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幼少 ―初めての王都―
第35話 暴走未遂の国王
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アルテュールたちが王都の屋敷に入ったころ、アイゼンベルク城の一室に一報が入っていた―――
「ヴァンティエール辺境伯御一行様が王都に入ったとの連絡が今しがた第七騎士団より届きました」
「報告御苦労」
内心では喜びの嵐が吹き荒れているのだが、その報告を受け取り応えたクローヴィス本人は傍から見ればいつもと変わらない様子だ。なんなら王の威厳にまで満ちている。傍にいたイアマはその内心の嵐に気が付いているが…。
伝達係の者が気まずそうな顔をしながらもう一つの情報を告げる。
「はっ。しかし第3王女アデリナ様のお姿がなかったようでして―――」
「なに―――?」
クローヴィスの纏う雰囲気が一転し、部屋に氷河期が訪れる
「―――!」
伝達係の男の顔は凍り付き、膝も震えていた。
王の怒りとはそれほどのものなのだ。雰囲気だけで人を威圧することが出来る。
しかし、伝達係とて逃げるわけにはいかない。
彼は曲がりなりにも王へと報告を届けることを任せられたエリートなのだ。プライドが彼をその場に留まらせ、最後の伝達事項を伝えさせる。
「―――ヴァンティエール辺境伯様と御子息アルテュール様のみと。」
伝達係の様子に気づいたクローヴィスは雰囲気をしまう。
とんでもない芸当だがあっさりやってのけた。さすがは王と言ったところか。
「相分かった、下がってよいぞ」
伝達係は心の底から安堵した様子で「失礼します」と言い部屋から出て行った。
感情を思い切り表に出してしまった伝達係をクビにしようか、と考えたクローヴィスだが今回ばかりは自分が悪いので、その案を取り下げる。
少し時間が経ち、再び氷河期が訪れた。発生源は王妃のイアマだ。
「あなた様、先ほどの態度は何ですか?」
表情はいつも通りだ。逆に怖い。
「な、なんの話じゃ?」
無茶苦茶自覚のあるクローヴィスだが悪あがきをする。
その姿には先ほどの王が纏う雰囲気など微塵も残っていない、あるのは妻に叱られると分かった立場の弱い夫のそれだ。
構わずイアマは問い詰める。
「惚けないでくださいませ」
「だ、だって」
流石に誤魔化すのは無理だと諦め、今度は言い訳を必死に探す。が―――
「自分の御年を考えてください」
辛辣な妻の言葉が言い訳を叩き潰した。
「……」
クローヴィスは何も言い返せない。今のはさすがにきついな自分と思っていた。
落ち込むクローヴィス。
そんな彼を見たイアマは責め過ぎたかと考え、同情するような言葉で説得に動く。
「わたくしも気持ちはわかります。しかし、ベルトランもアデリナを連れてこなかった場合の危険性《陛下の怒り》を知っております。それほどの理由があったのでしょう」
下げてから上げる、この王妃なかなかの策士だ。
しかし、正常ではないクローヴィスはイアマの言葉の一部に反応する。
「アデリナに何かあったのか!?」
「なぜそうなるのですか…」
普段はこの上なく優秀な夫はどうして娘がかかわるとこうもダメになるのだろうか。自然と出そうになった溜息を飲み込み、夫の勘違いを丁寧に正す。
「もしそうなのであればベルトランは王命を無視してでも辺境に残ると思いますよ。そしてその由もいち早く報告するのでは?」
このことに関しては一応の納得をクローヴィスが見せるがまた突飛なことを口走る。
「むぅ、アルテュールを迎えにいくのは―――」
「いけません」
電光石火の返し。
「何故じゃ!」
また否定されたクローヴィスは反発する。
(白昼堂々とヴァンティエール辺境伯を迎えに行ってみなさい、特別扱いにしか見えないでしょう。ただ、今のこの人に向けていっても意味のないこと…)
