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第3話 約束
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結局、何時間待っても奏は来なかった。
あのメッセージ以降何回電話をかけても繋がらず、メッセージを送っても既読さえつかなかった。
最初の方は何で来ないんだ……とイライラしていたが、流石にここまでくると何かあったのではないかと心配だった。
(ところで…今何時だろう)
手元にあるスマートフォンを開くと、23時14分と表示されていた。
「もうこんな時間か…。そろそろ帰らないと母さんが心配するな…」
その前に奏の家に向かおうと思ったが、彼女の家に行ったのは彼女の母親に挨拶をしに行った1度きり。そのため、道に自信が無かった。おまけにこんな夜遅くだ。彼女のご両親にも迷惑だろう。
僕は彼女の家を訪ねることを諦め、おとなしく帰ることにした。
また明日奏に直接訊けばいい、と呑気に考えながら僕は帰路へとついたのだった。
翌朝、僕はいつもより早く起きた。やっぱり昨日の事が気がかりだった。
もし本当に奏に何かあったら、と思うと気が気じゃなかったし、もしかしたら何か嫌われるようなことをしただろうか、と色々考えていたらあまり眠れなかった。
まだ完全に覚めきっていない目を覚ますためにコーヒーを飲もうと、僕は棚からマグカップを取り出す。すると、突然母さんが険しい表情で僕に声をかけてきた。
「ねぇ……冬真」
「ん、なに?どうしたの母さん」
(僕…なんかしたか…?)
「冬真の彼女の名前って星宮奏ちゃんよね」
母さんからの予想外の言葉に僕は思わず首を傾ける。
「うん、そうだけど…それがどうかしたのか?」
すると僕がそう言った途端、母さんの顔が一気に青ざめた。母さんのそのあまりに不可思議な行動に僕は少し心配になった。
「ねぇ母さん。どうしたの?今日、なんかおかしいよ?」
僕は母さんを落ち着かせようと近づく。すると、
「冬真、ニュース…テレビ見て」
「…え、ちょ、なに、母さん!」
「いいから早く…!!」
僕は母さんに促されるままテレビの方へと向かう。
そしてテレビに映る画面を見た瞬間、思わず僕は手に持っていたマグカップを落とした。
「……………え?」
どこかでマグカップが割れる音がした。
「なに、これ………」
『25日午後7時ごろ、○○市✕✕区の道路で乗用車と一人の女性が衝突。女性は病院へ搬送されましたがその後死亡を確認。亡くなったのは○✕高等学校に通う星宮奏さん(17)で星宮さんは友人との待ち合わせ場所に向かう途中、事故にあったとみられています。警察は乗用車を運転していた男に話を__』
「……………………は?嘘…だろ…?え、どうゆうことだよ……」
目の当たりにした事実が理解出来なかった。
「奏が死んだ?嘘に決まってる。だって昨日まで……」
「冬真…、受け入れ難いかもしれないけど…、これは本当なのよ。辛いと思う。苦しいと思う。でもね、受け入れるしかないの。それが、残された貴方が今できる事なのよ」
母さんのその真剣な表情を見て、改めてこれが現実であり、本当だと言う事を受け入れることが出来た。でも…、やっぱり、全ての現実を受け入れることは出来なかった。
(だって、昨日まで奏は元気だったじゃないか。昨日、まで……)
「ねぇ……なん……で…」
「え?」
「昨日…まで、一緒に、いた…ん、だよ…。一緒に、出掛け…よう、って、約束、したんだ…」
思わず目から涙が溢れる。
涙が止まらず、うまく呂律が回らない。
信じられなかった。信じたくなかった。昨日まで一緒にいたのに。約束をしたのに。当たり前のように隣りにいた。なのに……
どうして奏は死んだのか。
(奏が…、奏が出かけたのは僕のせい。でもそれは二人で決めたこと。でも…、でも…あの時間に奏があそこにいたのは僕のせい。もし僕が時間を変えなかったら……)
「奏は………、死ななかった」
そう呟いた途端、僕を襲ったのは残酷な現実だった。
吐き気がした。目眩がした。意識が朦朧とした。視界が眩んでうまく立てない。自分がちゃんと立っているのかも怪しい。
「冬真、大丈夫、大丈夫だから…。一旦落ち着こう。ね?」
そう言って母さんは僕を抱きしめた。僕を落ち着かせようとする行動だとわかったいたけど、落ち着けなかった。
「僕のせいで……僕の、せいで……!奏は…!……僕との約束が…奏を…、殺したんだ」
罪悪感や後悔、奏との記憶と色んな感情が入り混じって、僕の頭の中はぐちゃぐちゃだった。
