1 / 1
一話
しおりを挟む
午後3時42分 イギリス・リヴァプール ロス・ロイヤルファミリー別荘前 天候・雨
ーカーネル巡査、相手はあのジェーンだ。無理はするなよー
ーはい。ですが必ず奴らの裏を取り、組織を一網打尽にしてみせますー
ーお前一人じゃ無理だ。並のマフィアじゃねぇ。相手は最早ただの殺戮者だ。死ぬぞー
ー引き際は弁えてるつもりですー
ー絶対に一人でやろうとするなよ。合図を受ければ全員でガサ入れするー
ーわかりました。行ってきますー
ロス・ロイヤルファミリー。イギリスでは有名なマフィアファミリーだ。最も裏の社会の中でなのだが。その名を識らしめたのは先代のボス「ムジョル」。彼の代でファミリーは勢力を増し、今には世界に名の知れるような大組織となったのだ。しかし病に伏せ早死し、その子供が若くしてボスになった。それが今のボス「ジェーン」である。彼はまだ16歳で、ボスになったのは先代の死んだ3年前。まだ13の時だ。限界がある。しかし彼が3年もボスで有り続けられた訳には理由があった。
「ボス、何やら外でサツが嗅ぎ回ってるようです」
幹部の男が少年に話し掛ける。
「そうか」
すると別荘の外から荒々しい声が聞こえた。
「ジェーン、出てこい!今日が年貢の納め時だ!」
「言い回し古いんだよこの野郎」
ジェーン少年は扉を開けた。
「…」
警察は拳銃を抜いた。
「何の真似だ」
「お前を逮捕する。証拠がないとは言わせないぞ」
警察は別荘に乗り込もうとしだが、瞬に前のめりに倒れた。
「掛ける言葉もない。死にな」
ジェーンは瞬時に拳銃を抜き、警察の急所を正確に撃ち抜いた。
目にも留まらぬ銃の腕、確実に急所を抉る殺人術。彼が幼ながらファミリーのボスでいたのはこの並外れた戦闘技術だった。
「殺人罪…裏…取れた。現行犯逮捕…だ…」
「死んだ人間は、所詮何もできないさ」
「そうても…ねぇさ」
警察の息の根が止まったと同時に、大勢の警官たちが別荘に流れ込んできた。
「動くな!ロス・ロワイヤルのボス、ジェーンその一味。現行犯逮捕だ」
「大人しくしろ!!」
別荘からもファミリー幹部や構成員、多くの人間が出てくる。
「兄弟達!危ないから下がってろ!巻き込んで殺しちまうかもしれねぇ」
ジェーンは右手に拳銃、左手にアーミーナイフを持って警察舞台に近づいていった。
「あいつが言っていた年貢の納め時ってのはあながち間違ってねぇようだ。もうここには留まれねぇ。幹部は全員で新たな拠点先の目星をつけろ。残りの構成員は総出で別荘外を見張れ。サツの応援が来たら殺すか、俺に伝えろそれから堅気は絶対近づけるな。」
構成員たちはそれぞれの指示を全うするため走り去り、大勢の警察の前にはジェーンひとりしかいなくなった。
「刑事さん、数を合わせたら俺に勝てると?」
「こっちは総戦力だ。どんなに強い奴でも数の暴力には勝てねぇ」
刑事は倒れている部下の死体を見た。
「それに、このままだとこいつの魂どこ行くさ」
ジェーンは鼻で笑う。
「報復ですか?サツのくせにヤクザみたいな真似するもんじゃないよ」
ジェーンは拳銃を刑事に向けた。ほぼ同時に銃声が響き、刑事のすぐ後ろにいた警察が血を吹いて倒れる。
「どっちにしろもう遅い。ここに来た時点でみんな死ぬ」
言葉とともにジェーンは走り出していた。銃とナイフを器用に使い次々と警察を屠っていく。