正論を言っても無駄だと理解したイアマは何を言っても無駄な夫に最終手段を講じる。
「2年後になるはずであった出来事を強引に1週間後にしたのです。
―――アルテュールに嫌われますよ。」
―――<奥義> 孫に嫌われちゃうよ―――
単純だが強力無比な一撃必殺。
効果は絶大だった。クローヴィスがしゅんとする。
ただ今ばかりは暗愚な彼の口は止まらなかった。
「アルテュールはまだ5歳じゃ、あまり考えんでも―――」
彼にそんなつもりはないだろう、しかしイアマにはそれがアルテュールを貶める発言にしか聞こえなかった。
「わたくしの孫を馬鹿にするおつもりですか?」
部屋が絶対零度へ上書きされる、イアマは本気で怒っていた。
彼女もまたクローヴィスと同じで孫が大好きなのだ。だから今の発言を聞き流すなど土台無理な話だった。
何処までも冷たい雰囲気に充てらたクローヴィスの頭は冷え、思考が正常に戻る。
「すまん、失言じゃった」
(やってしもうた…)
いつも通りに戻ったクローヴィス
(また責めてしまいまいした…)
少し落ち込むイアマ
夫のメンツを丸潰しにするのは妻《クローヴィスのパートナー》として王妃として良くない
「わたくしの方こそ冷静になるべきですね。孫のこととなるとつい…これではあなた様に対して何も言えませんわ」
と冗談めかしたフォローを入れた
「イアマ…」
妻の胸中を察したクローヴィス。
自分のせいで怒らせてしまったのに、気遣いまで見せてくれる妻に申し訳なさと愛しさがこみ上げてくる。
(今すぐ抱きしめたい)
そう思ったのだが、
「わたくしは公務がありますので先に行かせてもらいます」
それをも察っされたのかイアマが理由をつけて退出されてしまった。
「真昼間から盛るなど何を考えておるのだわしは…それに、最近はイアマを怒らせすぎておるな」
一人きりになった夫婦の部屋で猛省する。
「しかしだ、もう我慢できんのだよ…」
そう呟《つぶや》き午後の公務に向かう直前、机に向かって筆を執《と》り上質な羊皮紙に文字を書き込む。
冒頭部分には「ヴァンティエール」という文字があった。
「ヴァンティエール辺境伯御一行様が王都に入ったとの連絡が今しがた第七騎士団より届きました」
「報告御苦労」
内心では喜びの嵐が吹き荒れているのだが、その報告を受け取り応えたクローヴィス本人は傍から見ればいつもと変わらない様子だ。なんなら王の威厳にまで満ちている。傍にいたイアマはその内心の嵐に気が付いているが…。
伝達係の者が気まずそうな顔をしながらもう一つの情報を告げる。
「はっ。しかし第3王女アデリナ様のお姿がなかったようでして―――」
「なに―――?」
クローヴィスの纏う雰囲気が一転し、部屋に氷河期が訪れる
「―――!」
伝達係の男の顔は凍り付き、膝も震えていた。
王の怒りとはそれほどのものなのだ。雰囲気だけで人を威圧することが出来る。
しかし、伝達係とて逃げるわけにはいかない。
彼は曲がりなりにも王へと報告を届けることを任せられたエリートなのだ。プライドが彼をその場に留まらせ、最後の伝達事項を伝えさせる。
「―――ヴァンティエール辺境伯様と御子息アルテュール様のみと。」
伝達係の様子に気づいたクローヴィスは雰囲気をしまう。
とんでもない芸当だがあっさりやってのけた。さすがは王と言ったところか。
「相分かった、下がってよいぞ」
伝達係は心の底から安堵した様子で「失礼します」と言い部屋から出て行った。
感情を思い切り表に出してしまった伝達係をクビにしようか、と考えたクローヴィスだが今回ばかりは自分が悪いので、その案を取り下げる。
少し時間が経ち、再び氷河期が訪れた。発生源は王妃のイアマだ。
「あなた様、先ほどの態度は何ですか?」
表情はいつも通りだ。逆に怖い。
「な、なんの話じゃ?」
無茶苦茶自覚のあるクローヴィスだが悪あがきをする。
