何度生まれ変わっても

るいのいろ

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何度生まれ変わっても。

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ある王子様の元に、1匹のねこが生まれた。
大きなお城に住む、平和な国の王子様。
王子様はわがままで、自分勝手で、いたずら好き。
そんな王子様は、自分より小さなねこをいじめていた。

水が嫌いな猫をプールに落としたり、狭くてくらい箱に猫を詰めたり、餌に苦い薬を混ぜて食べられなくしたりして、ねこの苦しむ姿を見てゲラゲラ笑っていた。
ねこはそんな王子様が嫌いで、懐かなかった。

ある時、王子様は実験をした。

「この高さからこのねこを落としたら、どうなるんだろう」

王子様はお城のてっぺんに登った時、そう思った。
王子様はねこと目が合うと、逃げようとするねこのしっぽをグッと掴んで、窓の外へ放り投げた。
ねこはそのまま真っ逆さまに落ちて、頭を打って死んだ。
ねこが最後に見たのは、王子様がお城のてっぺんから顔をのぞかせ、ゲラゲラ笑う姿でした。


またある時、ねこは釣りが大好きな釣り人夫婦の元に生まれた。
釣りが大好きなご主人は、釣った魚をねこに分けてくれた。
ある晴れた日も、今日は沢山釣って来ると言って、ご主人は釣りへ出かけた。
ねこは採れたての魚が食べたいと思い、ご主人について行った。

釣り場に着くと、ご主人が荷物を漁って騒ぎ始めた。
どうやら、餌を忘れてきたらしい。
餌なしではいい魚は釣れないし、遠くまで来てしまったので取りに戻っている時間もない。
釣り人は悩んだ末、ねこを見つめた。
すると、逃げようとするねこのしっぽをグッと掴んで、釣り針に括りつけた。
釣り人は海に向かってねこを放り投げると、ねこはそのまま溺れ死んでしまった。
ねこが最後に見たのは、周りに集まってくる魚たちの姿だった。


またまたある時、ねこは優しいおばあさんとその孫の元に生まれた。
おばあさんと孫は、ねこを家族として迎え入れ、大事に育ててくれた。
しかしある時、2人の家に泥棒がやってきた。

「静かにするんだ。騒いだらみんな殺してしまうぞ!」

おばあさんは泣き叫ぶ孫を抱き、ねこはおばあさんの後ろに隠れた。

「おい!子供を黙らせろ!」

泥棒が怒り出したその時、おばあさんは孫の腕とねこのしっぽをグッと掴んで、後ろにある裏口へ放り投げた。
孫は上手く外へ逃げ出られた。しかしねこは、すぐ側にあった暖炉の中へ投げられてしまい、そのまま焼き死んでしまった。
ねこが最後に聞いたのは、おばあさんの悲鳴と泥棒の笑い声だった。🦄


さらにある時、ねこは自然豊かな森の中に生まれた。
ねこは仲間たちに囲まれ、楽しく過ごした。
ある時、森のねこたちによる集会が開かれた。
ねこも仲間に誘われ集会に参加してみると、そこで一際目立っていた美しい白猫に一目惚れした。
ねこは必死にアピールしたが、白猫は振り向かなかった。
大きな魚をあげても、面白い話をしても、ずっとそばにいても、白猫は決して振り向かなかった。
ある時ねこは、白猫が他のオス猫と結ばれたことを知った。
ねこは嫉妬に苛まれ、白猫とオス猫を崖から落とそうと試みた。
ねこは前足と後ろ足にグッと力を込め、崖の上で肩を並べて眠る2匹に向かって走り出した。
しかし、あと少しのところでオス猫は白猫を抱えて避け、ねこはそのまま崖から落ちてしまった。
ねこが最後に見たのは、崖の上から自分を眺める2匹の笑った顔だった。


ねこは、何度も死んだ。
ねこは死ぬと、暗闇の世界に連れていかれる。
暗闇の世界には何も無く、ただ暗闇が広がるだけ。
ねこはその世界で、次の世界を待つ。


次にねこが生まれたのは、広場のある公園。
朝は穏やかな空気が静かに流れ、夕方は子供たちが集まり賑わう、ごくごく普通の公園。ねこはこの公園が好きになった。
この公園では、ねこは死ぬことは無かった。
何年も、何年も、この公園に居続けた。
夏は蝉の声を聞き、秋は新たな出会いをして、ねこらしい生活を送った。
ねこは幸せそうに目を瞑ると、覚めない眠りについた。
その後、ねこは生まれ変わることはなかった。
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