【怖い絵本】いるよ

るい

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そこにいるよ

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「さあ、ここが新しいお家だよ」

お父さんは、車で寝ているりっくんを起こして、そっと抱っこした。
まだ寝ぼけていたりっくんは、新しいお家をみた途端、目を覚ました。

「とっても広いね」

りっくんは抱っこからおりると、新しいお家に走っていった。
中は、やっぱり広かった。
太くて立派な木の柱があちこちにそびえ立ち、家を支えている。
廊下の床はぎしぎしと言うけれど、それも面白くて楽しい。

お家の中を冒険していると、ひとつだけ、ちょっと怖い場所を見つけた。
長い長い廊下の先にあるのは、トイレだった。
窓はあるけれど、外の木が邪魔して薄暗い。
外は明るいのに、ここは薄暗くて不気味。

りっくんがぼーっと眺めていると、トイレの扉が開いた。
そーっと開く扉の隙間から、知らないおじさんが顔を覗かせた。

「こ、こんにちは…」

りっくんは、びっくりしたけど、ちゃんと挨拶した。
でもおじさんは、ただじーっとりっくんを見つめていた。


「りっくん、お昼ご飯にしよう」

お父さんの声が聞こえた。
りっくんは冒険を中断して、大好きなお父さんのチャーハンを食べた。


「ねえお父さん、トイレにいるおじさんはだあれ?」

りっくんはお父さんに聞いてみた。

お父さんも、お母さんも、びっくりしていた。

「古い方のトイレに行ったのかい?」

「うん、このお家、トイレが2つあっていいね!」

「りっくん、もうあそこには行っちゃダメだよ。それと、そのおじさんには絶対に仲良くしちゃいけないよ。分かったね」

「え?どうして?」

「どうしてもだ。お父さんと約束だよ」

りっくんが何を聞いても、お父さんは教えてくれなかった。

「いいから。」

お父さんは、それしか言わなかった。


でも、その日からおじさんはりっくんに着いてきた。
お父さんとお母さんといる時は、おじさんは出てこない。
りっくんが一人でいる時は、必ず着いてくる。

一人で遊んでいる時や、トイレに行く時や、廊下を歩いてる時。
でも、おじさんは近くには寄ってこない。
いつも遠くからりっくんを見つめているだけ。

りっくんは、すごく怖かった。
だっておじさんは、いつも怒った顔をしているから…。

お父さんとお母さんは、怖がるりっくんを見て、できるだけそばに居てくれるようになった。
2人がそばにいてくれたら、りっくんは怖くなかった。
それからしばらくは、おじさんは出てこなかった。
日が経つにつれて、りっくんは段々とおじさんのことを忘れていった。


ある夜、りっくんは一人で寝ていた。
すると、廊下からギシギシと誰かが歩く音が聞こえ、りっくんは起きてしまった。

「お父さん?お母さん?」

りっくんは廊下にいる誰かに向かって声をかけたが、返事はなかった。

ギシ……ギシ……

足音は、りっくんの部屋の前でピタッと止まった。
りっくんが扉を見つめていると、ゆっくりと開いた。

開いた扉の隙間から、おじさんが顔を覗かせた。


りっくんはの叫び声を聞いて、お父さんとお母さんは飛び起きた。
真っ暗な部屋で1人泣きじゃくるりっくんを見て、お母さんがそっと抱きしめた。


「もう大丈夫よ、怖い夢でも見たのかしら」

お母さんは優しく頭を撫でる。

「違うよ、怖いおじさんがいるんだ」

「おじさん?」

お父さんはむっとした顔をした。

「りっくん、そのおじさんはどこへ行ったんだい?」

お父さんがそう聞くと、りっくんは指を指した。


「そこにいるよ。」
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