その姿には先ほどの王が纏う雰囲気など微塵も残っていない、あるのは妻に叱られると分かった立場の弱い夫のそれだ。
構わずイアマは問い詰める。
「惚けないでくださいませ」
「だ、だって」
流石に誤魔化すのは無理だと諦め、今度は言い訳を必死に探す。が―――
「自分の御年を考えてください」
辛辣な妻の言葉が言い訳を叩き潰した。
「……」
クローヴィスは何も言い返せない。今のはさすがにきついな自分と思っていた。
落ち込むクローヴィス。
そんな彼を見たイアマは責め過ぎたかと考え、同情するような言葉で説得に動く。
「わたくしも気持ちはわかります。しかし、ベルトランもアデリナを連れてこなかった場合の危険性《陛下の怒り》を知っております。それほどの理由があったのでしょう」
下げてから上げる、この王妃なかなかの策士だ。
しかし、正常ではないクローヴィスはイアマの言葉の一部に反応する。
「アデリナに何かあったのか!?」
「なぜそうなるのですか…」
普段はこの上なく優秀な夫はどうして娘がかかわるとこうもダメになるのだろうか。自然と出そうになった溜息を飲み込み、夫の勘違いを丁寧に正す。
「もしそうなのであればベルトランは王命を無視してでも辺境に残ると思いますよ。そしてその由もいち早く報告するのでは?」
このことに関しては一応の納得をクローヴィスが見せるがまた突飛なことを口走る。
「むぅ、アルテュールを迎えにいくのは―――」
「いけません」
電光石火の返し。
「何故じゃ!」
また否定されたクローヴィスは反発する。
(白昼堂々とヴァンティエール辺境伯を迎えに行ってみなさい、特別扱いにしか見えないでしょう。ただ、今のこの人に向けていっても意味のないこと…)
正論を言っても無駄だと理解したイアマは何を言っても無駄な夫に最終手段を講じる。
「2年後になるはずであった出来事を強引に1週間後にしたのです。
―――アルテュールに嫌われますよ。」
―――<奥義> 孫に嫌われちゃうよ―――
単純だが強力無比な一撃必殺。
効果は絶大だった。クローヴィスがしゅんとする。
ただ今ばかりは暗愚な彼の口は止まらなかった。
「アルテュールはまだ5歳じゃ、あまり考えんでも―――」
彼にそんなつもりはないだろう、しかしイアマにはそれがアルテュールを貶める発言にしか聞こえなかった。
「わたくしの孫を馬鹿にするおつもりですか?」
部屋が絶対零度へ上書きされる、イアマは本気で怒っていた。
彼女もまたクローヴィスと同じで孫が大好きなのだ。だから今の発言を聞き流すなど土台無理な話だった。
何処までも冷たい雰囲気に充てらたクローヴィスの頭は冷え、思考が正常に戻る。
「すまん、失言じゃった」
(やってしもうた…)
いつも通りに戻ったクローヴィス
(また責めてしまいまいした…)
少し落ち込むイアマ
夫のメンツを丸潰しにするのは妻《クローヴィスのパートナー》として王妃として良くない
「わたくしの方こそ冷静になるべきですね。孫のこととなるとつい…これではあなた様に対して何も言えませんわ」
と冗談めかしたフォローを入れた
「イアマ…」
妻の胸中を察したクローヴィス。
自分のせいで怒らせてしまったのに、気遣いまで見せてくれる妻に申し訳なさと愛しさがこみ上げてくる。
(今すぐ抱きしめたい)
そう思ったのだが、
「わたくしは公務がありますので先に行かせてもらいます」
それをも察っされたのかイアマが理由をつけて退出されてしまった。
「真昼間から盛るなど何を考えておるのだわしは…それに、最近はイアマを怒らせすぎておるな」
一人きりになった夫婦の部屋で猛省する。
「しかしだ、もう我慢できんのだよ…」
そう呟《つぶや》き午後の公務に向かう直前、机に向かって筆を執《と》り上質な羊皮紙に文字を書き込む。
冒頭部分には「ヴァンティエール」という文字があった。
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