おやすみ、ねこちゃん

るいのいろ

文字の大きさ
上 下
1 / 1

拾われた子猫

しおりを挟む
僕が生まれた時、ママはどんな気持ちだった?


僕が生まれた時、どんな天気だった?


僕が生まれた時、みんなはなんて言った?




僕のママは、僕が生まれてすぐに死んじゃった。

子猫だった僕達兄弟のために暖かい寝床を探していたらしい。

毎日毎日歩き続けて、やっと見つけた時、車に跳ねられちゃったんだって。

その日から、何日も、何日も待ったけど、ママは帰ってこなかった。

兄や弟たちは、パパが連れていった。
僕はママ似で、パパとは毛の色が違ったから、置いてかれた。

まだ目の見えなかった僕は、ご飯も食べれないからそのまま死んじゃうと思った。

でも、優しいおじいちゃんが僕を抱きかかえ、ミルクをくれた。

おじいちゃんは暖かくて、とっても優しい匂いがした。

僕は、その時飲んだミルクの味が忘れられない。




僕の目が見えるようになると、おじいちゃんは色んなとこに連れていってくれた。

いっぱいはしゃぐ僕に、おじいちゃんは相当手を焼いたと思う。迷惑かけてごめんね、おじいちゃん。


少し大きくなった僕は、ご飯もいっぱい食べるようになった。
おじいちゃんは、

「いっぱいお食べ。」

そう言って、毎日毎日ご飯をくれた。
おじいちゃんは、僕がご飯を食べていると、ニコニコ笑って頭を撫でてくれた。おじいちゃんの手は大きくて、ゴツゴツしてて、とても暖かかった。


さらに大きくなると、おじいちゃんは僕と一緒にいっぱいお昼寝をしてくれた。

日向ぼっこをしていると、おじいちゃんもそばに来て、僕を撫でてくれた。

おじいちゃんの膝に乗ると、おじいちゃんは優しく笑って、僕を撫でてくれた。

僕はおじいちゃんに撫でられるのが大好きだ。





おじいちゃんと一緒に暮らしてしばらく経ったある日。

外には真っ白い雪が降って、僕は見たことも無いものに大興奮して、慌てて外に出た。

おじいちゃんはまだ寝ていた。


白い地面をふむと、足の裏がひんやりしてすっごく冷たかった。

外はすっごく寒くて、すぐにこたつの中が恋しくなった。


もう少し、もう少しと先に進んで歩いていたら、僕の名前を呼ぶおじいちゃんの声が聞こえた。

おじいちゃんは珍しく焦った声で、

「だめだろ。勝手に出ていっちゃ。今日は日が短いしとても寒くなるんだよ。さあ、帰ろう」


僕にそう言った。僕はおじいちゃんに抱えられ、家に帰ってこたつで2人でぬくぬくとした。



また時が経って、暑い暑い夏が来た。


僕は夏が嫌いだ。今日も暑さでぐったりして動けそうにない。

「ほれ、中においで。そこは暑いじゃろ」


おじいちゃんは僕を抱え、涼しい涼しいソファに寝かせてくれた。




夏が終わり、また冬が来た。


いつもは早起きなおじいちゃんだけど、今日はまだ寝てるみたい。

おじいちゃんが起きるまで、ちょっとお散歩にでも行こう。

今日はすごくいい天気だ。おじいちゃんとお散歩したかったな~。

ん?あんなところに子猫が…

大丈夫かな…?

あっ…

あ!危ない!!





「ほれ、ここにお座り」

あっ!おじいちゃん!おはよう!

「はっは。元気じゃの~」

おじいちゃん!今日はいい天気だよ~お散歩いこうよ~

「よしよし、お前はかわいいなあ」

おじいちゃん、くすぐったいよ

「…お前もこっちに来てしまったか。お互い歳だったもんのう」

「お前が来て15年。わしは毎日毎日幸せじゃった。ありがとうな」

おじいちゃん、今日はいっぱいよしよししてくれるね

「これからはずっと一緒じゃ。だから、今はおやすみ」

あれ?おじいちゃん寝ちゃうの?じゃあ僕もお昼寝しよ~っと











「ママ~、あそこに猫ちゃんが死んでるよ」

「あらほんとだ。いやあね~かわいそうに」

「埋めてあげようよ」

「だめよ。菌がついてるかもしれないから、触っちゃダメ」

「え~、そっか~。猫ちゃん、おやすみ」






しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...