ー遅ぇ。マジで時間止まってるくらい遅ぇ。遅 くないのは銃弾くらいだ。いいや。やっぱり銃弾も遅ぇー
別荘の窓から幹部たちは外の殺戮の様子を眺めていた。
「あの技のこなし、人の殺し方を熟知してやがる」
「そりゃそうだ。マジモンの暗殺舞台で鍛えた技だろ。マフィアなんかより殺し屋のほうが向いてるぜ」
「バカ!殺されるぞ」
案の定というべきか、窓ガラスに銃弾が飛んできた。
「ヒョォォ!窓辺にいたのが俺じゃなきゃ死んでたぜ」
「その程度ならここにいる全員避けられるわ」
「俺は無理かも」
「無理なの!?自身もてよ」
幹部達がさわいでいる間に、警察部隊はたった一人の少年によって半分以上壊滅していた。
「まずいぞ、もう終わっちまう。さっさと目処つけやがれ」
「ボスの機嫌が悪ければ全員粛清されんぞ」
「安心しろ!いい国があった!今見つけた!」
午後4時12分。空が晴れ初め夕日が出始めた。しかし別荘が赤く染まっているのは夕日のせいだけではない。
「分かっちゃいたが、やり過ぎたな。全員殺るつもりはなかったが…殺っちゃった」
幹部達が駆けつけてくる。
「ボス!こんなに派手に粛清をすれば、待ちどころか国にいるのも厳しいです。恐らく表社会でも指名手配されるのは間違いなし」
ジェーンはアーミーナイフについた血を拭いた。
「ああ、街の警察相手にしたんだ。だからお前らに新たな移転先を探すよう頼んだんだが、見つかったか?」
ーうわぁ、ボス機嫌悪いよ。弱かったのかな警察さん達ー
「も、もちろんです。世界中の傘下組織の中から一番良いものを厳選致しました」
「どこだ?」
幹部は一息ついて述べた。
「ジャパンにある傘下のヤクザ【山内組】が、別荘を用意できるとのことです」
「日本か…悪くないかもな」
続
ーカーネル巡査、相手はあのジェーンだ。無理はするなよー
ーはい。ですが必ず奴らの裏を取り、組織を一網打尽にしてみせますー
ーお前一人じゃ無理だ。並のマフィアじゃねぇ。相手は最早ただの殺戮者だ。死ぬぞー
ー引き際は弁えてるつもりですー
ー絶対に一人でやろうとするなよ。合図を受ければ全員でガサ入れするー
ーわかりました。行ってきますー
ロス・ロイヤルファミリー。イギリスでは有名なマフィアファミリーだ。最も裏の社会の中でなのだが。その名を識らしめたのは先代のボス「ムジョル」。彼の代でファミリーは勢力を増し、今には世界に名の知れるような大組織となったのだ。しかし病に伏せ早死し、その子供が若くしてボスになった。それが今のボス「ジェーン」である。彼はまだ16歳で、ボスになったのは先代の死んだ3年前。まだ13の時だ。限界がある。しかし彼が3年もボスで有り続けられた訳には理由があった。
「ボス、何やら外でサツが嗅ぎ回ってるようです」
幹部の男が少年に話し掛ける。
「そうか」
すると別荘の外から荒々しい声が聞こえた。
「ジェーン、出てこい!今日が年貢の納め時だ!」
「言い回し古いんだよこの野郎」
ジェーン少年は扉を開けた。
「…」
警察は拳銃を抜いた。
「何の真似だ」
「お前を逮捕する。証拠がないとは言わせないぞ」
警察は別荘に乗り込もうとしだが、瞬に前のめりに倒れた。
「掛ける言葉もない。死にな」
ジェーンは瞬時に拳銃を抜き、警察の急所を正確に撃ち抜いた。
目にも留まらぬ銃の腕、確実に急所を抉る殺人術。彼が幼ながらファミリーのボスでいたのはこの並外れた戦闘技術だった。
「殺人罪…裏…取れた。現行犯逮捕…だ…」
