うと、元気に遊びに行ってしまいました。



外が暗くなると、ケンはやっと帰ってきました。

「ただいまー!」

しょうたくんが窓から中を覗くと、お母さん、お父さん、そしてケンの3人が、食卓を囲んで笑っています。
しょうたくんは3人を見つめ、1人寂しく眠りにつきました。


そしてそのまま時間が経ち、夏休みが終わってしまいました。


「いってきまーす!」

ケンは、今日も元気に家を出ました。
しょうたくんは変わらず小屋でごろごろしています。

「夏休み終わったな~。でも、僕は学校行かなくていいし、これはこれでアリかも。」

しょうたくんは散歩も行かず、朝から晩までごろごろして過ごしました。


でも、そんな生活にも段々と飽きてきました。
美味しいご飯が食べたい、友達と遊びたい、そんな気持ちが強くなってきました。

1週間たったある日、しょうたくんはケンに頼みました。

「ケン、そろそろ元に戻ろうよ。僕の体を返してくれ」

ケンはしょうたくんを見て、ニヤリと笑いました。

「返すわけないじゃないか。だって、君が変わりたいって言ったんだ。この体は、もう僕のものさ」

ケンはそういうと、しょうたくんを持ち上げて、庭へ放り出しました。

「ほら。僕はもうこんなことも出来るんだ。今度は君が外で暮らす番。暑い日も、寒い日も、その小屋が君の家だよ」

そう言って、ケンくんは扉を閉めてしまいました。


窓から家の中を覗くと、お母さんとお父さんは、ケンの頭を撫でていました。

「お母さん…お父さん...」

ケンは窓に張り付くしょうたくんを見て、ニヤリと笑いました。
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