とある辺境伯家の長男 ~剣と魔法の異世界に転生した努力したことがない男の奮闘記 「ちょっ、うちの家族が優秀すぎるんだが」~

海堂金太郎

文字の大きさ
18 / 76
幼少 ―友達を求めて―

第18話 領都をゆく

しおりを挟む
3歳の誕生月に買ってもらった椅子と机に座ったアルテュールはとんでもないことに気がついていた―――。

「友達が、いないっ…!」

 そう友達がいないのである、同世代の友達がとにかくいない。
 毎年開かれる北方連盟にはあれから毎年参加しているが、俺より年下の者は見たことがない。
 少し上の者などもいるが、そいつらは辺境伯嫡男という肩書に群がるものばかりで基本的にゴマすりとかヨイショしかしない。

 そんな奴と一緒にいて楽しいと思うか?
 こういう時だけは、中身が大人なことが恨めしい。子供ならまだ喜べるというのに・・・。
 しかも、そういうやつらの大半は俺が助けて欲しいような状況に陥ると手の平を返すと相場が決まっている。貴族の世界なのでそれを非難する気はない。

 しかし、友達ゼロはまずい。

 俺の心が泣いている、友達をつくろう―――!!

(よし、そうと決まれば即行動だ)

「ハッツェン。外行くよ!」
「畏まりました、御屋形様に外出許可をもらいに行きましょう」

 初めて会った時から4年が経ち、15歳となったハッツェンは俺の専属侍女となり、いつも俺のそばにいる。たおやかな黒髪ショートボブ、顔つきはあの頃と比べて女性らしくなり、聡明そうな美少女となっていた。
 実際に聡明でもある。もともと地頭がいいのはわかっていたが、俺が勉強している最中もずっとそばにいたためか、磨きがかかっている。
 もちろんハッツェンの希望を聞いてからにするが、将来俺の秘書的存在になってくれたらなぁ、なんて思ったりしている。

 そんな彼女と一緒に外出許可を取るべく、父上のところまで歩いてゆく。

 トン、トン

「アルテュールです」
「入れ」

 ガチャッ

 ドアを開けた俺は前置きを置かずに、ド直球で用件を伝える。

「失礼します、父上。友達をつくるため市街地まで行きたいのですが、よろしいでしょうか。」

 少しの沈黙。
 父上は目元を覆い、ハァとため息をついてから口を開く。

「・・・わかった、ただしハッツェンも一緒に連れていけ。気を付けるのだぞ」

 可哀そうなものを見る眼で許可を出す父上

(気持ちが先走って、そのまんま言ってしまった・・・。そんな目で見ないでくれ)

 心にダメージを負いながらも何とか自分の部屋に戻るとすぐにハッツェンが着替えさせてくれる。楽ちん楽ちん♪

 先ほど父上が外出の条件に出していたハッツェン同行にもちゃんとした意味がある。
 何を隠そうこのハッツェン、めっちゃ強いのだ。うちの領兵を5人相手しても普通に勝つ。

 何でそんなに強いのか前に聞いたとき「アル様を傍でお守りしたいからです」と言ってた。

(なにそれ、超かわいい。完璧美少女メイドキタ―――!!)

 なんて気持ち悪いことを考えていたら、すべての準備が整っていた。ダメ人間になりそうです。

 友達作りのための外出なので格好は二人とも平民の格好、二人ともちょっと美形すぎるがそれはもうしょうがない。
 そう、俺イケメンなのだ!あの親にしてこの子ありって感じ。感謝しています父上、母上。

 玄間を出て10分くらい庭を歩き、家の門をくぐりながら門兵に挨拶をする。

「行ってらっしゃいませ若」
「おつかれさ~ん」

 広がった視界、最初目に入ったのは閑静な高級住宅街だ。道は整備されゴミ一つ落ちていない。目的地に向かいながら、領都スレクトゥの情報を頭の中で整理する。

 ヴァンティエール辺境伯領領都スレクトゥは内側から第1城門、第2城門、第3城門の3枚の壁に囲まれた城塞都市となっており外側には畑が広がっている。
(ウォール〇-ナ、〇-ゼ、〇リアみたいになってるって言えばわかるかな?わからんか)

 第1城門(内門)の内側はヴァンティエール辺境伯の屋敷、つまり俺ん家があり、第2城門(中門)の内側の内部分が金持ちが住む上級区、外部分が一般的な庶民が住む中級区および公認商業区となっている。
 ここにはセレクトゥの住民証明がないと入れないし、うちヴァンティエール家の許可がないと商売ができない。

 そして、第3城門(外門)の内側は自由区と呼ばれている。
 そこは身分証明ができる者であればだれでも入ることができるし、住むことだってできる。住民税を払わなくても住めるというのはとてつもないメリットだし、外壁にまで守られているので、移住希望者が後を絶たない。
 そして、ここには冒険者ギルドや傭兵ギルド、商業ギルドなど国境にとらわれない団体が軒を連ねている。

 しかしこれでは、中門内の中級以上の市民が納得しないのでは?と思うかもしれないが、そんなことはない。

 結論から言おう、中門内の街は超絶綺麗で超絶治安がいいのだ。

 その理由としては、奴隷制がこの世界に存在するということとせっかく高い金払って中門内に住んでいるのに、犯罪をして追放されるなんて馬鹿々々しいからというのが挙げられる。

 この世界、結構簡単に奴隷落ちする。
 アルトアイゼン王国内各領では王国法に触れない程度の私刑が使われており、軽犯罪でも犯罪奴隷に落ちる可能性が高い。それ以外にも口減らしや借金で首が回らなくなり奴隷に落ちるものが多くいる。

 そしてスレクトゥの住民税は他貴族の領と比べ、ちと高い。
 流石に王都アイゼンベルクの中位区以上ということはないが、十分高いうちに入るだろう。その代わり、上で言ったように街中が綺麗で、夜に女子供が一人で出歩いても何の問題にもならないほど治安がよく、昼は賑やか夜静かで住みやすい。
 実際に出歩けば、24時間体制で巡回している領兵に補導され、家まで送られるが…

 そんな当家自慢の上級区、中級区、公認商業区を素通りしながら考える。

 俺は貴族だから友達選び=将来の腹心選びとも言える。これは仕方のないことだ。また、家族と一緒に何度も街を見て回ったため中門より内側で育った奴は俺の顔を知っている。
 全員が全員そういうやつではないと思うが、中門内の人間は基本機嫌を取りに来るのだ。
 今欲しい友人はそう言う腰巾着たちではない。将来家臣になるかもしれないのだ、どうせなら面白いやつを選んだ方がいい。

 そこで思考を打ち切り、胸ときめかせて門一つ外、自由区に足を踏み入れる。

(友達何人出来るかな―――?)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


    ヴァンティエール屋敷
――――――――― ―――――――――内門
        上級区
      中級区・公認商業区
――――――――― ―――――――――中門
        自由区
――――――――― ―――――――――外門

         外


――……壁
― ―……門
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる

書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。 鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。 だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。 その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。 俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。 ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。 なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

処理中です...