とある辺境伯家の長男 ~剣と魔法の異世界に転生した努力したことがない男の奮闘記 「ちょっ、うちの家族が優秀すぎるんだが」~

海堂金太郎

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黎明 ―はじまりのパーティ―

第5話 そこに山があるから

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 ―――そこに山があるから―――

 誰しもが聞いたことのある名言であろうが、これは日本語に翻訳されたとき誤訳が生じてしまった名言でもある。
 本当の意味は「Because it's thereそこにエベレストがあるから
 英語だけを見れば、なるほど日本人が誤訳してしまうのも頷ける。

 この名言を発したのはジョージ・マロリーというイギリスの登山家だ。
 彼は3度ものエベレスト遠征隊に参加している。
 その中で「なぜ、あなたはエベレストに登りたかったのか?」と聞かれた状況でこの名言は生まれた。
 ここまで聞けば翻訳家も誤訳をすることはなかっただろう。

 ん?それと5つ目の情報に何の関連性があるかって?

 うすうす気づいているのではないかね、男子諸君。
 これは全人類の男たちが悩み続けてきた命題であり。そして近年、その答えを文字にすることに人類は成功した。この答えが今後変わることはないだろう。

 誰かが言った―――なぜ男は女性の胸に視線がいってしまうのだろう、と

 誰かが言った―――そこに胸があるから、と


 俺はこれを聞いたとき、胸の中のつっかえがストンッと落ちたような気分になった。腑に落ちるとはまさにこのことを言うのだろう。

 しかし、世の中そう甘くない。
 いるのだ、この胸の部分を尻に置き換えるような者が。
 そしてまさか身近にいようとは―――。



 ◇◇◇



 ―――ある日の黄昏時《たそがれどき》

『黄昏とは―誰ぞ彼たれぞかれ―つまり、日が暮れて薄暗くなり相手の顔の見分けがつきにくく「あなたは誰ですか?」と問いかける時間帯のことを指す。』
 と、前世だったか前前世だったかの映画で聞いた気がする。

 俺はその時間が毎日楽しみである。
 母上とのご飯の時間だからだ。

(まあ、1日に何回もご飯とるんだけどね)

 この時間帯の母上はいつも以上にきれいだ。
 夕日をバックに胸をちらりと着崩す母上の姿は神秘であるとさえ思ってしまう。
 しかしそこに沸く感情は親愛や安心などであって、情欲などではない。

 そこに邪魔者が現れる。
 ―――父上《ベルトラン》だ。

 授乳中はいつも、父上の視線がちらちらと母上の体のある部分に向かっている。それに気づいたのもついこの間だった。
 父上の視線が母上の豊かな胸元にいっているのであれば、一向にかまわん。
 母上は父上の奥さんでもあるし、それ以上にバスター胸信望家である以上、同士なのだから。

 決してマイナスの感情を抱くことなどない。

 しかし、父上は―――ベルトランはヒッパー《尻信望家》だったのだ。

 なぜだ父上、なぜだベルトラン。血を分けた家族じゃないか‥‥‥。

 今の俺には語る術《言語》を持たない、将来絶対に改心させてやる。それまでこの話はお預けだ。

「ぷはーーーっ」
「あらあら、いい飲みっぷりねぇ♪誰に似たのかしら?」
「私は知らん。それにもうそれはのことだ。」
(過去のことだと!?誰だ、父上をそそのかし…「ゲぷッ」たのは!)

 あぁ、悲しきかな食後の赤ちゃんにはそれほど時間が残されていない。
 とりあえず、恵《おっぱい》に感謝を捧げる。

あぉあいいあんあいおっぱいに乾杯
(母上ごちそうさまでした。)

 そこで俺は意識を落とした。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ジョージ・マロリーさんは1924年にエベレストに入ったきり、75年間行方不明だったそうです。1999年にその遺体が国際探索隊によって発見されています。

 こんな下世話な話に使ったことをお許しください。
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