ただ泣くことしか出来なくて、どうしようもない虚無感に襲われた僕の中で何かが壊れる音がした。
あのメッセージ以降何回電話をかけても繋がらず、メッセージを送っても既読さえつかなかった。
最初の方は何で来ないんだ……とイライラしていたが、流石にここまでくると何かあったのではないかと心配だった。
(ところで…今何時だろう)
手元にあるスマートフォンを開くと、23時14分と表示されていた。
「もうこんな時間か…。そろそろ帰らないと母さんが心配するな…」
その前に奏の家に向かおうと思ったが、彼女の家に行ったのは彼女の母親に挨拶をしに行った1度きり。そのため、道に自信が無かった。おまけにこんな夜遅くだ。彼女のご両親にも迷惑だろう。
僕は彼女の家を訪ねることを諦め、おとなしく帰ることにした。
また明日奏に直接訊けばいい、と呑気に考えながら僕は帰路へとついたのだった。
翌朝、僕はいつもより早く起きた。やっぱり昨日の事が気がかりだった。
もし本当に奏に何かあったら、と思うと気が気じゃなかったし、もしかしたら何か嫌われるようなことをしただろうか、と色々考えていたらあまり眠れなかった。
まだ完全に覚めきっていない目を覚ますためにコーヒーを飲もうと、僕は棚からマグカップを取り出す。すると、突然母さんが険しい表情で僕に声をかけてきた。
「ねぇ……冬真」
「ん、なに?どうしたの母さん」
(僕…なんかしたか…?)
「冬真の彼女の名前って星宮奏ちゃんよね」
母さんからの予想外の言葉に僕は思わず首を傾ける。
「うん、そうだけど…それがどうかしたのか?」
すると僕がそう言った途端、母さんの顔が一気に青ざめた。母さんのそのあまりに不可思議な行動に僕は少し心配になった。
「ねぇ母さん。どうしたの?今日、なんかおかしいよ?」
僕は母さんを落ち着かせようと近づく。すると、
「冬真、ニュース…テレビ見て」
「…え、ちょ、なに、母さん!」
「いいから早く…!!」
僕は母さんに促されるままテレビの方へと向かう。
そしてテレビに映る画面を見た瞬間、思わず僕は手に持っていたマグカップを落とした。
「……………え?」
どこかでマグカップが割れる音がした。
「なに、これ………」
『25日午後7時ごろ、○○市✕✕区の道路で乗用車と一人の女性が衝突。女性は病院へ搬送されましたがその後死亡を確認。亡くなったのは○✕高等学校に通う星宮奏さん(17)で星宮さんは友人との待ち合わせ場所に向かう途中、事故にあったとみられています。警察は乗用車を運転していた男に話を__』
「……………………は?嘘…だろ…?え、どうゆうことだよ……」
目の当たりにした事実が理解出来なかった。
「奏が死んだ?嘘に決まってる。だって昨日まで……」
「冬真…、受け入れ難いかもしれないけど…、これは本当なのよ。辛いと思う。苦しいと思う。でもね、受け入れるしかないの。それが、残された貴方が今できる事なのよ」
母さんのその真剣な表情を見て、改めてこれが現実であり、本当だと言う事を受け入れることが出来た。でも…、やっぱり、全ての現実を受け入れることは出来なかった。
(だって、昨日まで奏は元気だったじゃないか。昨日、まで……)
「ねぇ……なん……で…」
「え?」
「昨日…まで、一緒に、いた…ん、だよ…。一緒に、出掛け…よう、って、約束、したんだ…」
思わず目から涙が溢れる。
涙が止まらず、うまく呂律が回らない。
信じられなかった。信じたくなかった。昨日まで一緒にいたのに。約束をしたのに。当たり前のように隣りにいた。なのに……
どうして奏は死んだのか。
(奏が…、奏が出かけたのは僕のせい。でもそれは二人で決めたこと。でも…、でも…あの時間に奏があそこにいたのは僕のせい。もし僕が時間を変えなかったら……)
「奏は………、死ななかった」
そう呟いた途端、僕を襲ったのは残酷な現実だった。
吐き気がした。目眩がした。意識が朦朧とした。視界が眩んでうまく立てない。自分がちゃんと立っているのかも怪しい。
「冬真、大丈夫、大丈夫だから…。一旦落ち着こう。ね?」
そう言って母さんは僕を抱きしめた。僕を落ち着かせようとする行動だとわかったいたけど、落ち着けなかった。
「僕のせいで……僕の、せいで……!奏は…!……僕との約束が…奏を…、殺したんだ」
罪悪感や後悔、奏との記憶と色んな感情が入り混じって、僕の頭の中はぐちゃぐちゃだった。
ただ泣くことしか出来なくて、どうしようもない虚無感に襲われた僕の中で何かが壊れる音がした。
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