「死んだ人間は、所詮何もできないさ」
「そうても…ねぇさ」
警察の息の根が止まったと同時に、大勢の警官たちが別荘に流れ込んできた。
「動くな!ロス・ロワイヤルのボス、ジェーンその一味。現行犯逮捕だ」
「大人しくしろ!!」
別荘からもファミリー幹部や構成員、多くの人間が出てくる。
「兄弟達!危ないから下がってろ!巻き込んで殺しちまうかもしれねぇ」
ジェーンは右手に拳銃、左手にアーミーナイフを持って警察舞台に近づいていった。
「あいつが言っていた年貢の納め時ってのはあながち間違ってねぇようだ。もうここには留まれねぇ。幹部は全員で新たな拠点先の目星をつけろ。残りの構成員は総出で別荘外を見張れ。サツの応援が来たら殺すか、俺に伝えろそれから堅気は絶対近づけるな。」
構成員たちはそれぞれの指示を全うするため走り去り、大勢の警察の前にはジェーンひとりしかいなくなった。
「刑事さん、数を合わせたら俺に勝てると?」
「こっちは総戦力だ。どんなに強い奴でも数の暴力には勝てねぇ」
刑事は倒れている部下の死体を見た。
「それに、このままだとこいつの魂どこ行くさ」
ジェーンは鼻で笑う。
「報復ですか?サツのくせにヤクザみたいな真似するもんじゃないよ」
ジェーンは拳銃を刑事に向けた。ほぼ同時に銃声が響き、刑事のすぐ後ろにいた警察が血を吹いて倒れる。
「どっちにしろもう遅い。ここに来た時点でみんな死ぬ」
言葉とともにジェーンは走り出していた。銃とナイフを器用に使い次々と警察を屠っていく。
ー遅ぇ。マジで時間止まってるくらい遅ぇ。遅 くないのは銃弾くらいだ。いいや。やっぱり銃弾も遅ぇー
別荘の窓から幹部たちは外の殺戮の様子を眺めていた。
「あの技のこなし、人の殺し方を熟知してやがる」
「そりゃそうだ。マジモンの暗殺舞台で鍛えた技だろ。マフィアなんかより殺し屋のほうが向いてるぜ」
「バカ!殺されるぞ」
案の定というべきか、窓ガラスに銃弾が飛んできた。
「ヒョォォ!窓辺にいたのが俺じゃなきゃ死んでたぜ」
「その程度ならここにいる全員避けられるわ」
「俺は無理かも」
「無理なの!?自身もてよ」
幹部達がさわいでいる間に、警察部隊はたった一人の少年によって半分以上壊滅していた。
「まずいぞ、もう終わっちまう。さっさと目処つけやがれ」
「ボスの機嫌が悪ければ全員粛清されんぞ」
「安心しろ!いい国があった!今見つけた!」
午後4時12分。空が晴れ初め夕日が出始めた。しかし別荘が赤く染まっているのは夕日のせいだけではない。
「分かっちゃいたが、やり過ぎたな。全員殺るつもりはなかったが…殺っちゃった」
幹部達が駆けつけてくる。
「ボス!こんなに派手に粛清をすれば、待ちどころか国にいるのも厳しいです。恐らく表社会でも指名手配されるのは間違いなし」
ジェーンはアーミーナイフについた血を拭いた。
「ああ、街の警察相手にしたんだ。だからお前らに新たな移転先を探すよう頼んだんだが、見つかったか?」
ーうわぁ、ボス機嫌悪いよ。弱かったのかな警察さん達ー
「も、もちろんです。世界中の傘下組織の中から一番良いものを厳選致しました」
「どこだ?」
幹部は一息ついて述べた。
「ジャパンにある傘下のヤクザ【山内組】が、別荘を用意できるとのことです」
「日本か…悪くないかもな」
続
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる